google-site-verification=o_3FHJq5VZFg5z2av0CltyPU__BSpMstXTEV1P8dafg 写実絵画の殿堂ホキ美術館へ行ってきた!: ひとくちメモ

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2016/11/09

写実絵画の殿堂ホキ美術館へ行ってきた!

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いや、遠かった(笑)。だけど気分は最高!そんな一日だった。千葉県の土気駅まで電車を乗り継ぎ約2時間、そこから徒歩23分(バスも出てるけど)。朝から出かけたが着いたのは11時過ぎだった。目的地はホキ美術館。2010年11月3日に開館した新しい美術館だ。

今日は米国大統領選の投開票日。朝から木枯らしが吹く寒い日でダウンジャケットを着こんで出かけた。土気駅に降り立ってから、RCサクセションの2時間35分を口ずさみながら歩いた。途中の薬局で目薬を購入。写実絵画をじっくり見ると目が疲れるだろうから。

美術館までの歩きも快適だった。一軒家が多いのだけど色彩に統一感があり街並みがとても美しい。ちょっとポワシーからサヴォワ邸に向かう街路に似てた(褒め過ぎか )。気分も高揚してたからな。

ホキ美術館はそんな住宅地の一角に刺し込まれたひとつのオブジェのように佇んでいた。遠くから見ると自然と住宅地に溶け込んでいるのだが、正面までたどり着くと現代建築の風貌(上記写真)で出迎えてくれる。思わず美術館のまわりを一周した。この建築も話題だというのは一目でわかる。

●現代日本の写実絵画を浴びるように鑑賞する

ホキ美術館を知ったのは、先日初めて購入した『Artcollectors No.92』(2016年11月号)の写実絵画特集だった。そこに紹介されている写実画の素晴しさ。そしてこれらがホキ美術館を始点にジワジワ人気だという。

それでホームページを見ると、ちょうど「心をゆさぶる写実絵画」という企画展が組まれていて、その会期が今週末(11/13)までだったのだ。その後は大阪の阪急うめだで「ホキ美術館名品展」が開催されるため数日休館となる。これはもう行くしかない!と思い立ってからは我ながら素早い行動だった。

チケットを購入して入口まで行くと、創設者の保木将夫社長が座られていた。実は建物の前に着いた瞬間、ガラス越しに「保木社長がいらっしゃる!」と気づいた(上の写真のガラスの向こうにも写ってたりしますが)。話しかけようかとも思ったけど、初回だし、まずはコレクションを見てからにしようと遠慮してしまった。

美術館の展示室に入ると、ほとんどすべての絵画が油彩の写実画で圧倒される。現代アートでない現代の画家による写実画という、これまでの常識では考えられないジャンルだ。そこに特化したことによる美術館の個性という意味でも、これほどのコレクションはなかなかないのではないか。

これだけの量と質の写実絵画の原画を見ると、印刷物では決してわからない“絵”を発見できる。写実画は印刷されると写真と見まごうばかりで、ミーハー感覚でぶっちゃけるなら「それなら写真でいいじゃん!」となるかもしれない。だが、例えば五味文彦氏の「樹影が刻まれる時」などは印刷媒体で見るのと原画を見るのとではまったく違う感想を持つ。

原画をこうして目の当たりにすると、これらは紛うことなき絵画なのであった。そして写真とは異なる世界観の実現や一瞬のきらめき、あるいは実際には存在しない風景、人物、瞬間を創造し得る手法なのだと実感する。裸体も写真よりエロティックかもしれない。写真なら数分で撮り終えられる複数のポーズが数か月から数年に渡って描かれる。その時間が筆跡のなかに透けて見える。

●故・森本草介画伯の裸婦の変遷

昨年亡くなった森本草介氏の絵画はひとつの見どころだった。ホキ美術館の最初のコレクションも森本草介氏の「横になるポーズ」という作品だったそうだ。

今回の展示でギャラリー2には森本草介作品29点が一堂に会していた。森本氏の淡い色彩こそがホキ・コレクションの重層低音のようなものかもしれないと感じた。土気駅からホキ美術館までの街並みもまるで森本草介氏の作品のような色合いだったなと思いながら、この画伯とホキ美術館との結びつきを感じたりした。

描かれた時期は異なっても、すべてが森本草介カラーとでも呼びたくなる色彩で統一されているように見え、ギャラリー2の入り口に立っただけで満たされた気分になる。写実絵画のなかに光る上品な個性はこの美術館のコンセプトに深く影響を与えているようにも思う。

そんな森本作品だが、見ているうちに同じような裸婦でも、例えば1996年の「女 FORME」と2012年の「NUDE」とではタッチが異なる。年を経るにつれソフトフォーカス感が強くなっているように思えた。髪や顔、肩のラインなど徐々にふわっとベールがかかったように変化してる。その代り色彩は「女 FORME」のほうが淡く、「NUDE」はリアルな肉体に近づく。その間の1998年「白い帽子」にも同じ感想を持ち、そこから裸婦の描かれた年度を再度確かめながら鑑賞した。

印象派のモネの絵も晩年は過度なソフトフォーカス(というか抽象的)になっていったのを思い出した。しかしモネの場合は白内障の影響があったはず。森本氏の場合は裸婦へのまなざしの変化じゃないかと思う。乳首が描かれるようになるのも新しい作品のほうが多い気がした。年を経るにつれ裸婦全体はよりソフトに、しかし細部は肉感的に、そんな意識の流れを感じた。

ホキ美術館のサイトに寄せられた森本草介氏の言葉のなかに、ご自身の人物画への向き合い方がこう書かれている。

モデルは神秘のベールの向こう側にいて、彼女についての具体的なことは何ひとつわからないというのが理想です。

背中からの構図が多いのもこういう意志に基づいているということだと思う。そしてソフトフォーカスが増していくのもきっと神秘のベール(への作者の意志)が増していることの表れなのだろう。その分、裸婦の写実に求められるいくつかのプロパティを肉感的に描きバランスが取れた作品に仕上がっているのかもしれないと思った。

●係員さんのミュージアムトークがお得

日によっては、係員さんの解説付きで30分ほどいくつかの作品を鑑賞できるミュージアムトークという企画がある(無料)。今回11時半頃から鑑賞し始めて、かなり先まで進んだところで「13時からミュージアムトークを実施いたします」との館内放送が流れた。これを逃す手はないとフロントまで戻り参加した。

既に一度見た作品だったが、ミュージアムトークと一緒に鑑賞すると裏話が聞けたりして、とても面白いのでおススメ!藤原秀一氏の「萩と猫」の猫の名前とか()。ちなみに猫はクッキーちゃん。猫の写実画は珍しいそうだ。

そんなお話もあれば、生島浩氏の人気作品「5:55」の有名な逸話(帰りたがっているモデルの話)、五味文彦氏の木霊シリーズの裏話や静物画でもっとも描くのが難しい食材話、石黒賢一郎氏の驚異的な背景へのこだわり話、小尾修氏の画風の変化話、島村信之氏の「コントラポストI」の作画時間の短さとその理由(衣がないと速い)、原雅幸氏の風景画の秘密、塩谷亮氏の美女は奥さん(奥さんをモデルにする画家は多い)などなど、とても楽しいお話が聞けた。

いつミュージアムトークがあるのかは、ホキ美術館ホームページのお知らせに掲載されているので確認して行くといいと思う。

あっという間の3時間だった。充実した時間だった。帰りがけ、受付のところで保木将夫社長と係員さんたちが談笑されていた。話題は米国大統領選(笑)。15時を回っていたが、この時点ではまだトランプかヒラリーか結果は出ていないといったお話が聞こえて来た。

ショップで気に行った作品のポストカードを20枚購入。20枚買うなら図録を買ったほうが安いわけだが、いろいろな美術館訪問の記念にポストカードを買ってファイリングしているのでポストカードはマストアイテムなのだ。好きな絵画やエポックとなった絵画を並べて持っておくと記憶が鮮明によみがえる(はず)。

ちなみに今回展示されていたなかで好きな作品を感想も込めて5つあげるとすると、

・山本大貴「静寂の声」:ギターを持った美少女大好き!
・大畑稔浩「瀬戸内海風景 川尻港」:川瀬巴水と故郷を想起。
・石黒賢一郎「存在の在処」:超有名な超絶作品!圧巻。
・島村信之「日差し」:美人の奥さんと衣服と光の描写力。
・生島浩「Card」:モデルさん超かわいい(笑)。

かな。明日には違う作品を選ぶかもしれないけれど。全部ポストカード購入。その後、美術館を後にして土気駅まで歩いた。そしてまた2時間ほど電車に乗り帰宅した。そのころにはほぼトランプ勝利が固まりつつあったが、メディアは信じたくないような報道ばかりだった。


11月18日から2017年5月15日まで第2回ホキ美術館大賞展が開催されるという。これも電車を乗り継ぎ必ず鑑賞に行こうと思っている。作品の人気投票は2月末までで、人気の3点が常設になるようだ。ということは、それ以外は常設にならない。大賞展で見ておく必要がありそうだ。

Hoki_museum_20161109_02

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