Numberにヨナを探す
さぁ運命の2月がやってまいりました。ソチ五輪開催間近です。ソッチには行かないよ!マジか?そんなダジャレも寒い2月です。
雑誌Numberを久しぶりに買いました。Numberはスポーツのなかに潜む物語の魅力を引き出す“文芸誌”です。スポーツが文学になることを証明してきたロングセラーの雑誌です。
今回の特集は「浅田真央ラストダンス」でしたが、キムヨナファンの私はそこにキムヨナを探すために購入しました。物語としてのスポーツにライバル関係は不可欠ですし、今号のなかでジョニー・ウィアーが言っているように「同じ選手2人がライバルとして2回の五輪で優勝を競うのはすごく珍しいことで、貴重な機会」なわけです。
もちろんこのふたりだけではなく、ほかにも有望な選手はたくさんいるでしょう。しかしそれを公平に扱うのは物語としては邪道ですし稚拙です。長州vs藤波で盛り上がってるのに木村健吾がいるだろう、というのと同じです(笑)。もちろん木村健吾はいてもいい。物語に深みを与えるようなやり方で入ってくる選手の登場は期待したいところです。
しかし現状では、やはりここは前回メダリスト2名の対決図式を素直に受け入れ、ライバルをライバルとして位置付けるのが楽しいです。
Numberは文芸春秋社の雑誌ですからキムヨナ特集を望むことはできませんが、浅田真央を特集するということは、裏返せばキムヨナを読み取ることもできる、そう思ったわけです。そう思わずには日本のメディアからキムヨナの物語を得ることはできません。スポーツに国境はないと思いますが、厳然と存在するのが国家対抗の五輪なのでしょう。時勢もおかしな極東アジアですし...。
●キムヨナファン目線で楽しめた記事
ふたりのライバル関係を正面から取り上げた記事はタチアナ・フレイド氏の書いた「マオとヨナの最終章」でした。ジュニア時代の天真爛漫なマオと消極的で内気なヨナの姿から、二人の成長過程における課題への取り組みについて主観的にまとめています。「マオとヨナのラストダンス」という作品に向けたライナーノーツという趣きで、類似記事が皆無のなかキムヨナファンとしても面白く読みました。
それ以上にキムヨナの存在感を感じたのは野口美惠氏の「涙のバンクーバーから最高のソチへ」というメイン記事でした。バンクーバー後、佐藤信夫コーチと浅田真央の4年間の道のりを取材して書かれた記事です。
キムヨナはほんの少ししか出てこないのですが、先日ひとくちメモに書いた浅田真央の「気づき」について、それを裏付けてくれるかのような非常に参考になる記事でした。
頑固で自分流にこだわり続ける完璧主義者浅田真央。私は元来そういうストイックかつオリジナルな個性が大好きです。しかしフィギュアスケートに関してはキムヨナに一目ぼれしたところが個人的なスタート地点であり、キムヨナはその期待を裏切らない圧倒的に美しく強いダンサーでした。
チーム・キムヨナが最大限に意識して取り組んできたと思われるのはフィギュアスケートに必須のダンスによるコミュニケーションでした。大衆性もありサプライズもありの現代的なわかりやすさはK-POPの隆盛とオーバーラップして時代の空気を形成していったと思いますが、その基礎基本にはフィギュアスケートの歴史に忠実なスケーティング技術があり、その基礎基本を“美しい”と考える審査員も多いように思います。そもそもが減点法で成り立っていた歴史があるわけです。
タチアナ・フレイドの記事で「ヨナはすべてにおいて論理的に物事に対応していた」という証言もあり、基礎基本の上に音楽的構成を構築していく取り組み、そして得点の分析ができるスタッフの存在がキムヨナを欧米で通用する選手にしていったように思います。
●基礎基本+αという勝利の方程式
そもそもフィギュア不毛の国韓国で育ったキムヨナには基礎基本に忠実なスケーティングから始める以外に方法論がなかったのかもしれません。外国で暮らすのは当時の日本人とは比較にならないほど特殊な環境でもあったでしょうし、内気で笑えない少女だったキムヨナが淡々と仕事のようにスケートに打ち込んでいたというのはわかる気がします。明るく面倒見のいい振付師のデヴィッド・ウィルソンに出会っていなかったらキムヨナがこれほど成長できたかどうかわかりません。
論理的な構築力(哲学)は欧米的な考え方といえます。韓国フィギュア界のパイオニアであるキムヨナは欧米のコーチや振付師のもとで素直に異文化コミュニケーションのための論理的な取り組みを実践し成果を出したわけです。
そんな通好みのスケーティング技術を求めたい審判団からのコミュニケーション渇望が一方にあり、その取り組みが浅田真央には若干不足していたのかもしれません。キムヨナと異なり有能な先輩の多くいる日本で育った浅田は、彼らと差別化できる独自のスケーティング技術で誰にもできない大技を持って成長してきました。しかしそこにこだわりすぎたことで基礎基本という地味なコミュニケーション能力が不足していた。それをこの4年間で佐藤コーチが徹底的に壊してきたようです。
荒川静香さんの新書に、選手がコーチを変更するときには自分にいま必要なものを知り、それを与えてくれるコーチのもとへ行くといったことが書いてありました。まさに浅田真央には佐藤信夫コーチの一貫した哲学が必要だったのだと思います。そのために我流のスケーティングを捨てる覚悟を持ったのだと思います。
今年の浅田真央は基礎基本に忠実なスケーティング技術のうえにトリプルアクセルと鬼気迫る華麗なステップを乗せてきます。キムヨナは基礎基本に忠実なスケーティング技術のうえに盤石のトリプル+トリプルと圧倒的な音楽へのシンクロ力を乗せてきます。美しさで4年前に引けを取らない素晴らしいライバル競演になると思います。
見た目の美しさではグレイシー・ゴールドもアシュリー・ワグナーも負けてません(笑)。個人的にはアシュリー・ワグナーのナチュラルメイクなときが好きです...。ワグナーはリンクでは化粧が濃すぎる!もっとナチュラルなほうがいい。
おっと、木村健吾を語り始めてしまいそうだ。それはフィギュア専門サイトにお任せして、キムヨナvs浅田真央という奇跡の時間を待ちましょう。
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コメント
この記事をハングルに自動翻訳して読んでくれてる人もいるようだが、最初のダジャレは伝わらないヨナ~(
)
自動翻訳ではこうなってた。
솟치에는 가지 않아!진짜인가?그런 다쟈레도 추운 2월입니다.
ソッチ(솟치)は그곳じゃなく音感で訳されてるけど、間近のダジャレのマジか?は진짜인가?と字義で訳されてる。
自動翻訳がダジャレを理解できる日は来るのだろうか!?韓国語も音感が似ているダジャレが多いからお互い様だが。
長州vs藤波の唐突な例え話も文化的背景(笑)がわからないと伝わらない。プロレスの話です。
...と、ダジャレをマジ解説!
投稿: ポップンポール | 2014/02/08 10:09