サヴォワ邸散策メモ ~世界遺産登録(目前)記念~
世界中に点在するル・コルビュジエの建築を一括して世界遺産登録しようという取り組みが今年ようやく認められようとしてる。上野の国立西洋美術館も入っており日本のニュースで報道されているが、パリにあるコルビュジエ建築の代表作サヴォワ邸もそのひとつだ。
パリひとり旅でサヴォワ邸を訪問したのは2013年の秋。CDG空港についた2時間後、人影もまばらな早朝のモンマルトルの丘で超美人の女の子(たぶんモデル)に出会ってテンションがあがったが、その直後10代の黒人の男の子3人に囲まれた(たぶんカツアゲ)。精神的にアップダウンの激しい旅の始まり。カツアゲを振り切ったその足で向かったのがポワシー市にあるサヴォワ邸だった。
宿泊のホテルはベルシー地区で真反対の方向だったが、短期旅行だったので初日サヴォワ邸訪問も選択肢のひとつだった。そのためにパリヴィジットもゾーン5まで行けるものを買っていた。迷わず向かった。
サヴォワ邸やコルビュジエの建築について書けるほどの知識もスペースもないのだが、サヴォワ邸の写真も何枚か撮ってきたし、それをブログに書くタイミングはここしかないと思って写真アルバム的に残しておこうというのが今回のひとくちメモ。だから写真はサイズ変更程度であまり加工しないで載っける(写真はクリックで拡大)。
●行きは徒歩、帰りはバス
ポワシー駅からサヴォワ邸までは歩いてもそれほど遠くない(バスも出てる)。パリ郊外の静かな場所でもあり、ひとり旅で軽く散歩したい人にはおススメの道のり。大都会パリとは違った精神安定剤のような街並みだ。
パリヴィジットを持っていればバスも乗り放題なわけだが、初めての街だし遠くなさそうだったので歩くことにした。知らない街を散策するのは気持ちいい。駅を出て右方面に歩いていくと、分岐点に「Villa Savoye」の方向指示版があったのでそこを曲がる。地図を見るとその後もう一か所右折した感じだけど感覚的には道なりだった。
途中で住人のおじさんと目が合ってボンジュールとあいさつすると、サヴォワ邸までの行き方を教えてくれた。迷っていたわけじゃないけどふれあいには積極的に乗ったほうがいいのでメルシーメルシーとお礼を言って進んだすぐ先にサヴォワ邸はあった。ひっそりとあった。
そこから見学して帰るわけだが、帰りのほうが若干下り坂なので歩いてもいいかもしれない。このときは旅の荷物全部持って来てるし、サヴォワ邸をじっくり見学して疲れてもいた。パリヴィジットを使ってバスに乗る方法も知りたかった。それならこういうゆったりした街で使い始めたほうが使い方を教えてもらえそうだと思ってバスに乗った。それは正解だったと思う。何やっても正解なのがひとり旅というものだ(笑)。
●サヴォワ邸の外観を概観
上の写真はサヴォワ邸ではない(笑)。一瞬これがサヴォワ邸かと思い、「なんて小さくて手入れされていないんだ!?」と早とちりしたのだ。観光写真と現物が異なることはあるがこの差はなんだと。しかし大丈夫(笑)、これは門番の家らしい。サヴォワ邸はこの奥にある。
とはいえ、最初に目に入るこの水平連続窓の建物も、もう少し小奇麗にしておいた方がいいと思った。サヴォワ邸を紹介している書物などにもほとんど触れられていない門番の家だが、もっと敷地全体の外観、とくに入口は結構重要だと思う。観光目線だけどね。忘れ去られた感のあるこの小汚い門番の家をちょっとクローズアップしてみたくなった次第。
さて、こっちがサヴォワ邸。誰もがこの角度で最初に見ることになる。この日はなかでパーティが開かれてた。
サヴォワ邸の玄関を入ると売店があった。土産物や書籍、レゴブロックなんかを売っていた。日本語の書籍はあまりなかった気がした。旅の荷物全部持ってきていたので売店横の物置部屋に荷物を置かせてもらった。
いわゆる近代建築の5原則のなかの2つ、ピロティ(壁に覆われない開放的な空間)と水平連続窓とがものすごい存在感で目に飛び込んでくる。このシンプルな一軒家の外観は現代の目から見れば特別な感じはしないけれども、その起源であるという感慨は残った。
●屋内散策~建築的プロムナードの傑作~
サヴォワ邸内部の写真もたくさん撮ったけど、そういうのはコルビュジエ建築の書物にたくさんあるので専門家にお任せして、ひとくちメモ的には枝葉末節な写真をいくつか載せてみたい。
屋内に入った瞬間目に入るスロープの存在感や迷路のような屋内の中央にあるらせん階段は「建築的プロムナード」と呼ばれるコルビュジエの特長を良く表しているそうだけど、その印象は写真では伝わりにくい。アラブの回廊をイメージしているともいわれていて納得した。
部屋の配置は近代建築の5原則のさらにもう2つ、自由な立面と自由な平面を強く実感できる。自由過ぎて家の中で迷いそうだ。
この迷子の感覚こそがコルビュジエ建築らしさでもあると思う。外観のシンプルさ、直線から受ける厳格さが屋内に入るとまったく印象が変わる。混沌というと言い過ぎだけど、その自由さや景色の多様さはサヴォワ邸の真骨頂だ。空間的制約のほとんどない広場を与えられコルビュジエが自由に設計した一軒家らしさ全開といえる。
トイレへのこだわりは以前「パリのトイレ問題顛末記」として書いたが、そのときにアップした写真はサヴォワ邸の展示物(使っちゃいけない)トイレの写真だ。
このお風呂はそのトイレの横にある。デジカメのHDRモードで撮っているのでコントラストが派手になってる()。
●屋上庭園へ
近代建築の5原則の最後のひとつ屋上庭園は、室内との連続性がとても意識されてる。ここはまだ屋上ではなく2階のテラス部分。最初に見えた水平連続窓の左端が、この上の写真では奥の人がいる左側の窓。ここは内と外が混在する屋上テラスのような造りになってる開放空間。
360度パノラマ画像も撮ってみた(写真クリックで拡大)。2階の屋内と屋外テラスが混然としてる空間。
そして屋上庭園にはスロープで向かう。
実際に屋上まで上がってみると正直室内ほどの面白さはなかったけど…。混沌とした室内空間から開放されたカタルシスみたいなものはあるのかな。何もないことがかえってホッとするみたいな。
というわけで、サヴォワ邸散策は終了。建築に興味がないとものすごく感動するってことはないだろうし、現代建築から見ればちょっと変わってるけど許容範囲の家にしか見えないかもしれない。でも世界遺産となる重要文化財であることは確か。いったんは解体されそうになったところをアンドレ・マルロー文化相がいたおかげで保存できた幸運の物語なども合わせて楽しみたい観光地だ。旅の初日の朝からだったのでその後ホテルで爆睡した。
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