K-POP漬けのボクをしばし日本に引き戻した新生チャットモンチー!
1+1が2ではなく3にも4にもなるように...。よくシナジー効果を表すときに使われる常套句だ。しかし新生チャットモンチーは3-1を2ではなく、4にも5にもしなければならない。
もともとが3ピースバンドという、常識的にはバンドの最小単位と思われたところからスタートしたチャットモンチーにとってそれがいかに困難な道なのかは、抜けたメンバーにも残ったメンバーにも充分すぎるほどわかっていたと思う。
さらに常識的にはメンバー補充をして第二期の活動に入るという音楽ビジネスの常套手段がある。しかし新生チャットモンチーはその予定調和を嫌った。嫌ったという言い方はそぐわないかもしれない。チャットの最適解を2ピースバンド、それもベーシストがドラムを一から習得という道を選んだ。
あらゆる面でビジネスの常識から大きく逸脱する選択をした二人もすごいが、それを許したスタッフや会社もすごい。確かにこれ以上のインパクトあるリ・スタートは考えられない。いま現実のものになったからこんなコメントを書けているが、普通は選択肢にすらならないほど突飛なアイデアだ。
スタッフも聞いた瞬間は卒倒しそうになったに違いない。しかしその破天荒さこそがチャットモンチーの持ち味であり、チャット魂だったことにあらためて気付く機会だったのではないだろうか。そこに賭けてみることが出来た関係性に拍手を送りたいとも思うのだ。
●リズムと言葉の要だったクミコン
チャットモンチーというバンドをテレビで初めて見たときの失敬な思い出(笑)から、気がつけばチャットモンチーの音楽に惹き込まれて来た。なんの前触れもなく純粋に音楽から好きになったバンドだったし、ロックの神様が一番好きなチャットモンチーというフレーズはボクのなかではいまも生きている。
今回チャットを抜けた高橋(クミコン)についてボクは「チャットモンチーと同世代に生まれてみたかった!」のなかでこう書いていた。
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この語りがなければチャットモンチーがメジャーなライブバンドとして成功できたかどうかとすら思う。音楽の実力だけじゃない何かが必要だから。ちょうど藤子不二雄が天才肌の藤本弘だけじゃなく社交的な安孫子素雄と二人でひとりだったように(<この例え必要?)、この社交的な明るい語りがチャットモンチーの個性に重要な要素だと思う。
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リズム隊の要であるだけでなく、ライブバンドとしてのサービス精神の要でもあったと思う。そしてその言葉の引き出しの多さはチャットの詞の要でもあったと思う。
後の二人がロッカー特有のシャイなしゃべり方なので、よどみないしゃべりが出来るクミコンなしでライブ進行が出来るんだろうかとか、文才のあるクミコンの作る詞の世界はチャット先生の柱となる世界観であって、後の二人だけでチャットモンチーの世界感を継続できるものだろうかとか、いろんな心配をした。
クミコンは年齢も一番上で、チャットモンチーがプロを目指すにあたり決まっていた学校教員の道を捨ててチャット先生に合流したという。そしてそれは正解だった。リスナーにとっても。チャットモンチーの要の役割をしていたクミコンが脱退してしまったということは、チャットモンチーも解散するしかないのではと思っていたのだ。
●チャットモンチーの世界観が言葉を超える日
しかし2月3日のMステを見て驚いた。福岡(アッコ)がドラムを叩いてる。そして橋本(えっちゃん)と二人だけのステージ。ドラム兼ボーカルとギター兼ボーカルの二人だけの2ピースバンドとなったチャットモンチーがそこにいた。
2ピースってそもそもバンドっていうのかな。デュオだよね。だけどチャットモンチーはあくまで2ピースバンドといいたくなる。チャットモンチーをこよなく愛する二人だけの世界。それは画的にも見たことのない世界だった。そして2ピースとなってもそこにはバッチリ、チャットモンチーがいた。そのことに素直に驚いた。
アッコはどんな楽器を演奏していてもザ・ミュージシャンというノリだ。ベースでもピアノでもドラムでも演奏が楽しくて仕方がないというオーラをバンバン発散している。全身からあふれ出るその演奏者としての美しさは楽器が変わっても健在だった。こんな風に演奏してくれるメンバーがいたらバンドは楽しいだろうな。
そして福岡のリスペクトがあって橋本の才能が存分に開花する。今回のプロモーションで出演していたTVKの朝の人気番組「sakusaku」で聞いたエピソードだけど、打ち上げなんかでは常に福岡の隣にいてしゃべれない橋本に「あ、その話、えっちゃん得意です」と福岡がお膳立てをするんだという。たぶんライブのMCも最初はそんな感じになってしまうだろう。
言葉の要であったクミコンのようにはしゃべれない。音楽面で最初のハードルを見事にクリアした曲「満月に吠えろ」を聴くと、目新しさを差し引いても期待感は膨らむ。これまで体験したことのない音楽が生み出されそうな気配がある。チャットモンチーという存在そのものの面白さが言葉を超えて生み出す新しいパフォーマンスへの期待もある。
もちろん二人とも作詞の面ではフィールドを広めていく必要があるし、橋本中心の作曲の面でも2ピースバンドという制約をいかに活用するか逆転の発想が必要になるかもしれない。苦手なライブMCに変わる仕掛けをスタッフも一緒になって考える必要もあるだろう。3-1が4にも5にもなるプロジェクトを始動させたのだ。常識に捉われないかつてのソニースピリットが必須だと思う。
この先ライブ活動や創作活動がどのような方向性で成されるのかまだわからない。おそらくチャットモンチー自身にも手探り状態が続くだろう。「チャットモンチーになりたい!」と叫んだアマチュア時代、ロックの神様が一番好きなバンド=チャットモンチーの初心を忘れないで続けて欲しいと思う。チャレンジこそがチャットモンチーなんだから。
満月に吠えろ
テルマエ・ロマエ
いまK-POP中心のボクと日本のミュージックシーンをつなぐ絆はチャットモンチーだ。久しぶりに音楽雑誌も買った。新生チャットの特集だったから。
今週は3人いた頃のチャットモンチーのライブやPVを毎日見直していた。懐かしむためじゃなくて、乗り越えるためのボクなりの儀式のようなつもりで。
2人になったチャットモンチーに悲壮感はない。この新たな状況に挑戦することを楽しんでいるようにすら見える。
常にチャレンジを楽しむ姿勢。そこがチャットモンチーがチャットモンチーたる所以だったのかもしれない。
バンドにありがちな予定調和に陥らない解を見つけた新生チャットモンチー。
セルフプロデュースを成功させ続けることが息の長い活動の基盤だ。
中島みゆきもそうだった。オフコースもそうだった。
まずはひとつ乗り越えたと思う。
これから生まれるチャットの新しい音楽もずっと聴いていきたい。
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