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2014.04.26

祝・第17弾!「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」を考える


いまもっとも注目しているテレビ番組がテレビ東京の土曜スペシャルで不定期放送されている「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」だ。本日第16弾の再放送と新作第17弾が放送されるため、こりゃその前に何としてでも書いておかねばと思った次第。しかも今回の新作はボクの郷里山口県から室戸岬を目指す旅なんで期待値MAXなのだ。

巷には旅番組があふれているが、この番組はグルメなし有名観光地なし、それどころか目的地にたどり着けず終わることすらある。旅の目的はA地点からB地点まで路線バスを乗り継いで辿りつけるのかという過程にある、いや100%その過程にしかないのである。

第17弾を放送するくらいだから人気も高い。レギュラー出演者は太川陽介と蛭子能収の名(迷?)コンビ。いまや他局の番組にも二人で出演しこの番組の裏話をしたりしてる人気コンビとなった。そしてナレーションがキートン山田。そのリラックスした語り口の貢献度は非常に高いと思う。そしてもう一人、毎回レギュラーコンビがマドンナと呼ぶ女性タレントを引き連れて路線バスを探し回るのだ。

●メンバー構成を西遊記システムと捉えてみる(笑)

このメンバー構成を、たとえば旅の黄金比としての西遊記と考えてみたい。なぜそんなことを考える必要があるのか。それを問うてはならない...。

西遊記といえば波乱万丈の旅であり、個性豊かなメンバーであり、行先は天竺だがほとんどの人は天竺に着いてからの彼らに興味なく(笑)、その旅の過程だけが重視されている。メンバーは個性の強い4人だ。ボクらの世代にとっては日本テレビで堺正章が孫悟空をやっていたドラマの印象が強いだろう。

日本テレビドラマ版「西遊記」に当てはめてみると、お師匠様(三蔵法師)はマドンナだろう。そして孫悟空はもちろん我らがリーダー太川陽介だ。毎日路線バスの路線図と格闘し、あたかも如意棒のように日々のルートを伸ばしていく。3泊4日の旅の過程で毎晩地図を広げては赤線の引かれた地図を冷静に分析するリーダーだ。宿泊地について夜ビールジョッキを一気に8割がた飲み干してしまう姿を見て、心配した視聴者から注意の手紙が届く。このビール一気飲みも隠れた名場面だ。

となれば蛭子さんは猪八戒か沙悟浄だが、蛭子さんの特異さはこの二匹の悪いところ(人間的弱さや狡さ)を足して2で割ったような人だということなのだ(笑)。

時に足を引っ張り、愚痴をいい、責任逃れをする蛭子さん。だが正直すぎる物言いが第三者的には憎めないところもある。この旅には欠かせないトリックスターであり、誰もが蛭子さんの行動に注目する。この点を番組人気の最大のポイントとする意見も世間にはあるようだ。

そういう猪八戒と沙悟浄の複合妖怪である蛭子さんの裏返しとして、視聴者自身をこの旅に投影したい。視聴者は時に冷めた目でドジな蛭子さんを見る。その眼は猪八戒を見る沙悟浄のものだ。また皮肉や愚痴を言って場をシラケさせる蛭子さんをただただ笑ってみている視聴者の視線は沙悟浄を笑う猪八戒なのだ。つまり視聴者自身もときには猪八戒として、ときには沙悟浄として、いつのまにかこの旅に参加しているメンバーの一人なのである。

ナレーションのキートン山田さんはお釈迦様だ。基本的に彼の語りによってこの旅の行方が暗示される。キートン山田の手のひらの上で旅する(視聴者含む)我らは現代のプチ西遊記の旅に出ている。それがローカル路線バスの旅なのだ(ホントか!?)

彼らの行く手に次々現れる敵、それは時間である。路線バスの旅は時間との闘いだ。峠越えのバスは火曜と金曜しかないとか、一日に3本しかないとか、とにかく行ってみなければわからない。そのスリリングさも魅力のひとつだろう。万事休すと思われたときに、通常の路線バスではない村営のコミュニティバスが見つかり希望が見えることも多い。最近は日本中にコミュニティバスが導入されていることを実感する。行政も巻き込んだ旅なのだ。

●テレビでしかありえないファンタジーとして捉えてみる

もうすぐゴールデンウィークだし、こういう旅をやってみたいと思うこともある。しかし通常は躊躇してしまう。その理由を自分なりに考えてみたい。

この番組は路線バスさえ使えば何を食べてもどこに泊まってもいい。決して貧乏旅行ではないわけだ(スタッフに気を使って高級ホテルに泊まることもないが)。しかし単純に行き当たりばったりでもない。バスの時間が終わるころに泊まれる施設がない山奥で野宿ということはしない。泊まれる町や村であるかを確認してその日の目的地を決めようと思案する。なかなか泊まれない場合も多いが、無茶はしない。

しかし実際に自分でやってみようとすると、結構難しい。最終的にゴールできず断念することになった場合、番組ならスタッフもいるし、ついつい自分に甘えて電車に乗ったりしてしまうかもしれない。山奥でバスがない恐怖はテレビだからこそ共有できるファンタジーだと思う。普通の人が出来そうで出来ないことをやってみるというテレビバラエティの原点回帰のようなプチファンタジー感も大きな魅力だと思うのだ。

優雅なグルメ旅や豪華なホテル滞在も一般人にはなかなか味わえないプチファンタジーといえる。これはこれで充分テレビ的ではある。それにやる気になれば(金と時間さえあれば)出来てしまうのがグルメであり豪華ホテル滞在である。情報(広告)としての価値もあるのだろう。だが正直見飽きた。

路線バスには誰でも乗れる。近所のバス路線が出てくるとなんだかうれしい(笑)。そのいつも乗ってるバスが実は他県の観光地とつながっていると気付けるかもしれない。それもなんだかうれしい。だが電車や高速バスで行けるところにわざわざ路線バスを乗り継いで行こうというのはよほどの酔狂者だ。しかも3泊4日と決められている。スローライフのようでまったく時間に余裕のないストレスのたまる旅だ。

路線バスが途切れたら歩かなくてはならない。過去には16km歩いていた回もある。一般人がそんなことする必要はなにもない。情報としての価値も微妙で、見て楽しむだけの純粋なバラエティ番組に仕上がっている。旅番組のセオリーを外して成功したわけだ。

いや、普通の旅番組が氾濫しているからこそ、この路線バスのテイストがウケることを考えれば、どちらもテレビには必要だということだろう。

●旅の多様性のヒントと捉えてみる

路線バスを乗り継いで観光地に行く理由はどこにもない。「そこに路線バスがあるからやってみよう!」という発想はテレビでなければ成立しない企画だ。それでやってみてゴールできたとかできなかったとか、冷静に情報として捉えれば何の意味もない。

ではこの旅番組には何があるのだろう。そのひとつは旅というものをいわゆるリゾート滞在や観光地巡りというツアー旅行ではなく、迷うことそのものが旅だと捉えている面白さだと思う。どこかに観光に行くことだけが旅じゃない。その過程の困難さや失敗こそが旅なのだと、それをゲーム的に見せてくれる。しかも身近な路線バスというツールを使って。

路線バス乗り継ぎというのはハードルの高いルールだが、ちょっと考えれば旅にゲーム性を導入することは誰にでも出来る。少人数でなにかルールを決めて旅をすればそれは観光でなくても楽しめる。そういう旅をボクは「地図にレイヤーをかける旅」と言ったりしていた。

同じ地図を眺めても、そこに路線バスというレイヤーをかけるだけでオリジナルな旅が出来る。過程そのものに意味を見出す楽しさ。それを再発見できる番組だ。

地図にオリジナルなレイヤーをかけると、これまで気付かなかった場所やルートが立ち現われてくる。このレイヤーはバスである必要はなく、例えばラーメンでもいいし、ご当地アイスでもスナックでもなんでもいい。古くは札所巡りもレイヤーのひとつ。ポイントをつなぐルートがあればそれは旅になる。札所巡りがあるなら札無し寺巡りだって成立するはずだ。路地巡りだって旅になる。

また旅の過程で出会う人々とのふれあいも大きい。民俗学者の宮本常一のように、そこで生活する人とのふれあいに重きを置いた旅。だからこそバスの待ち時間にちょこっと暇つぶしする喫茶店なども旅の面白さにつながる。ネット検索を使わないというルールも、こういうときに住民情報を仕入れるというテレビバラエティ的ハプニングを生む仕掛けになってると思う。ローテクにこだわることも時に必要なのだ。

ボク自身は毎年行き当たりばったりの旅をして13年くらいになるが、だいたい覚えているのはトラブルやサイドストーリーばかりだ(笑)。一泊ひとり1万円の宿のとなりに4人で9千円の安宿があってそっちに泊まってみたり、着いたとたんに「合言葉は?」と聞かれてみたり、宿が見つからず土砂降りの雨の夜探し回ったり。あえて狙って遭遇するわけじゃない偶発性こそ旅だと思ったりする。

「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」は人気番組にもなったため、行く先々でメンバーが目立ってしまうこともあるだろうし、ルートの困難さを追求しはじめるとストイックになりすぎる。その塩梅がとても難しくなっていくとは思うが、メンバーの体力が続く限りこの路線バスファンタジーを見続けたい。ゆるーく続けてほしい。

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Comments

なるほど、西遊記ですか
あの黄金のトライアングル、絶妙のバランス
3人であってこそのリズムとロマン
自分はこの番組のロードムービー的要素にハマってますね。
むろん、いま一番好きなテレビ番組です。

お久しぶりです。ちょっとわけあって
この度ウチのブログを閉鎖する運びとなりました。
正式な発表は近々やると思いますが・・・
もって余命半年だと思います(笑)
お手数ですがリンクを外して頂ければ幸いです。

Posted by: せる | 2014.05.16 at 18:41

せるさん、超ご無沙汰してました(coldsweats01

ソチ五輪が終わってようやくボクの精神も日本カルチャーに帰国したというのに、せるさんの膨大な記録群が無くなっちゃうんですか!?どうして…タモリがいいとも降りたから?(そうじゃないって)

思えば笑撃のネイチャージモンの登場から時代は移り変わりましたねぇ。どんな活動も必ず終わりは来るものですが残念です。勝手にボクより若い方だと思っていたので、ボクより先にブログ終了されるとは思ってもみませんでした。

今後も別の形で続けられたりするのでしょうか?とりあえずリンク外しの件は保留して近々の発表を待ちたいと思います(weep

Posted by: ポップンポール | 2014.05.16 at 20:37

とりあえず、大まかなSNSという形では残らないと思いますね。
ブログは更新終了して放置すると思いますが、FC2に消されたらそれまでで・・・
タモさんの影響も何気に強いですね。自分でピリオドを打つ美学というか(笑)

ネットをやってて良かったと思うのは
ポップンポールさんをはじめマニアックな方々と
色んな形で繋がれた事ですね。これは大きな財産です。
悪い面ばかりが強調されがちなネットメディアですが
その10倍はみんな恩恵を受けているはずですよ。
良い事はあまり実感しませんからね・・・
サッカーの審判も名ジャッジは語られず、誤審は未来永劫
語られるようなもので・・・

Posted by: せる | 2014.06.17 at 08:32

私もせるさんの膨大な情報量を見たときに「この人はいつ寝てるんだろう?」と思いましたよcoldsweats01

やっぱり何かを発信していればいろんな情報を教えてくれるマニアックな人がいるという確信がボクにもありますね。それもどっかのニュースを拾って来たり再構成した二次情報じゃなくて。

竹中労が大好きなボクには、完全な主観・独断でもたとえ妄想でも、なんでもいいから自分の言葉で書くというこだわりがあって、せるさんはまさにそういうブロガーだったのがうれしかったですね。

ボクはあんまり自分から他のブログやサイトにコメントしたりできない恥ずかしがりやさんなので(bleah)、ネイチャージモンへのコメントからせるさんと交流できたのは楽しかったですし、最後にローカル路線バスの旅でつながったというのは、まさにセンスのいい我々感をビシバシ感じます(happy02)。

と、そんな本田・長友チックな気持ち悪い自己肯定をしたところでお開きに。W杯は日本代表だけじゃなくオランダ代表にも注目させていただきマンモス!

Posted by: ポップンポール | 2014.06.17 at 20:04

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