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2015.01.22

スイスフランショックとともに読み終えた『世紀の空売り』

Eurchf20150116

相場関係の話は出来るだけしないようにしてるけれど、先週末のスイスフランショックは歴史的事件だったのでちょこっとだけ触れてみたい。スイス中銀が2011年から続けていた介入政策を反転させユーロペッグをやめたと宣言した途端にユーロスイス相場は“炎上”し、アルパリUKというFX業者が破たんしてしまった。顧客の損失を肩代わりするはめになりその損失がキャパを越えてしまったという。感覚的には一瞬の出来事だった。

アルパリといえばMetaTraeder4(MT4)を使ってリアルトレードが出来る数少ない業者のひとつで、MT4を研究していたボクは日本法人のデモ口座で自分の作ったインジケータを元にデモ取引をしていた。ユーロ円をショートして2か月弱で元金が5倍になっていた(デモ口座の話です)。炎上前に手仕舞いしていたのでポジションに実質的な影響はなかったが、これがライブ口座だったとして胴元が破たんしてしまったらと考えるとゾッとする。

資産は信託保全されているというから最低限守られているとはいえ、こんなことが起りえるFXの世界だということをしっかり覚えておく必要はあると思った。インターバンク市場と直につながっているというNDD方式は業者との相対取引でないという意味で業者と顧客はWin-Winの関係にあるかもしれないが、一端カヴァできない損失を顧客が出したときには一緒に破滅する。また売り一色・買い一色の市場では約定したくても値がつかないこともある。NDD方式がメリットばかりでないことを肝に銘じなければならない。スリッページの幅が広いだの狭いだの手数料が高いだの安いだの、いつの時代も素人はそうい部分にうるさいけれども、リスクはそういう部分ではまったくないところにあるということだ。

ちょうどこのスイスフランショックがあったころ、マイケル・ルイス著『世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち (文春文庫)』を読み終えた。2007年前後のサブプライムローン問題を追ったノンフィクションだ。マイケル・ルイスの筆致は冴えわたっていて、東江一紀の翻訳も読みやすい。

途中、専門用語がいくつも出ては来るが、そもそもモーゲージ債がらみの専門用語なんておまじないのようなものだから意味などない(笑)。どんどん読み飛ばしていい。もっと大きなうねりを感じながら、ウォール街が作り上げた壮大な虚構(詐欺)とその崩壊に賭けて勝利した極々少数の正常な(しかしちょっと風変わりな)人々の足跡を楽しもう。いまちょうど日本株(低位株)買いをしているコーンウォールキャピタルマネジメント社も主要プレイヤーだ。

2015年くらいになればようやくサブプライムショックも冷静に読めるのではないか。世界は7年で一回りするという。もちろんウォール街はなにも変わっちゃいないし、問題だらけのイカサマ市場がいつでも出てくる土壌を温存してる。だとすれば余計に読む価値はあるというものだ。

僕はショートで勝つという物語も大好きだ。好きな相場師もヤマタネだったりする。誰もが買っている相場で勝よりも誰もが投げざるを得ない相場のなかで勝つほうが何倍も価値があるし一番爽快だとも思う。もっとも『世紀の空売り』を読むと必ずしも爽快とは限らない結末が待っているのだが。しかし「人の行く裏に道あり花の山」をこれほどまでに見事に達成した実話というのはやはり爽快だ。マイケル・ルイスという文才あるライターであったことも良かった。

またボクは巨額損失事件とか巨額詐欺事件を読むのも異常なくらい好きだ。巨額損失事件というのはほとんどの場合、たった一人の人間が多くの関係者(ほとんどはネクタイを締めて紳士面をしながら何も理解していない業界のお偉方)の裏側で潜航し、ある日突然発覚する。そのダイナミズムと仕事をしているようでしていないネクタイ紳士の没落にたまらないカタルシスを得るのだ…。

ニック・リーソンの『マネートレーダー銀行崩壊』や井口俊英の『告白』はいまや古典だが、FACTAの『オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社』や田中周紀の『飛ばし 日本企業と外資系金融の共謀』など、読み始めたら止まらない感覚になる。

ただこういうノンフィクションは読みたくない時期もあったりするので「いまだ!」という時期まで温存しておくことが大切だ。ボクはこのスイスフランショックまでは『1964年のジャイアント馬場』を読んでいた(笑)。これもめっちゃ面白いノンフィクションだが、いまは気持ちが市場に向いているためプロレス話はちょっと小休止しているわけだ。

また『世紀の空売り』はマイケル・ルイスの次の作品『ブーメラン 欧州から恐慌が返ってくる』に向かうために読んでおくべき文庫だった。時系列通りに読めそうなので、ジャイアント馬場はもうしばらくお休みだ。今年は良くも悪くもユーロ(および欧州通貨)の激動の年になるはず。『ブーメラン』もまさに今読んでおくべき文庫だ。そしてその後にはマイケル・ルイスの『フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち』も待ち受けている。いつになったらジャイアント馬場に戻れるかさっぱりわからないが、とにかくどれも(馬場も含めて)早く読みたくてたまらない。

最近、蔵書を手放す取り組みばかりしている(ブログもそればっかり書いてる)せいか、その反動で読書がしたくてたまらない。一冊一冊がとても貴重に思える。それはいいことかもしれない。

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