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2013.01.02

薬より食事の質を高めよう~コレステロールという指標の扱い方(私家版)~

昨年末から読み始めた『コレステロール 嘘とプロパガンダ』(篠原出版新社)をほぼ読み終えた。ミッシェル・ド・ロルジュリル先生(フランスの心臓専門医かつ栄養学者・国立科学研究センター「CNRS」正規研究員)の著作を日本脂質栄養学会理事長の浜崎智仁先生が訳された労作だ。

浜崎先生はこの翻訳の原稿料も印税ももらわないという。いわゆる“コレステロールを下げる薬”を推進する医者(学会)と巨大製薬会社との利益相反を告発する書物であるためだ。2009年6月初版で2011年8月に2刷が出ている。もっともっと多くの人に読んでもらいロングセラーになって欲しい。

浜崎先生が理事長をされている日本脂質栄養学会は「コレステロールは薬で下げる必要がない」という学説で異端視されながらも孤軍奮闘している。多少野次馬的な感覚でもコレステロール論争は非常に面白いテーマだ。日本脂質栄養学会のWebサイトこれまでの経緯が読める。同学会が発表した「長寿のためのガイドライン2010」で日本動脈硬化学会批判をしたことで話題になった。

論争そのものが2010年に勃発したくらい新しいテーマなので、いまのところ通常の内科検診(血液検査)でコレステロールが高ければほとんど自動的に下げる薬を処方される(ただしその“高さ”もいわゆるメタボ検診という疑問の多い指針を基準にした高さでしかないが)。

自動的に処方されるというと語弊があるかもしれないが、私自身はなんのリスク説明もないまま「どうせ運動もなにもしないんでしょ」という捨て台詞とともにリピディル(フェノフィブラート)やリピトール(アトルバスタチン=ストロングスタチン)を次々処方された。

薬名のリンク先の副作用欄を見れば説明の必要な薬だということは誰でもわかると思う。ただし何の有効性もない薬だということまではわからない(despair)。ここでいう有効性とは「コレステロールは確かに下がるけれども、それが治療になってない」という意味だ。

●コレステロールを下げても無意味。津波が警報機を切っても止まらないように

野次馬的にはスタチン業界のデータ改ざんや意に沿わないデータの隠蔽をする巨大製薬会社と、多額の研究費やお手盛り旅行などを受け取り製薬企業に都合よくバイアスのかかったデータ評価をしてしまう医師との癒着問題も面白いのだが、薬を処方されてしまった身としてはその薬に意味があるのか無いのかがもっとも重要だ。コレステロールが悪玉でなければ悪玉は何なのかを知りたいわけだ。

コレステロール 嘘とプロパガンダ』第五部にそれが書かれていた。この本だけでなく『コレステロールの欺瞞―「悪玉」コレステロールは作り話』(ドイツで26刷のベストセラー)や『コレステロールと中性脂肪で薬は飲むな』(医師でデータ解析の専門家・大櫛陽一先生)などもあわせて読んだ。

「悪いのは悪玉コレステロールです」といった風に、「悪いのは●●です」と簡単に結論がだせればいいのだが、動脈硬化など疾患の要因はコレステロール以外の複数因子が絡み合ったりしているので「これだ!」というのが難しい。そこでそれらの要因群をとりあえず一括してZ因子と呼ぶことにする。上記の書籍ではZ因子がコレステロールと無関係であることを丁寧に検証していくのだが、それは本書に譲るとして概要はこういうことだ。

Z因子という悪の軍団がいて、こいつが動脈硬化や血栓を起こすのだが、同時にコレステロールも変動させるのだ。つまりこいつが血管に悪さをすると、それとは無関係なところでコレステロール値も上昇することが多い。このときZ因子に注目せずに血管の欠陥とコレステロールとに因果関係を見つけてしまったことが悲劇の始まりだ。

私の素人考えでは、このときコレステロール(特にLDLコレステロール複合体)は修復に向かうため体内で多く作られているんじゃないかと思うが、それはたぶんまだ検証されていない。しかし細胞の修復を担うのがLDL複合体である以上、その相対量が増えるのは理にかなっていると思う。

いずれにせよ、コレステロールを下げる薬は確かにコレステロールを下げる作用がある。しかしそれは単にそれだけのことであって、根本的な治療にはなっていないということだ。悪の軍団Z因子という真犯人が他にいるのに捜査本部たる医師はコレステロール犯人説に凝り固まって簡単に抗コレステロール薬を処方する愚を犯す。

その間に何が起こるかといえば、粥状動脈硬化の進行だったり冠動脈の血栓形成だったりする。コレステロールを下げても上げても、そんなことはどーでもいい話だからだ。だからこれだけ薬を飲まされていても心筋梗塞も減らないしいくつもの研究で総死亡率に差が出ないわけだ。逆に下げすぎると身体全体は衰弱する。細胞壁を作る材料のコレステロールを減らすんだから当然だ。字義通り“身を削って”無意味な薬を飲まされているわけだ。

閉塞性粥状動脈硬化巣にコレステロールがあったとして、どんなに多く見積もっても10%レベルだという。コレステロールのプラーク(病巣部)が動脈の中にあるという人は、無能か、間違った情報をつかまされた人か嘘つきだとまで断言されてしまってる。

同じ研究結果を見ても、その手順の正確さや利益相反の有無や開示データの透明性についての厳格さを問うか否かの違いなので、どちらを信用するかは両者の言い分を各自で検討してみるしかない。巧妙に隠された偽薬群のデータが開示されてないとか、総死亡率に触れずに有利なデータだけで結論付けているとか、医者でも騙されるんだから難しいが、それを告発している書籍群とともに読むことで多少は見えやすくなるかもしれない。どの医者がどの製薬企業からどれだけ研究費等をもらっているかまではなかなかわからない。情報開示しているかどうかをチェックすべきだ。産業医に聞いてみようかな?

ただ現在はコレステロール以外に簡単に異常を見つける手段がないのかもしれない。コレステロールと悪のZ因子に因果関係があるならば、コレステロールがある種の指標にはなり得る。コレステロール値が一種のアラート(注意喚起)になる。だからといってコレステロールを直接的に下げてもどうにもならない。主原因であるZ因子をなんとかしないことには、コレステロールが下がっても意味がないからだ。指標をゆがめるような行為は津波警報装置の電源を切るようなもので怖い。

コレステロールは人体のあらゆる細胞の原料であり、LDLコレステロール複合体の減少は肉体の衰弱に直結してしまう。各種ホルモンへの影響は『コレステロールの欺瞞―「悪玉」コレステロールは作り話』に詳しい。とにかく常識が覆されてしまうところがエキサイティングだ。

●結局、糖質制限という解答に行き着く

細胞を作るコレステロールを減らし、カロリーオフで筋肉を作るたんぱく質をも減らし、その割に炭水化物(糖質)を食事の60%も摂らせて過度な運動をさせる。食後血糖を上げておいて運動で落とすというハツカネズミのような生き方のススメは血管に確実に悪影響だと思う。体内にバブルを起こしては下落させるようなものだからだ。

私なら「殺す気か!」と怒って当然だと思うが従順な紳士・淑女は怒らない。おそらくコレステロールしか指標がないために、その指標を下げればなんだか良くなっている気分にはなれるからじゃないか。医者もそれを下げることが目的化しているのでそこしか見なくなる。お互いいいことづくめだ。まるで中学校の中間テストの成績だけで人生バラ色といっているようだ。

だがリアルな病状は進行していくので一生薬漬けのいいお客さんになる。それで丸く収まっていれば問題ない。薬を飲み続けることが幸せへの鍵だと思う。

ただしコレステロール低下薬には発ガンリスク、筋肉融解リスク、認知力低下リスク、肝機能障害リスクも報告されているので無害というわけにはいかないようだ。副作用は誰にでも多かれ少なかれある。だから無用な薬と副作用とのバランスを取る人生を選ぶか、Z因子の低減と健康とのバランスを取る人生を選ぶかはよく考えたい。

個人的には指標としてのコレステロールに介入する薬剤はいっさい拒否し、糖質制限によってバランスを取る人生を選びたい。その結果、多少高コレステロールでも糖尿病にならない、つまり合併症を起こさないように注意するほうがよっぽど有益だと思うのだ。

それでも薬が必要な人はそれでいいとして、Z因子に注目した場合、不整脈や心筋梗塞、動脈硬化が起こるリスクと向き合わなきゃならない。その3大原因は、喫煙、糖質の取りすぎ、慢性ストレスだろう。まぁちょっと譲って運動不足を入れてやってもいい(笑)。これらを改善することが最重要であって、コレステロール低下薬はいうなればお守りだといえる。それもかなり危険を伴うお守りだ。介入されたらZ因子発見シグナルが出なくなるわけだから。

糖質制限食というのは食費がかかる。いまや外食産業は粉モノ業界が大盛況で、これでもかというくらい糖質攻撃を仕掛けてくる。それを食べずに生活するのは至難の業だ。しかしそれらを普通に食べてれば必ず薬のご厄介になり、薬も効かないから最終的には病院のご厄介になり、糖質制限食どころでない医療費が必要になるというロードマップが描ける。

もちろん医療費はこれだけではない。どんなに健康に注意していようが年を取れば機能低下、機能不全は致し方ない。そこが巨大製薬業界や取り巻き医師たちの逃げ道かもしれない。どっちにしろ老衰からは逃れられないのだから、おのおのが信じる生き方をするしかないわけだが。

●運動をする意味も多少わかった

運動についても多少考え方が変わった。糖質制限をしていれば、カロリーオフのような無謀で続かずリバウンド必至の運動をする必要はない。それよりストレッチなどの筋肉トレーニング、とくに大腿部や臀部の筋肉を鍛えることが血流にとってやさしい身体に出来るようだ。スタチンを飲んで筋肉を溶かしてる場合ではない!

二足歩行のヒトは、心臓から押し出された血液が足の先まで行って戻ってこなきゃならない。しかし大腿部の筋肉が衰えていると筋肉によるポンプ機能が低下するため、どうしても心臓が血圧を上げて血液を押し出さなきゃならなくなる。だから筋肉を多少鍛えて血液の循環をスムースにする必要があるようだ。

カロリー消費のための運動でないところがミソだ。産業医には「腹筋でもしましょうかね」と言ったら「それは有酸素運動じゃなくて筋トレですよね」とイヤミを言われたが、まさに筋トレのほうが正しいわけだ。糖質制限食+筋トレという流派とカロリー制限(高糖質食)+有酸素運動という流派と、これは流派の違いであってどちらでもやらないよりはやったほうがいいという話。本来のヒト科らしく生きる派とハツカネズミのように運動する派との違いだ(命名に落差があるのはボクのバイアス)。なんでもやってるといろいろ疑問も出てくるし、そこで考えることがヒトらしさだと思う。

最新の日本の研究では自治医大のコホート研究によって、コレステロール学説への疑問がようやく注目されはじめている。とくに日本脂質栄養学会のガイドラインに対して疑義を唱えていた有名医師の山田悟先生(あまりバイアスのかからない医師だと糖質制限の伝道師江部康二先生も一目置かれている)も、この結果によってスタンスが少し変化しているようでもある。

コレステロール伝説やスタチン幻想がようやく科学的姿勢で問い直されているわけだ。そんなアクティブな時期にスタチンなんて飲んでる場合じゃないだろう。少なくともコレステロール一辺倒の投薬はちょっと様子見して、まずは食生活に糖質制限食を取り入れるほうがリスクは少ないと結論づけたい。

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Comments

おめでとうございます。

僕も検診の結果、コレステロールを下げる薬を処方されているんですが、いろいろ考えることがあるんですね。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

Posted by: ピーちゃんの身元引受人 | 2013.01.04 at 09:03

ご無沙汰してます。今年もよろしくお願いします。

自分が納得して受けるのが一番いいでしょうね。とりあえずどんな薬かはしっかり調べておいたほうが副作用の早期発見にもつながると思います。お大事に。

Posted by: ポップンポール | 2013.01.04 at 10:09

所詮、対処療法は一時しのぎでしかないのです。
原因を取り除かねば、ずっと対処療法に付き合わないと行けないことになる。

原因を探るには「なぜ?」を自分で考えてみることだと思う。

僕も40になった頃、フォアグラ(脂肪肝)、血がどろどろ(高脂血症)やら通風予備軍(高尿酸)と驚かされて、痛風予防にとザイロリックなんて処方されたが何の効果もなかった。

で、とりあえず原因の「でぶ」をやめてみればいんじゃね?とアレコレ考え、脳みそにダイエットしていることを悟られないように1日の摂取カロリーを必要代謝カロリーより微妙に、そう300K~500Kカロリーくらい赤字にするのを目指すだけという頑張らないダイエットで2年かけ、15kg減量。そうしたら脂肪肝、高脂血症、抗尿酸症すべてが治ってました。よっぽどのことがない限り、薬はいらず、体調を整えれば良いってことでした。

で、それから数年、怪我したこともあって増量(^^; 微妙に赤字が黒字な食べ方になっててまた増量、、ヤバイ水準となっていたのが去年の4月でまた検診で「でぶ」と言われちゃったのですね(笑)

で、微妙に赤字カロリーを考えましたが、もう50近くの年齢なので基礎代謝が前回よりたぶん落ちてる、ってことで夕飯のご飯(米)抜きに行き着き、図らずも「プチ糖質制限ダイエット」だったわけです。

ちなみにガチな糖質制限は、インシュリンを制御したい糖尿病向けの食事療法であって、過ぎたるは及ばざるがごとし、何かを食べない、何かだけ食べるという偏った食事は普通の人の身体には良くないことだと思ってます。バランス良く摂取することが大事。

また、運動もアスリート並にやらない限り「痩せる」ことには繋がりません。ご飯1杯食べ過ぎを消すには60分動かないといけないなんて現実的じゃないもの。素人にとって運動は身体の調子を整える程度にしかならないと思った方が良い。これもまた過ぎたるは及ばざるがごとしってことですね。

Posted by: くっきも | 2013.01.04 at 11:05

まったくそうですね。脂肪は1グラム9キロカロリー蓄えてるので脂肪だけで1キロやせようとすれば9000キロカロリーの燃焼が必要で、それをウォーキングだけでやろうとすると東京から静岡まで歩く(170キロくらい)必要があるということで、そういうダイエットは体力的にも精神的にも時間的にも不可能だと思ってます。炭水化物だけ減らせば2週間で効果がでてくるんで試す価値はありますよね。薬を飲んで安心するのが一番身体に良くなさそうですね。

Posted by: ポップンポール | 2013.01.04 at 11:19

最近、統計や確率の書籍を読んでいて、因果関係と相関関係との違いの重要性を意識するようになった。

この違いは医学においては特に重要かつ誤謬が多そうで、コレステロールについてもまさに当てはまるような気がしている。

このひとくちメモの記事で「因果関係」という言葉を何度か使っているが、そこは正確には「相関関係」というほうが正しいように最近思うようになってきた。

コレステロール値の上げ下げは相関関係でしかない指標をいじるだけであり、それは因果関係の改善ではないという方が正確なように思ったのでここに追記しておきたい。

科学には因果(原因と結果)の逆転はなく、また相関関係を因果関係だと勘違いするととんでもない間違いを犯すことになる。

医学の歴史においてはこの誤謬が非常に多いようだ。コレステロールを下げることにこだわるのは、まさに相関関係を因果関係と混同した取組に思えてならない。

Posted by: ポップンポール | 2014.03.04 at 07:44

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