嘘で満たされた空間
寒空には雲ひとつなく月明かりを頼りに何度も何度も何度も手紙の文字を読み返す。手紙に書かれた文字、文節、文脈、すべてが嘘なのだろうと思う。ひとつの嘘がそのひとつ前の文節にフィードバックされ、また別の嘘で書き換えられる。あらゆる文脈が美しくさえ思われる嘘で再構築されながら、たったひとつの真実に収斂されていく。そのひとつの真実を伝えるために美しい嘘で満たされた手紙の文字が月明かりに滲んでいる。どこまで遡れば嘘が嘘でなくなるのだろう。出会ったことが嘘だったのか。存在したことが嘘だったのか。嘘で書き換えられる過去はあってもこの嘘を覆す未来は決してない。それが唯一の真実。そう確信したとき永遠の嘘を書き綴った返事を書いた。その返事に真実はひとつもなくただあらゆる美しい嘘とひとつの真実を受け入れるという嘘だけを綴って。
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コメント
完璧な嘘は愛に酷似していますね。
相手のために気力、ときに気迫も必要で、
あるいは自分を傷つけてもつき通す。
違っているところは、嘘は何も生まない。
決然と完結してしまうところかな。
主人公は受け入れるしか、なかったのか。
それとも嘘を綴るのみで、
実は受け入れなかったのか。
美しくも悲しいレクイエムのようです。
中盤のたたみかけてくるところは
思わず涙、、、でした。
投稿: tsukinami (会社員です) | 2012/12/02 21:14
試しに嘘を愛に変換してみましょう。
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寒空には雲ひとつなく月明かりを頼りに何度も何度も何度も手紙の文字を読み返す。手紙に書かれた文字、文節、文脈、すべてが愛なのだろうと思う。ひとつの愛がそのひとつ前の文節にフィードバックされ、また別の愛で書き換えられる。あらゆる文脈が美しくさえ思われる愛で再構築されながら、たったひとつの真実に収斂されていく。そのひとつの真実を伝えるために美しい愛で満たされた手紙の文字が月明かりに滲んでいる。どこまで遡れば愛が愛でなくなるのだろう。出会ったことが愛だったのか。存在したことが愛だったのか。愛で書き換えられる過去はあってもこの愛を覆す未来は決してない。それが唯一の真実。そう確信したとき永遠の愛を書き綴った返事を書いた。その返事に真実はひとつもなくただあらゆる美しい愛とひとつの真実を受け入れるという愛だけを綴って。
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嘘が愛に置き換わったとき真実という言葉も嘘に置き換えられそうです。でも真実を嘘に置き換えだけではなぜか成立しない。それが愛の真実。愛を貫いたとき「真実」は何に置き換え可能なのかを探しています。私には「愛で満たされた空間」が書けない。限界を感じます。
投稿: ポップンポール | 2012/12/03 07:48
愛を貫くとしたら、それは
「運命」と言えないですか。
手に入れようとして
手に入るものでもないから。
愛について考えるとき、
永遠の嘘はきっとあるけれど、
愛に永遠があるのか、疑わしいのです。
愛で満たされる瞬間や、
愛の連鎖はあるとしても。
「嘘」のようには、
潔く完結しないだろうから。
そういうものへの、もどかしさや渇望などが
私には、むしろ好ましいです。
また、完璧な嘘の、悲しいながらも
冴え冴えとした美しさがいい、です。
胸が震えました。
そして、もし愛を持続させたいならば、
守るべき何かのため、
何かを「守る」ことでなら、
かなうんじゃないかな。
投稿: tsukinami | 2012/12/03 21:09
運命かぁ...。なるほどっ、と思いました。
たぶん最高の解答に違いないんだけど、ちょっと使い勝手が良すぎるんですよねぇ運命ってやつは。
運命を持ち出すとオールマイティの魔法というか、ファンタジーになっちゃう気がするんですよね。葛藤から逃げる言い訳みたいな感じもしてしまうんですよ。それが救いになるときもきっとありますけどね。
愛で満たされないのは、きっと限りがないからですね。もどかしさ、渇望、守るべきもの。なるほどそういう着想なら書けるかも。ちょっと次でやってみましょうかね。しばしお待ちを(笑)。
また、いったいこのひとくちメモはどこへ向かっているんだ!?という疑問をお持ちの方も、また病気がはじまったなとお察しの方も、当面このノリにお付き合いいただきたく。
投稿: ポップンポール | 2012/12/03 22:14