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2014.03.21

でんでんが見たくて『冷たい熱帯魚』鑑賞

卒ソチ五輪!というわけで、そろそろまた昔のひとくちメモに戻したい気分だった先週の夜のこと。テレビ朝日「緊急取調室」の最終回を見ていた。

「でんでん、いいな。」

それがひとくちメモ的な感性の戻りを告げる予兆だった ok

でんでん、いいよね。昔「どうだい?~だろぉ!」とスタンダップ・コメディをやってた頃の芸風がほとんどそのまま自然に年輪を重ね、役者として存在感を見せている。

それに気づくのがちょっと遅かったと反省。2005年に温水洋一に気付けたのに(笑)

最初に「でんでん、いいな。」と思ったのはテレビ東京の伝説の名ドラマ「湯煙スナイパー」だった。このときでんでんはひなびた温泉旅館の番頭さんで、小市民の典型のような人懐っこいエロオヤジだった。

過去を隠して温泉旅館で働く元スナイパーの源さん(遠藤憲一)を、何か人に言えない辛い過去があるんだろう(だけどまさか殺し屋とは思っていない)くらいの感じで何も言わず受け入れ、親身になって面倒みる番頭さん。それがでんでんだった。

「湯煙スナイパー」の時点ででんでんの素晴らしさに気付き、ひとくちメモっていてもおかしくない演技だった。だがあの時のオレはエンケンの迫力に圧倒されていた。そして伝説のゴッドタン女優(?)谷桃子まで出演していたので、でんでんまで手が回らなかった。

「湯煙スナイパー」でのでんでんの演技があまりに自然だったからともいえる。源さんは殺し屋としての過去を清算しようとして平凡な日常を求め温泉旅館にやって来た。それを際立たせるために、源さんの触れる景色や生活は日常そのものであり、そんな平凡な日常にいちいち源さんは感動するのである。その日常のひとつがでんでん演じる番頭さんだった。

この番頭さんのオヤジ度は100%だった。どこにでもいた日本の原風景的なオヤジ。そこに源さんも癒されていたように思う。それだけ自然なオヤジだったのだ。そのあまりの自然さゆえにエンケンや谷桃子という超個性を前にして素通りしてしまったわけであった。反省。

しかし制作者側はでんでんを見抜いていた。でんでんは悪役も善人も演じられる。それも日常に溶け込んだ自然さで。昔の芸風が嫌味なく自然に見える年齢になったからかもしれない。もっとも昔の芸風はその若さと嫌味とのギャップが狙いだったんだと思うけど。

●でんでんの持ち味が堪能できる「冷たい熱帯魚」

そんなわけで、でんでんがもっと見たくなりビデオ・オンデマンドで園子温監督の「冷たい熱帯魚」を鑑賞した。善人ズラした極悪人という役柄はでんでんの集大成ともいえるはまり役だった。映画そのものの力も強く、久々に“骨のある(coldsweats01)”映画を観た。

血の色をどぎつく見せたいためか、コントラストが強めで、それが画面に迫力を持たせているように感じた。70年代あたりの総天然色日本映画ってこういう色合いだったような感じがするがどうだろう。

観終わって実話を下敷きにしていると知り、どれほど実話に近いのか、あるいはどこが創作なのかが気になった。完全犯罪を目指すために殺した相手を「透明にする」という方法が実話だというのは怖いが、そこをきっちり説明してしまう見せ方は映画的でもあった。

また、主人公(吹越満)の崩壊した家庭の問題が横軸として織り込まれ、でんでんの児童虐待経験を思わせる過去への退行現象などもまた崩壊した家庭の表出だと思う。そして梶原ひかりによるラストシーンは自主制作っぽい締めくくりだったが崩壊した家族の末路を端的に描いた。一貫して家族の問題としているところがこの映画のオリジナルな部分であり、ひとつのキモであったような気がする。家庭を持つって大変なことだね...。

ネタ元の埼玉愛犬家連続殺人事件はブリーダー夫婦(現在も死刑囚として服役中)による犯罪だった。これだけ残忍な殺人事件なのに、阪神大震災やオウム事件と同じ年のことで、ほとんど記憶になかった。この夫婦の周りから忽然と消える人が相次いだという。

70年代にはこういう実話をもとにした映画は非常に多かったと思う。三億円事件や「裸の十九歳」などは代表例だ。そういう昭和の臭いがプンプンする映画だった。

終盤にでんでん演じる殺人鬼が吹越演じる主人公社本に説教をして社本を本気で怒らせようとするところがある。そこででんでんの発する長台詞は昭和の親父による教育論・行動論としてまさに正論だったのも複雑さを醸し出す。自分の足で立ってるか、家族を満足させられているか。それらの行動原理が連続殺人に向けられたときの人間の怖さが、大量の血を見るよりも恐ろしい。

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