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7 posts from September 2014

2014.09.29

コレステロールにまつわるメモ

昨日に引き続き大櫛陽一先生の講演『脂肪とコレステロールは、あなたの体にいいですよ』から。今日の聴講メモはコレステロールだ。私にとってコレステロールはすでに「気にする必要なし」と結論が出ているので、今回の講演会はそれを裏付けるものだった。

しかし産業医はコレステロール値の高さただ一点だけを突いてくる。他の数値がすべてA(良好)であってもコレステロールを下げる薬(リピトールなどのスタチン類)を飲ませようとする。それはなぜかという疑問にしか興味はない。

今回の講演会でもっとも興味をそそった部分から書いてみる。「世界でのコレステロール仮説の終焉状況」だ。

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・米国では2003年以降、コレステロール値に関するガイドラインは出していない。米国内科医師会(ACP)では遺伝病(家族性高脂血症)の疑いがある人のみ測定の必要があるが、遺伝病でないとわかればコレステロール値の測定自体が不要だという。

・米国心臓病学会(AHA)も低リスクの人は血圧・コレステロールの測定は5年に1度でよく、大きさや密度などの測定は不要。LDLコレステロール(通称悪玉コレステロール)の正常値は189以下であり、遺伝病検査対象は190以上、さらに悪玉コレステロールの低下治療目標値は廃止された(2013年11月現在)。ちなみに日本動脈硬化学会の正常値は119以下である。

・英国では2011年に科学的根拠に基づくガイドラインが示され、低リスク者に対してコレステロール低下薬を出さないよう注意喚起。大櫛先生によると、その基準での日本の低リスク者は男性96.1%、女性99.8%である。

・トルコに至っては2011年12月、法律で一般医と家庭医のコレステロール低下薬処方を禁止したという。

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・そもそもコレステロールは細胞膜の材料だ。また脳神経細胞、生体ホルモン、消化液、ビタミンDの原料でもあり、人体には欠かすことのできない物質といえる。

・体内コレステロールは通常、食品から2割、肝臓で8割が作られる。肝臓はコレステロールの製造に忙しい。ケトン体も作って各組織に供給してくれているのが肝臓だ。肝臓を悪くするとケトン体もコレステロールも作られにくくなる。逆に食品由来のコレステロールを増やせば、肝臓はそれだけ休むことができる。つまりコレステロールは積極的に食べるべきだといえる。特に酒飲みはコレステロールを食べたほうが肝臓に優しい。炭水化物を制限しコレステロールをたくさん食べるべきだ。「まったく非常識な!」と思った人が多いだろうか。健康のために真逆の生活をしている人が多数派だと思う。

・コレステロール値低下薬とは何かといえば肝臓の機能を制御する薬だ。肝臓に介入して機能を低下させコレステロールの製造を阻止する。さらにこういう薬を飲む人は食品からもコレステロールを減らす。肝臓でのコレステロール生成を止め食品からの摂取も減少させては体が衰弱するだろう。グローバルな正常値に照らして正常な肝機能を薬によって機能低下させる日本の基準値はあまりにリスキーだ。

・コレステロールの多い食品を食べても血中濃度は変わらない。なぜならLDL受容体が調節しているからだ。卵を少々(5~14個)食べてもLDLコレステロールの血中濃度は変化しないという実験結果がある。

・LDLコレステロール値が高いほど死亡率が低い。日本では要治療(=薬)とされる140~159あたりの男性が一番死亡率が低いという。このレベルであえて薬を飲んで寿命を縮める必要はなく、もっと高い値(~190)でも投薬の必然性はない。日本以外では。

・なぜ世界の流れに逆らって日本だけがコレステロール値の正常値をここまで低く設定しているのだろうか。ひとつの切り口として製薬業界の思惑が考えられる。メバロチン(プラバスタチン)を発売していた製薬会社(三共)は大阪大学第二内科の奨学寄附金として2000~2005年の6年間で1億1000万円程度提供していた。ダントツ1位で、2位の武田薬品の約3倍だ。上位20社で約8億円が流れている。

・各国が取扱い注意としているスタチン。日本ではほとんど何の説明もなく真っ先に手渡される薬だ。無作為化試験で判明したコレステロール低下薬の副作用は筋肉融解、糖尿病、肝臓がん発症率増加、出血性脳卒中増加、認知症、睡眠障害などが挙げられた。英国医薬品庁による副作用報告では、うつ状態、睡眠障害、記憶喪失、性機能障害、間質性肺炎、発がん、多発性神経炎、催奇性が挙げられた。糖尿病の発症率は1.7倍だという。

脳の障害が目につくのは偶然じゃないと思う。肝臓の機能を抑圧するコレステロール低下薬はケトン体やコレステロール(脳神経細胞の原料)を激減させるため、これらをもっとも必要としている脳に異常が発生しやすくなるのだろう。筋肉融解もよく聞くが、これも肝臓の機能低下の影響だ。コレステロールを抑制しすぎて肝臓を悪くすれば肝臓の薬もまた売れるんだろう。

そんな日本では日本動脈硬化学会による2012年の(恥ずかしい)ガイドラインがあり、LDLコレステロールは120mg/dl以上を脂質異常症としている。世界の常識では正常以外の何ものでもない人間を病人にしているのが健康診断の基準値といえる。ちなみに製薬会社から大量の寄付金を貰ってた人はメタボリックシンドロームの提唱者として有名な医師だった。ズブズブとはこういうことを言うのだろう。

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2014.09.28

中性脂肪(TG)にまつわるメモ

今日は日本糖質制限医療推進協会主催の講演会に参加してきました。同協会理事長の江部康二先生と大櫛陽一先生(東洋大学名誉教授/大櫛医学情報研究所所長)とのお二人の講演でした。わたしにとってはこのお二人と老人学の柴田博先生がいわば健康管理の心の師匠、健康三銃士なので(笑)、これは聞き逃すことの出来ない講演会だったといえます。

思えば10年前、相場指南のセミナーに通っていました。あのころ相場の(こころの)師匠軍団を相場戦隊ゴレンジャーと名づけて、天才5人衆のワザや思考回路を身に着けようと必死になってました。どこまで近づけたかわかりませんが、あの情熱がなかったらいまの私はありません。

そしていま、似たようなレジメを配られるセミナーに情熱を傾けているわけですが、レジメのグラフはユーロドルチャートやローソク足ではなく、「中性脂肪と原因別死亡率」とか「LDL-C値が高いほど死亡率が低い」といったグラフなわけです(笑)。

正直、金儲けはいつでもできる。釣りみたいなものだから。だけど健康は一日にしてならず。やっぱ健康が一番だね!なーんて。そういう気持ちはもちろんありますけれど、それ以上に現代医療、とくに薬をホイホイ出すだけの自動販売機のような産業医のあり方へのアンチテーゼに興味がありました。

いまほど健康常識が揺らいでいる時代はなく、医者の古い知識(2001年までの知識)による弊害が世界的に受容され正されつつあるなかで、日本医学会がガラパゴス化している現実に戦慄を覚える人は少なくないでしょう。

そんなことを言えばやれ医療否定だなんだと言われるのですが、製薬会社とのズブズブの関係で既得権益を守りたいのは誰だという話でもあります。野次馬的にはそっちの興味も大きいですね。そんな興味に対しても大櫛先生は実名を挙げてくださるので助かります(笑)。

さて、ここではとりあえず、今日の講演から大櫛先生の『脂肪とコレステロールは、あなたの体にいいですよ』という講演からのメモを残しておきたいと思います。素人メモなので勘違いなどもあるでしょうけど。

コレステロールに関しては何本かここでも書いてきて認識はほぼ変わりません。まぁ大櫛先生の著書や外国の推薦図書を読んできているからなわけですが、それを補強するような意味合いになるはずですので、今日はその前段として「中性脂肪(TG)」について聴講メモとします。ここもかなりわかりやすく面白いお話でした。

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・日経メディカルの2014/7/6の記事では過半数の医師が「糖質制限」を支持し、医師の3人に1人は自ら実行しているとのこと。この記事ですね。数年前なら考えられない高率と言えます。

・中性脂肪(トリグリセロイド)はダムの水に例えるとわかりやすい。炭水化物(糖質)から作られるグルコース(ブドウ糖)がインスリンの作用によって脂肪組織に取り込まれ中性脂肪(TG)として蓄えられる。これを必要に応じて脂肪分解して血中に戻す。糖質制限をすると入ってくる糖質が少ないため、このダムの作用によって蓄えられたTGを脂肪分解して利用する量が増える。だから中性脂肪が減っていくわけだ。

・脂肪組織にはグルコースルート以外に遊離脂肪酸(FFA)ルートがある。血中に存在しているFFAもインスリンが分泌されると脂肪組織に取り込まれる。血中のFFAは10g程度しか許容できないため、インスリンが作用しなければ便として体外に排泄される。

・糖質制限をするとインスリンの分泌が減るため脂肪組織に取り込まれるTGが減る。同時にFFAの脂肪組織への取り込みも抑制される。どちらのルートも通行止めだ。さらに蓄えられたTGが分解して使用される。だから痩せる。

・脂肪を食べるから脂肪がつくのではなく、炭水化物によってインスリンの分泌量が極度に増え、炭水化物からしか作られないブドウ糖が中性脂肪になるから太るわけだ。ここを「油を食べると太る」という説では説明できない。

・インスリンが出るとTGだけでなくFFAまでもが脂肪組織に取り込まれるからさらに太りやすくなる。インスリンをなるべく使わないためには糖質制限をするしかないわけだ。

・糖質制限をしてTGを分解すると血中にFFAとして戻る。このFFAは血中には多く存在できないから便として排泄されるが、肝臓にも取り込まれてケトン体を生成する。糖質制限してるから外部からブドウ糖が入ってこず、エネルギーを必要とする人体は体内から調達しようとする。つまりTGがケトン体の材料となるわけだ。このケトン体を肝臓以外の組織、例えば筋肉が取り込んでエネルギーとして使う。一説によると人体はエネルギーとして糖質(ブドウ糖)よりもケトン体のほうを好むという。人体はなんて合理的なんだろう。ただし肝機能に障害があるとこの回路は使えない。糖質制限は危険ということになる。

・食事の脂質を減らして糖質(炭水化物)を増やすとどうなるか。人体はインスリンを大量に出動させ、あらゆるルートを使ってブドウ糖やFFAを脂肪組織に蓄積しようとする。通常なら太る。しかしここにカロリー制限と称して食事制限をしてしまう人がいる。こうなると危険だ。脂質・タンパク質を減らしてしまうため栄養失調を起こすことになる。

・脂肪は食べてもほとんど排泄されるから太る原因にはなりにくいのだが、炭水化物を食べてインスリンを出動させているがゆえにFFAも脂肪組織に取り込まれてしまう。油を食べるのが悪いのではなく、油と炭水化物(ご飯やパンや芋)を一緒に食べることが悪いわけだ。健康のためにはカロリーを控えるよりも糖質を控えるべきなのだ。

・もっとも油には太るか痩せるか以外の問題もあるわけで、人体にとって何がいい食材かは多面的・複合的に捉える必要がある。そうはいっても炭水化物だけが太る原因だということには変わりなく、糖質制限をするならカロリー制限と併用すべきでもなく、しっかり栄養(脂質・タンパク質)を摂取しながら糖質を食べないということが基本戦略になる。

・厳格な糖質制限をしても糖質は多少入ってくる。それは野菜に糖質が含まれるからだ。

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2014.09.27

年末のカラオケはLui-Luiに決定!『時の旅人』を聴く

太川陽介『時の旅人』を地図に乗せてみたいやはや、こんなに届くのが待ち遠しく、届いてからは歌詞カードを目で追いながらジックリ聴いたアルバムはどのくらい振りだろう。ひとくちメモ10周年の記事を紐解くに、中島みゆきさんの『常夜灯』以来、2年ぶりかもしれない。思わず古い地図帳の上にジャケットを置いて写真を撮った(笑)。

「ローカル路線バスの旅」の大ブレイク、その第18弾放映と合わせての初の著書『ルイルイ仕切り術』に、この32年ぶりのニューアルバム『時の旅人』と、まさに2014年は太川陽介当たり年だった。

その第18弾も番組ファンの記憶に残るほどの出来栄えで、太川陽介さんの気分はまさにルイルイに違いない!

そんな番組ファンの一人である私ポップンポール、ここは著書も読むしCDも聴かねばならない。そして読んで聴いた結果、30年という月日をひとり思うのであった(confident)。

30年は長いがその長さは答えを出すのに必要な長さかもしれない。ボクが中島みゆきファンとしてメディアにちょこっと呼んでもらった経緯も前に書いたけど、それもファン歴30余年のとき。30年続けていれば何らかの転機が訪れるのかもしれない。特に10代の頃から続けたいものが見つかったなら、細々とでも続けてみることを中学生には勧めたい。

●ルイルイが見せる3つの時

おそらく太川陽介さんにとって「ルイルイ」は3つの“時”を持ってる。一つ目はもちろんデビュー後3枚目のシングル曲かつ大ヒット曲、代表曲としての「Lui-Lui」。それまでフォークソング調の曲を静かに歌っていた新人歌手だったが、レッツゴーヤングから売れた狩人の「あずさ2号」に続き、番組メンバーだった太川陽介のために都倉俊一先生が作曲された楽曲だった。

この当時の都倉俊一という作曲家はあの阿久悠が絶大な信頼を置いた時代の最先端をいく感性の作家であり、和製フレンチポップのような彼にしか書けないキラキラした楽曲を次々と発表していた。

楽曲の良さもあって「Lui-Lui」は大ヒットした。アイドルとして頂点に達したと言っても過言じゃない。太川陽介といえばルイルイ。それが俳優専業になった後もずっと続いたルイルイの第2のイメージだ。いわゆる一発屋である。

『時の旅人』の歌詞カードに書かれていたのだが、太川さんが事務所のオーディションで歌ったのはさだまさしの「僕にまかせて下さい」という曲だったという。この曲はクラフトというグループのデビュー曲(1975年)だった。そしてデビューからルイルイまではこういう路線の楽曲を歌っていた。

『時の旅人』にも太川陽介さん作詞の曲が2曲入っている。「この汽車に乗れば」と「もっと君らしく」の2曲で若いころに作られた曲のように思える。なぜならまさにフォークソングそのものだからだ(coldsweats01)。いまリメイクするなら「このバスに乗れば?」とか「もっと君らしく(蛭子さん除く)」といったタイトルになるはずだ(うそ)。

つまり若き太川陽介の意識はまったくアイドル指向ではなかったのだ。それが自意識とまったく異なるLui-Luiでアイドルとしてブレイクし、そのイメージが一発屋としてつきまとっていくのだった。

「いま何やってるの」とかそういう非常な世間の声に怯え、出歩くことに臆病な時代があったという。「あー、あの、ルイルイの」とか言われたらきっとカチンと来ていたのではないだろうか。だがそういう時代が蛭子さんに負けない精神力を養い、30年の時を経て旅人として再ブレイクする下地となっているはずだ。

そしていま「Lui-Lui(2014 ver.)」を明るく歌える太川陽介の時が来た。正直、最初に2014ヴァージョンを聴いたとき「バッキングがうるさいなぁ」と感じた。YMO以降のハウスやテクノで鍛えたはずのこの耳に「打ち込み辛いな」と。

都倉俊一作編曲のオリジナルも入っていて、やっぱ70年代ポップスはホーンセクションとストリングスとエレキギターの掛け合いでなきゃと思う自分がいた。高橋達也と東京ユニオンが演奏できる構成でなきゃみたいな。

もちろんそれは郷愁かもしれない。それに逆らう必要もない。リスナーも時の旅人なんだから。だけど時間旅行は過去に行きっぱなしでないのがいい。2014ヴァージョンも何度か聴くうちに耳になじみ、オリジナルの編曲を尊重して作られているようにも思われ、なにより今の太川陽介さんの歌がとてもいいのだ。

ルイルイの3つの“時”を感じ取れるいいアルバムだ。「時の旅人」の“時”には、路線バスに乗り遅れないよう時に追われる旅人という含みを感じてしまうわけだが(笑)、もっと純粋にあの頃にタイムスリップも出来る真っ当なアルバムだった。ボーナストラックの「あなたとラブ・レイン」で香坂みゆきさんがゲスト・デュエットというのもボーナス感あり。

それにしてもルイルイ。昔の曲と新しい曲、どちらも声がいい。この声はさすがサンミュージックが逸材と認めたものだ。そして楽曲がいい。この都倉メロディだからこそ32年の時を超えられたんだと思う。

昨年の年末は布施明の「積木の部屋」をカラオケ曲のレパートリーに入れたボクだが、今年は「Lui-Lui」に決定!とはいえこの曲は結構難しい。AメロとA'メロ(Bメロ?)との処理が違う。特にサビ前のA'(B)のメロディラインがヒトクセあり。丁寧に歌いたいところだ。そしてサビだが、めっちゃ気持ちよく歌った後の最後の「ルイルイ!」がなかなか叫べない。いい音程が取れない。

新旧両方聴いて知ったのだが、旧ヴァージョンの曲の最後には「ルイルイ!」と叫んでなかった。てっきり最後は「ルイルイ!」と叫ぶものとばかり思っていた。2014ヴァージョンは叫んでいる。だから叫んで締めたい人、カラオケは2014ヴァージョンで。ひとくちメモでした~(笑)。

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2014.09.21

祝・第18弾「ローカル路線バスの旅」後に攻略本を読み解く!?

ローカル路線バスの旅攻略本

テレビ東京「ローカル路線バスの旅」の第18弾が放送されてから早くも一週間が経ってしまった。本放送時にはツイッターで呟きながら視聴していたが、この第18回は番組ファンの間でも語り継がれるのではないだろうか。録画して2回見たが飽きない(笑)。

第18弾の野村真美さんは最高のマドンナのひとりだったといえる。第17弾のときに番組を西遊記として捉えマドンナを三蔵法師に見立てて適当なことを書き飛ばした私だが、西遊記との一番の違いは三蔵法師のモチベーション、参加意識にあると思う。

西遊記で天竺に一番行きたいのは三蔵法師だ。だがローカル路線バスでのマドンナはお客さん的なポジションといえる。しかし時にお客さんではなく、まさしくメンバーとなって働き、ともに苦しみともに楽しめるマドンナがいる。野村真美さんはそういうタイプのマドンナだった。少なくとも画面からそれを伝える力を持っていたと思う。

レギュラー陣の意見を尊重しながら、しかし蛭子さんを質問攻めにして眠らせない(笑)。これがどれほど困難なことかは、毎回車中で眠ってる蛭子さんをイジる太川陽介リーダーを見慣れたファンはよく知っているのだ。

そうかと思えば、他人に自分の食事を分け与えることが異常に嫌いな蛭子さんの皿から野村真美さんがハンバーグを自家箸で取っても蛭子さんが怒らなかった(注文しすぎて腹いっぱいだったからという意見もあるが)。

そんな存在感抜群なところを見せた野村真美さんとともにローカル路線バスそのものも綱渡りな乗り継ぎでスリリングな展開だった。太川陽介リーダーが地元の人に投げかける質問のしかたも、これまでの学習によって確実に向上していて、最後はそんなリーダーの面目躍如といった一手も出た。そりゃビールも美味いって!

そしてエンディング曲に今週発売となる太川陽介32年ぶりの新曲「時の旅人」が流れたのであった。

●ローカル路線バスの旅の名コンビの理由を探る2冊の著書

この番組の大ヒットが出版界にも響き、太川陽介リーダーが書いた初の著書が『ルイルイ仕切り術』(小学館)だ。私が購入したのは9月13日番組放映直後だが、その時点でアマゾンのタレント本ランキング第10位だった。上位にはAKB48関連本と写真集ばかりが並んでいるなかでだ。第11位が『Sexy Zone写真集 Be Sexy!』(予約受付分)だった。なんとジャニーズ越えなのだ(笑)。

第18弾の番組記事を書くにあたって、ここはちゃんと『ルイルイ仕事術』を読んでからにしようと思ってすぐに買ったわけだ。だが読み始めて少し経つと本当にそれでいいのだろうかという思いが強くなってきた。

この番組は太川陽介さんと蛭子能収さんの名コンビ(迷コンビ?)が人気の秘密なのであり、太川さんの著書だけでは片手落ちではないかと思い始めたのであった。

ちょうど蛭子さんの著書『ひとりぼっちを笑うな』(角川ONEテーマ21新書)も今夏に発売されたばかりだ。いまやバラエティ番組で引っ張りだこの蛭子さんだが、こちらも「ローカル路線バスの旅」がブレイクのきっかけであり、いまの思いが綴られているに違いないと思った。

そこでこちらも注文した。駅前の書店で棚ざしの一冊を見つけたのだがオビがこすれて破れていたのでネットで買った。届いたのは9月18日。この記事の最初の写真を見ても分かるようどちらもオビがいい!太川さんの著書には蛭子さんのイラスト入りだ。

また、「ルイルイ仕事術」の奥付は、蛭子さんのイラスト込みで「ルイルイ仕事術 俺だって休みたい」がタイトルなんだと主張するかのような装丁になっていた(笑)。

揃った2冊をザッピング感覚で読んでいった。1冊読み終えて次ではなく、ルイルイを数十ページ読んでは、蛭子さんを数十ページ読み、またルイルイに戻るといった読み方で最後まで読んだ。

いや、面白かったな。まったく性格も考え方も異なると思えた二人だが、この二人だからこそローカル路線バスの旅が長く人気を博しているんだなということがわかったような気もした。

●太川陽介と蛭子能収、実は似ていた(笑)

もちろん二人は見ての通り、番組内での役割がまったく違う。

太川陽介はリーダーでありこの番組の旅の行方に責任を持つ。実は責任はないのだが、太川陽介があきらめたら確実に番組は面白くなくなる。時間的な尺も足りなくなるだろう。その責任を自覚してバスのなかでは一睡もせず地図とにらめっこし、地名を覚え、他のふたりのために選択肢を用意する。ロケの前日にはいつも新しい服と靴を買うそうだ。それも雨や田舎の風景でも画面が暗くならないよう明るめの服を新調するというのだ。それがリーダーの自覚というものだろう。蛭子さんのように履きつぶした革靴の底がロケ中にめくれ上がるようなことはない。そればかりか蛭子さんのそんな事態に備えて接着剤まで常備していたりするのがリーダー太川陽介なのであった。

そんなリーダーに対して蛭子能収は参謀ですらない。嫌なことは嫌だというし、とにかく好き勝手に振る舞っているようにも見える。思ったことがつい口をついて出てくる。それがときに太川陽介をカチンとさせる。バスのなかは寝るところだと考えている。だが歩くのも好きではない。なぜならバスの旅だから。だったらバスで寝るなよと言いたくなるが。夕飯も郷土料理には目もくれずカレーやとんかつ、ラーメンなどを食べる。テレビ的情報には無頓着この上ない。タレントとしてなにかを見せる意識をまるで持っていないかのようなのだ。そこが逆に受けているともいえる。

つまり役者としてリーダーを演じ番組の見え方を意識する太川陽介にたいして、仕事は断らない主義だけど好き勝手に振る舞うだけの蛭子能収は、交わることのないはずのタレントなのであった。

しかし著書を読むにつれて、似てるなと思うところもところどころ見えてきた。まず、二人とも売れない時代を味わっているということ。アイドル歌手として大手事務所から逸材としてデビューし「ルイルイ」を大ヒットさせた太川だが、自らアイドルをやめ俳優を目指して挫折を味わう。かたや蛭子も漫画家になる前は看板屋やサラリーマン生活を経験している。テレビで顔が売れて本業の漫画が売れなくなったとも。これらの経験は他人への視線を厳しくするとともに、他者からの思いやりのありがたみも心底わかっているような気がする。だから他人にも優しくなれる。

また二人とも個性を尊重する。人は人、自分は自分という個人主義的なところがどちらにもあるようだ。特に太川陽介は蛭子に対してイラついても、最後はそれが個性なんだからと受け入れる。蛭子能収は根っからの個人主義だということが著書全体を貫くテーマとすらいえる。そんなベタベタしない関係がたまのバス旅行を新鮮なものにしているのではないだろうか。

そして意外なことに蛭子さんもルールを守りたい人だった。好き勝手するにも自分なりのルールがある。社会生活を送るうえでもギャンブルに熱中するうえでも、社会のルールからは逸脱したくないという絶対的な指針をもっていた。第18弾のなかでも「バスがあるときはバスに乗る。それがルール。」と冷静に言っていた。体言止めで冷静に話すときの蛭子能収にはインテリ風の凄味がある(笑)。それがたとえ歩きたくない言い訳だとしても、その言い訳に「ルール」を持ち込むわけだ。

大切なのは自由とカネだとも言った蛭子だが、この著書を読むとその根底には社会ルールを守り自分で稼いだカネで遊ぶならどんな遊びも自由だし尊重するという思想すら見える。

●テレビ業界におけるガチとは!?

他にも二人とも奥さんについて最後に書いていたりとか、「エビが小さい」発言事件への言及がどちらの著書にも出てきたなど共通点があった(笑)。ただしこの事件が同じ事件のことかどうかは微妙である。蛭子さんは食レポ番組でのエビフライ事件と書いているが、太川さんは路線バス旅のロケで海老の塩焼き事件として報告している。内容はどちらも蛭子さんの不用意な発言なので、もしこれが別々の事件だったとすると蛭子さんはいろんなところでエビが小さいと発言してる可能性がある(wobbly)。

エビフライ事件はともかく、これらの共通点は相手を個人として尊重しつつ大人の付き合いができる二人だということを表していると思う。そして二人とも別の本業を持っているというところがいい。芸人どうしの旅だとこうはいかないだろう。(芸人の旅を否定はしないが、他局が似たようなフォーマットでやろうとするのは面白くないからやめたほうがいいと思う。)

本業があってスケジュールを開けてくれて台本なしでゴールできるかどうかもしれない旅をしてくれる大人なタレントを意図してブッキングするのはおそらく困難を極める。たまたまスケジュールに余裕のあった二人で台本なしのバス旅を企画して、そこに確信を持てたテレビ東京のスタッフの運と実力のたまものともいえる。テレビ業界においてガチはゆるさの裏返しである(笑)。ゆるいテレビ東京だからこそガチで台本のないバス旅行が実現したのだと思う。

最後に余談だが、蛭子能収さんの著書を読んでめっちゃ共感する自分がいた(笑)。考え方がかなり似ていた。蛭子さんも「YOUは何しに日本へ?」が好きらしい。また大企業とか肩書で人を見ないとこも、右翼的な言動に違和感を覚える平和主義なとこも、趣味が人生を豊かにするという主張も、ペットで孤独は癒せないという主張も、どれもこれもまったく同感だ!一見非常識と見える蛭子能収の生き方、現実社会での振る舞いはなかなか自由を体現できない日本人のある種の理想でもあろうし、その徹底した個人主義を貫く姿が異邦人のようでもあろうし、やはり現代日本で漫画家兼タレント以外にはしずらい少数派な生き方かもしれない。でもボクも蛭子さんほどではないかもしれないが、ゆるい個人主義を貫いてガチに生きていければと思うのであった…。

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2014.09.15

『猿の惑星 新世紀ライジング』から猿は素因数分解可能か?

自堕落な生活を絵に描いたことありますか。僕はあります!

というわけで、本来なら最高傑作との声も出るであろう「第18弾ローカル路線バスの旅」について書きたい気分の3連休ではあったが、太川陽介さんの著書『ルイルイ仕切り術』(小学館)をまだ読み終えていないため、それは読み終えてから書くことにした。

土日と行楽日和だったが今日は薄曇り。6月の定期点検以降まったく乗っていなかったスーパーカブ110に多少は乗らなきゃと思って「猿の惑星 新世紀ライジング」の先行公開を観に行った。シネコンには上映時間ギリギリに着いた。シネコンは上映開始5分前くらいになったら、その映画だけの列を作ってくれないかな?延々お子様映画の行列に並ぶことになった。まぁ間に合ったからいいけど。

「猿の惑星」にそれほど思い入れはないけれど、前作の創世記ジェネシスが面白かったので選んだ。

猿の惑星は第一作の衝撃的なラストが当時としては画期的で、ほぼそれで完結していい映画だったと思う。しかしその後5作も作られた。ただ5作目(ま、別物だけどね)の創世記ジェネシスは切り口が良くていい映画だった。スペクタクル巨編でなかったところが良かった。

そして今回の新世紀ライジング。まさに大スペクタクル巨編だ(笑)。CG全盛の映画界だからもはや作り出せない画はないと言ってもいい。そこに驚く時代でもない。だから良くも悪くも内容が問われる。猿の惑星もまさにそういう映画だ。この映画からCG技術を素因数分解して見なければならない。

なかなか良くできた映画だ。この映画が描く対立の構図は現代社会の寓話になり得る。どんな集団にも立派なリーダーと馬鹿で好戦的なサブリーダーがいて、内部抗争などやりながら戦争に突っ走る。

どちらにも和平を目指す善良な主人公がいてうまく交渉を進めるが、必ずそれを邪魔するアホが事態を収拾不能な状態に陥らせる。

かつて何度も描かれたであろう絵に描いたような展開だ。ただこの映画は相手が人間でも宇宙人でもなく知能を持った猿なのだった。

描き尽くされたテーマを使って人類が知能を持った猿と戦う映画なわけだが、それならばこの映画のオリジナリティについてここで考えなければならないのは「なぜ猿なのか?」だ。

しかもその猿どもは英語を話す。この時点ですでにこの猿どもは英語文化圏にとって異文化ではない。言語の通じない連中より御しやすい。意思疎通ができるという部分では人類どうしよりもハードルが低いかもしれない。

敵を猿に見立てる。猿とでも仲良くできる。猿なんて信用できない。猿とは共存できない。猿が攻めてくるなら殺してしまえ。いや猿には猿の文化があるから尊重しよう。あたかも猿を人類に置き換えて考えることを示唆しているかのようだ。

様々な問題をはらんでいるわけだが、相手が現実に英語をしゃべる猿であるから人種差別にはならない。しかしこれを寓話として見るなら非常に危うい綱渡りかもしれない。

そんな危うさを感じないでこの映画を楽しもうと思えば、確実に人類の敵は英語をしゃべる猿以外のなにものでもないと心から信じて、そこになんの教訓も比喩も見出さないで、大スペクタクルCG映画の技術を楽しむべきかもしれない。猿の惑星から猿を素因数分解しちゃいけないのかもしれない。

穿ちすぎだろうか。描き尽くされた正義や裏切りや信頼について、現代にも通じる普遍的な精神のあり方を「猿の惑星」によって繰り返して見せる。何度でも正しいと思う正義を形を変えて表現することに意義があるのだろうか。

それもアリかもしれない。それはアメリカの大衆映画が延々と行ってきた儀式のようなものだ。同時代人のなかで共有すべき正義のあり方、それを時代を超えて翻訳しながら伝えていく。

では人類対猿ではなく、犬対猿ではだめなのか?人類が介在しない寓話として描くことは不可能だろうか。おそらく不可能ではない。ウルトラマンはそうだった。人類はか弱き第三者だ。

だが「猿の惑星」で猿の相手を知能を持った犬には出来ない。それこそ突拍子もない馬鹿話になってしまう。例え犬が英語でなく日本語をしゃべっても中国語でも成立させるのは難しいだろう。

人類と敵対する相手は知能を持って英語をしゃべる猿、それ以上でもそれ以下でもない。ここで止めておくのが大人の対応なのだろう。

であるならば、「猿の惑星 新世紀ライジング」の脚本はあまりに凡庸だったと言わざるを得ない。「なぜ猿なのか?」の回答が創世記ジェネシスほど明確でなく、ただのCG映画のひとつでしかなかった。続編の難しさかもしれない。これも延々続いてきた宿命なわけだが。

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2014.09.07

テレ東「YOUは何しに日本へ?」も礼賛してみる

テレビ東京の看板番組になりそうな予感を感じさせる人気番組「YOUは何しに日本へ?」がますます面白さを増している。私も大好きでこの夏旅期間中は予約録画していた。帰宅後は延々録画を観ていたが飽きない!そこで今週土曜のローカル路線バスの旅第18弾が放送される前に(笑)、こっちも礼賛しておこうというわけだ。

番組MCはノリに乗ってるバナナマン。日村のビジュアルは万国共通らしく海外(の日本好き外国人)にも人気がある。番組の認知度があがりすぎて外国人にも日本各地の飲食店にも簡単に取材OKが取れる。設楽が「そろそろ番組名変えた方がいい」とまで言うほどに認知度が高いのだ。たまたま関空でインタビューしたフランス人留学生の女の子がバナナマンファンだったので、後日東京の収録スタジオに連れて行ってあげた回もあった。

予算の少ないなかニッチな分野で面白い番組を作ることにかけては全東京キー局のなかで群を抜いているテレ東(笑)。日本各地の空港で外国人を探しまわり突撃インタビューをする。その結果、直感で面白そうだとディレクターが判断したら密着取材を申し出る。取材NGも結構あるんだろうが、いまや人気番組で日本に来る外国人がこの番組を見ていたりすることも多く、密着取材OKは取りやすくなっているようだ。

おそらく日本人で外国人の恋人がいるとか、留学生の友達がいるとか、そういう人々の間では一般視聴率を超える視聴率を取ってるんじゃないだろうか。もっともその分、お相手の日本人が取材NGを出すこともある。また日本に来る外国人どうしのネットワークでも「成田に着いたらYOUは何しに~って番組が張っている(笑)」といった情報が回っていそうだ。

この前の放送では英語塾に通う小学生が空港で番組のマネをしていたとこに遭遇していた。それを観た取材ディレクターはその小学生にマイクと腕章を貸してやり、インタビュアー体験を手助けしていた。日本人どうしのこういうふれあいもある。

空港や駅、港にドラマがあるのは100年前からみんな知ってる。日本ドラマの歴史には「君の名は」なんつって橋の上にまでドラマがあった。出会いと別れの最前線というシチュエーションが空港にはある。

島国日本にとって空港は無作為に外国人インタビューをするには最適な場所だ。それをバラエティ番組にどう料理するか、そこがテレ東の上手さ(ゆるさといってもいい)とあいまって成功しているのだと思う。

●空港には誰もが平等に降り立つ

最近のネット用語的には“神回”と言われる伝説の放送回がいくつもある。AKB48の総選挙や握手会のためにイギリスやドイツからやって来た青年に密着していたらAKB48のイベント会場で取材が出来たり、何の知識もなくインタビューしたら実は世界的に有名なミュージシャンだったり。フリーメイソン餅つき大会の初取材に成功した回なども神回かもしれない(笑)。

有名人系ではフジロックフェスのときのTHE INSPECTOR CLUZOへの密着が面白かった。成田空港でインタビューされたときは密着取材NGだった。ディレクターもスタッフもみんな学生に見えたというのがその理由だった。確かに日本人は幼く見えがちだからあり得る。その後、ミュージシャン側の日本人スタッフがこの話を聞いてテレ東に電話してきたことで番組はフジロックフェスのバックパスをもらうことができたのだ。貴重な取材映像が完成した。

日本では有名じゃないが本国では(たぶん)キムタクレベルの有名人という人もいた。ペルーのエリック・エレーラさんだ。しかし在日ペルー人の飲食店にライブで訪れたエレーラさんの人気はものすごかった。また番組取材への対応もとても丁寧で好感度アップ!アマゾンでCDを探したが見つからなかった。

ミュージシャン以外にも様々な人が国際空港には降り立つ。「Youは何しに日本へ?」のカメラの前ではみな平等だ(wink)。日本では様々な分野の国際スポーツ大会や学会、お祭りが開かれる。そういうイベントに参加するトップアスリートや楽団、偉い先生などなど、次々とインタビューを受けてくれる。お忍びで来てるプロスポーツ選手などもいる(取材NGだったりもするが)。

空港というのは公共の場だが、プライベートな場でもある。その絶妙な隙間にテレビ東京は目をつけた。街頭インタビューはどの国のテレビ局もやってるだろう。それを空港でやるから意外性への期待度も高い。

また、日本人は外国好きであり、島国だけに外からどう見られているか(よく見られたい)という意識も高い。その嗜好性にも合致した番組だ。

未来に目をむければ、2020年東京オリンピック・パラリンピックが見えてくる。狙ってやるのでなく、あくまでもさりげなく、「Youは何しに日本へ?」が想定外のオリンピック関係者を直撃している姿が目に浮かんでくるのだ。


●一期一会を飲み屋の客に教えられる

空港でサプライズな有名人に出会うのも面白いが、この番組の醍醐味は無名の外国人、それも数週間滞在の外国人に密着取材できたときだといえる。

日本縦断の旅をしようとやってくる外国人の多さに驚く。もちろんそれは番組でインタビューを受けた人しか見ていないだけで統計的なものではない。

いろんな目的で訪れる外国人のなかでも、あえて旅するために日本を目指した外国人というカテゴリの皆さんは、番組が特番を作る気になるシチュエーションといえるだろう。ノープランだったりすると「みっけー!」てなもんだ。

テレ東は旅番組をたくさん作っているテレビ局だが、外国人目線での旅というのはなかなか面白い。それも作り物ではない行き当たりばったりなことが多いのがこのカテゴリの皆さんだ。

徒歩で鹿児島県から東京を目指す(そしてすぐ失敗した)若者、ガイドブックを目隠し指差ししながら行先を決める二人組、本国でも森の住人で天然温泉を探し求める元エリート金融マン、仙台から下関まで自転車で疾走し釜山に渡ろうとして成功してる自転車レーサー。都内で食べた佐世保バーガーに見せられ食べに来たミュージシャン。彼は思いつきで佐世保にも行ってしまい、佐世保バーガーの歌まで作った(笑)。

番組は彼らの旅にコミットしていく。あえて客観視したドキュメンタリーにはしない。彼らとお店との意思疎通が出来ないとき通訳もしてあげる。そこは取材対象と一線を引く報道番組とは異なるスタンスであり、それがまたバラエティ番組としていい味になっている。ディレクターは出演者でもあり、ときに人間と人間とのふれあいの当事者にもなる。

はじめからそういうスタンスと決めていたわけではないと思う。番組を作りながら、そういう関わり方が自然と身について行ったんだろうと思う。シチュエーションは違うが、ローカル路線バスの旅でもルールの変更(緩和)は見られた。これがゆるさの賜物でありテレ東の伝統芸かもしれない(confident)。108kgのカメラマンが富士山登山を逆NGしてしまうゆるさも含めて…。

この前の放送で、初めて日本に来た18歳の青年がいた。仙台に行く飛行機まで10時間待ちだから成田周辺を案内してほしいとスタッフに頼み込み、プチ密着取材となった。彼は日本語もほぼしゃべれずお金も持っていない。スタッフは彼に5000円のうな重を食べさせてやり、重要文化財のお寺に連れて行ったりした。

外国人の予定に密着するべきところをスタッフが数時間とはいえ旅をアレンジしてやったのはルール違反といえるかもしれない。だがそういうのもアリだなという判断を現場ディレクターがして放送してしまうところにテレ東らしさがあり、それで成立すればOKなわけだ。

地方空港ではほとんど外国人を見つけられず街中で見つけた素敵な外国人女性に密着したこともあった。前日失恋したばかりのその女性とディレクターが飲み屋で飲んでる映像が流れた(笑)。それもアリなのだ。

自転車で仙台から下関まで走破したレーサーに、ある居酒屋で隣の日本人のオッサンが話しかけてきた。そこでオッサンは彼に「一期一会」という日本語を教えてあげる。もう二度と会うことはないであろう出会いだからこそ大切に。最高の言葉を酔っ払いのオッサンから教えてもらった彼の日本縦断は、しかし一期一会という日本語によって明確な意味を持ち豊かになっていくのだっだ。この回も“神回”だったね。

一期一会。まさにその瞬間を拾っては映像化していくのが「YOUは何しに日本へ?」という番組だ。だがたまに、そうやって出会った外国人に会うために彼らの国へ行っちゃうこともある。その再会はいつも面白い。ときに切ないこともある。旅のふれあいのその先にドラマがある。人間の面白さを民放バラエティ番組でこんな風に見せてくれる貴重な番組だ。

●日本語としてのタイトルの面白さ

この番組にルールがあるとすれば、それは外国人をYOUと呼ぶこと。これくらいなのではないだろうか!?

そこにはこだわりがあると思う。

YOUは何しに日本へ?というタイトルは日本語としても興味深い。「何しに」には助詞の「を」がない。ちょっと日本語をかじった外国人の語学魂をくすぐるのではないか。「何をしに」では日本語としての語感が悪い。この日本語のもつポップなリズムをぜひ体得してほしい(笑)。

また「何しに」の「し」も「する」の活用形として奥深い。ここは国語と日本語とで教育法が異なる部分だ。日本語講座では「S+変化形」という教え方になると思う。国語では「し・し・する・する・すれ・しろ」というサ行変格活用だが、そういう教え方では外国人には敷居が高い。Sという子音の活用形としたほうが覚えやすいはずだ。

日本もどう読むかの問題がある。たぶん日本人がこのタイトルを読むなら、ほぼ全員が「ニッポン」と読むのではないか。なぜならその方が語感がいい、歯切れがいいからだ。

「にほん」と呼んでも間違いじゃない。しかし、せっかく「何しに」という助詞を省略した語感を使っているんだから「ゆーは なにしに にっぽんへ」というリズムを大切にしたくなる。

たとえば多少丁寧に「ゆーは なにをされに」と敬語を使ったならば「日本」の読み方は日本人の間でも分散するように思う。私なら「にほん」を使うと思う。語感最重視でいいなら「ひのもと」でも面白い。日本語の話題が広がるかもしれない。

最後の「へ」もなかなかだ。どうして「に」じゃないのか。これも語感の要素が大きい気がする。音にしたときに「ゆーは なにしに にっぽんに」だと、「に」が重なってちょっと違和感がある。この違和感は日本語母語話者以外にもあるかどうか?

実は格助詞の「に」と「へ」の使い分けは日本人でも難しい。いや、難しくはない。どっちを使っても通じるから。言語学的には厳密に違いがあるという学者もいるだろうが、実用的には話しているときの音、語感に左右されることが多いと思う。用法が「に」より限られそうな「へ」を無意識に使うこともある。

こうして見ていくと「YOUは何しに日本へ?」というタイトルが日本語非母語話者の日本語魂をくすぐるタイトルのように思う。もちろんここは私の妄想である。

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ということわざがあるが、その真逆だ(笑)。贔屓の引き倒しといういい方もあるな。これもいい意味じゃないか。内容がいいからタイトルもいいって上手い日本語で礼賛することわざはなんだろう?

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2014.09.06

文化的な生活に戻りたい(笑)

いやはや、夏休みが終わると怒涛のようなサル仕事で日々忙殺されております(bearing)。今年の夏は長い休暇をあまり有効活用も出来ず。まぁそれが本来の休暇なのかもしれないですが。ある意味贅沢。

日本国憲法第25条によって、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する私ですが、どうやら権利行使を忘れつつある日々…。

これじゃいかん!多少なりとも文化的な生活を取り戻したいと願う今日この頃でございます。そのためにはまず、私にとって健康で文化的生活とはなにかを定義しなければなりません(>うっとうしい野郎だな!)。


まず、健康。これはそのまま糖質制限的生活と置き換え可能かもしれない(笑)。そういえば9月2日には糖質ゼロ発泡酒が4大酒類メーカーから出そろったそうですな。サッポロビールの極ゼロファンの私ですが、他のもすべて飲んでみるつもりです!

健康を定義するつもりが糖質制限発泡酒の話になってしまうほどに文化の香りがしない。どうしよう。そんなとき見つけたのは、糖質セイゲニストの江部先生と統計でコレステロール神話を批判する大櫛先生の対談!

こんなスペシャルな対談が御茶ノ水であるという情報を先ほど得て予約入れました。もっとも定員オーバーしてたらアウトなんですが。

場所は以前韓流女子会でお世話になったエイジングビーフワテラスがあるワテラスホールです。一人で行くので夕飯エイジングビーフというわけにもいかないでしょうが(coldsweats01)。会場で誰かと意気投合して食べに行くみたいな展開があったら面白いけどなぁ。

肉をガンガン食べる健康生活!これこそ文化的な生活でしょう(笑)。脂質とタンパク質を食べまくるのです。

健康はそんなところかな…。

文化的な生活には精神的な刺激が必須でもありますね。映画でも観に行けばいいんでしょうが行動範囲に映画館がない昨今。どうしてなんだろうと考えてみるに、いまやホームシアターでオンデマンドに好きな映画が観られる時代なので、時間を決めて映画を観に行くというフローが描けなくなってます。

これがコンサートやそれこそ上記の対談のように、ライブ感覚のイベントは別です。その瞬間、その場にいることがイベントだから。でも映画はオンタイムである必要が薄れてる。それこそロードショー初日とかDVD化されないとか、そういうライブイベント的な仕掛けのあるときくらい。この違いがある気がしてます。

もっともロードショー公開されるいまどきの映画よりも昔の名画で観てない膨大な作品群のほうにボクの未来はあるような気がして、それも映画館に足が向かない理由かも。

そう考えるとライブがいいのですが、こっちの都合で来てくれないんで(笑)。クラシックだったら結構いろいろ選べるし、落ち着いて聴ける会場も多いため、クラシックコンサートを精神安定剤的に入れていきたいとは思ってます。でもまだ具体的にいつどこにというのは決まってません。

宝塚歌劇団もひとつ候補にあげたい。今年100周年で一度も見たことないから。友人に話したら「宝塚って普通のひとが見に行けるの?」と真顔で聞き返されました(catface)。どうもコアなファンのイメージがあって、クローズドな組織のように思っていたようです。

もっともチケットが取れるのかはまったくわからない。チケット争奪戦的な徒労感を伴うイベントだったらもういいって感じです。そういうのは若い人々にお任せして、もっとゆったりと過ごしたい。それが文化的生活(笑)。いい席じゃなくても場の雰囲気が楽しめる席がいいな。

実際に予約したなかでは、今年のハングルの日にあわせて韓国文化院主催の「ハングルの成立と歴史」という講演会があります。これも抽選なので行けるかどうかまだ未定ですが。

ハングルの原型である「訓民正音」の研究者による講演なのでぜひ聞きたいものです。ハングルという人工文字のシステマチックな構造は驚異というほかありません。

2年前、韓国文化院のイベントにはよく行ってました。キム・ギドク監督の映画を初めて観たのもハンマダンホールでした。確かにあの頃はいまよりも文化的生活をしていた感があるなぁ。

その他、バレーボールのVプレミアリーグもオンシーズン到来!こっちは女子バレーボールファンの友人K氏におんぶにだっこでチケットとってもらえることを期待(笑)。岡山シーガルズ(の宮下遥)を応援しに岡山県遠征もアリでしょう。スポーツでは女子卓球も注目ですね。

文化的生活を取り戻す。これが今秋冬のテーマでございます。

というわけで、さて、まずは糖質制限発泡酒でも買に行くかな。

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