「男はつらいよ」というファンタジー映画
今日は統一地方選挙の日だった。地上波各局が選挙速報を流す中、テレビ東京が「男はつらいよ 純情編」を放送している。これは第6作目(1971年)の作品。山田洋次監督の監督生活50周年記念の一環で、14日には「幸せの黄色いハンカチ」も放送される。
この時代の日本映画の名作をゴールデンタイムに見る機会が激減しているだけにうれしい企画だ。純情編のゲストは若尾文子、森繁久彌、宮本信子と豪華だね。
昔はよかったというつもりはない。連合赤軍の集団リンチ殺人も同時代の出来事だった。「裸の十九才」の公開も70年だった。
「男はつらいよ」は一貫してアウトサイダーの映画だったと思う。変化していくのはつねに寅じゃなく社会のほうだったが、どんな社会にも寅に安住の地はなかった。
そんな寅の放浪と一期一会の物語は、21世紀日本においてファンタジー度を増している。どこにもなかった「あの頃」を思い出させる原風景がそこにあるが、昔も今もそして未来にも「あの頃」は存在しない。
寅にはますます生きにくい世の中になった。こんなファンタジー映画を作れる映画人もあまり見当たらない。それだけに「男はつらいよ」が心のオアシスとして残っていって欲しいと思う。
この映画のどこに、だれに、どのように感情移入しながら見るか。見る側にリアルな家族の現実を想起させる。笑いながら。それがファンタジー映画「男はつらいよ」、そして山田洋次監督作品のように思う。そしてボクは常に寅に感情移入しつつ生きにくい社会に違和感を感じながらいまも生きてる。
追記:
ゴガクルの日記のほうにも日本語で関連した内容を書いたのでリンクしときます。そっちにはメディアと日本人とアウトサイダーについてみたいなことを書きました。
http://gogakuru.com/mypage_196030/diary/2011-04/10.html
そこでちょこっと紹介した本が、内田樹さんの『街場のメディア論』です。
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