「先輩ROCK YOU」で動く角田光代さんを初めて見た
たまたま先週番組表を見ていたら日テレの「心ゆさぶれ!先輩ROCK YOU」という深夜番組に角田光代さんの名前を発見したので録画予約していた。女流作家SPと題して、角田光代さんと桜庭一樹さんがMCの3人とおしゃべり。いや、面白かった!
角田光代さんといえば「八日目の蝉」の原作者。ひとくちメモの記事で人気のあった(そして個人的にも好きな)「文治さん!『八日目の蝉』最終回」ではドラマのことを書いたが、その最終回が待ちきれずに原作小説も買って読んでいた。その感想も書いてる。
今回の番組で“動く角田光代”を初めて見た(笑)。子どもの頃、“動く中島みゆき”を初めて見たときも感動したが、小説家の場合はそもそも動くのが仕事ではないから、さらに出会えるチャンスは少ない。なんとも貴重な映像だった。
いくつも興味深い話が出てきた。小学生の頃から国語以外は苦手、というよりも放棄していたとか。分数の計算が出来ない。オレもたぶん出来ないが、2が2分の4というくらいは知ってる(笑)。ここが小説家になれるかどうかの分岐点なんだよね!
ウソです。小説家を目指すなら幅広い知識が必要だと角田さんもフォローされてました。いま苦労してると。そりゃそうだね。純粋に原語だけを並べても文学にはなりえない。「全部の授業をちゃんと最後まで聞いてください。」角田光代さんから子どもたちへのメッセージだ
●苦手な計算の果てにある「八日目の蝉」を想像(笑)
年代順に並べたり、その時主人公が何歳だから昭和何年なのかとか、そういう計算はオレも苦手だ。日本史だって赤点だった(笑)。もっとも日本史の場合は年代も覚えられないが、それ以上に権力者側からの目線が気持ちわるくて肌に合わなかった(ものすごい言い訳)。
オレは自慢じゃないが自分の履歴書を書くときにさえいちいち計算していた。そのうちパソコンに入れて保存しとけばいいと気付いた(笑)。自分自身ですらそうなので、架空の主人公の人生なんて難問だ(笑)。
この話を聞いて小説「八日目の蝉」を読むと感慨深い。まさに時系列。法廷証言で進んでいくし、薫は日々成長していくし、時間の経過を計算しながら淡々とOLのような時間割で書き進む角田光代。それを想像するとちょっと笑ってしまう。
朝9時から12時まで仕事、昼食は弁当、13時から17時まで仕事、その後18時から23時まで酒、0時就寝。これが角田光代の平日だ。土日は休日。サラリーマンのような生活なのだ。時間単価高っ!いや、そういう話じゃない。
創造的な仕事をする人間ははちゃめちゃな生活をしているという誤った認識はいつどこから来たんだろう。太宰治とか?
作品が不道徳だったりフシダラ(死語か?)だったりすると、書いてる人もそうに違いないと読者が思うことはあり得る。でもまったくそうじゃない場合は多いと思う。村上龍とか?
●規則正しい生活が生む角田光代ワールド
基本的に何かを成し遂げるという仕事は構造的・構築的なもの。はちゃめちゃでは続かない。おそらく昔は執筆方法とか作家の生活を見る機会は皆無だった。それだけに読者は妄想してしまうのだ。
だが現代は映像や報道が発達しているので、達人の裏の努力などを垣間見ることができる。たとえばイチローや羽生善治のように天才といわれる人でさえ品行方正(笑)で淡々と日々精進していることが“明かされた”。
角田光代さんの場合、先に書いたOLのような時間で作品やエッセイを書いているという。様々なものを同時進行しているため、その日構想が浮かんだものを選んで書き進め17時には止めて残業はしないという。筆がノルといった状態はないそうだ。
なるほど。深夜に書いたラブレターほど性質の悪いものはないが(笑)、そういう筆がノッた状態で書き飛ばすことなく、淡々と作品を書いていくわけだ。その規則正しさが作品の水準を保っているのかもしれない。
おそらく書いていない時間帯に準備が出来ているのだろう。仕事の構想は9時5時に生まれないことはサラリーマンでも知っていると思う。風呂に入っていたり酒を飲んでいたり誰かと会話しているときに直感は働く。時には夢にアイデアが出てくる人もいるという。
それを吐き出す作業を昼間やっているだけなのだ。仕事とは準備が8割ともいう。頭脳労働は24時間労働であるわけで、準備が出来ていればそれを具現化していく部分は規則正しく冷静になれるほうがいい。そこで行き過ぎた妄想の部分を微調整しながら作品に昇華させていくのかもしれない。
一緒にご出演の桜庭一樹さんについては名前しか知らなかった。今度短編集が出るそうなので読んでみようと思う。こういうつながりで知った作家の作品は、経験上当たりの確率がとても高いから。
メインMCの加藤浩次はこのお二人の作品が出たら必ず買うほどのファンだと番組の最後に語った。本人の前では恥ずかしくて言えないというその気持ち、よくわかる!オレも星野博美さんがそうだから。
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