google-site-verification=o_3FHJq5VZFg5z2av0CltyPU__BSpMstXTEV1P8dafg 歌は財産になる。上を向いて歩こう: ひとくちメモ

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2012/11/30

歌は財産になる。上を向いて歩こう

歌は財産になる。永六輔さんの言葉ですが、印税の話ではありません(笑)。著書『上を向いて歩こう 年をとると面白い』(さくら舎)に出てくる永さんの言葉です。

書店で見つけてたまたま手に取ったのですが、昭和歌謡が大好物のボクにとってはかなり面白い本でした。昭和歌謡というより昭和芸能史といったほうがいいかもしれないな。

2004年に「テレビ放送50年記念ザッピング・ブックレビュー」というブックレビューを書いたことがあります。テレビ草創期に携わった人々の言葉はボクにいつも多くの示唆を与えてくれます。永六輔さんもまさにその一人といえるでしょう。

永六輔さんのこの著書は、歌と関わってきた人生を中心に書かれていて、最後まで読むと「あぁ、歌が身近にあるって幸せだな」と素直な気持ちになれました。でも、ただ幸せというだけではなく、何人かの深く関わった音楽家たちの壮絶な生き方を合わせ鏡として、永さんたちの活躍した昭和の時代と音楽とのかかわりがビビッドに響いてきます。

高橋竹山さん(初代)と淡谷のり子さんとのエピソードに驚きました。ボクは高橋竹山の津軽三味線をリマスターCDでしか知らないけれど、いいスピーカーで聴くとたまらない興奮を覚えます。淡谷のり子さんは青森県の呉服屋の娘で、門付に来た高橋竹山さんにご祝儀をあげていたそうです。こんな大音楽家どうしがそういう出会いをしていたなんて。もうそれだけですごい話聞いたぁって感じです()。

あるいはまた、永六輔さんと宮本常一さんとが師弟関係にあったってことにビックリしました。旅好きな永さんには宮本常一イズムが流れていて、それは名曲「遠くへ行きたい」につながっていると知ったのも大きな収穫でした。

宮本先生は永さんが民俗学の道ではなく放送の仕事に就くと聞いて残念がりながらも、「スタジオでものを考えるな。(中略)電波の届いている先でものを考えなさい。」と言われたそうです。この師匠にしてこの弟子ありじゃないですか!

またある種ボクのフィールドワークでもある歌詞解釈の面でも面白い話がありました。「こんにちは赤ちゃん」の誕生秘話です。この歌詞のオリジナルは永六輔さんの親友中村八大さんが、生まれたばかりの赤ちゃんに向かって「僕が君の親父です」と挨拶したのを見て作られたそうです。

実はその歌詞の裏側にある男と女の感覚の違いを視聴者が嗅ぎ取って「これはお母さんの歌じゃない。お父さんの歌じゃないか?」という抗議まで届いたそうです。永さんはこのことに驚きつつ、テレビの視聴者はちゃんと見抜いているんだと尊敬を覚えたというんです。まさに目線が民を向いてる人だなぁ、宮本常一だなぁと思いましたね。

まだまだ西洋の音楽への不満とか、学校音楽への不満とか、いろいろ面白い話はてんこ盛りなんです。やっぱ永さんはあの早口で面白い話を次々に繰り出せる人だから、文章も流れるようなリズムで心地いいですね。こういう才能がまた別の面白い才能と出会って、新しい文化を創って来た昭和という時代、ボクは大好きだな。

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