google-site-verification=o_3FHJq5VZFg5z2av0CltyPU__BSpMstXTEV1P8dafg 古谷三敏著『ボクの手塚治虫せんせい』: ひとくちメモ

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2010/07/25

古谷三敏著『ボクの手塚治虫せんせい』

「レモンハート」や「ダメおやじ」で有名な古谷三敏先生は、手塚治虫先生のアシスタントを4年半ほどされ、その後赤塚不二夫先生のアイデアスタッフを12年されていました。その古谷先生が漫画とコラムで綴る手塚治虫先生のエピソード集「ボクの手塚治虫せんせい」。100ページほどの薄い本ですが、他の人からは聞けないエピソードばかりで楽しめました。

手塚・赤塚という二大巨頭のスタッフを経て独立という経歴はものすごいなぁ。それを知って古谷作品の雰囲気を思い出すと、確かに手塚・赤塚両先生から吸収したエッセンスが詰まっていたように思います。

もともと劇画やハードボイルドが好きだったという古谷さん。その「ダメおやじ」と「レモンハート」と両方に登場する愛すべきキャラクター、ハードボイルドタッチのメガネさんはまさにその投影ですね。「ボクの手塚治虫せんせい」の47ページにもメガネさんはしっかりご登場です(笑)。

ボクの大好きな「ダメおやじマイウェイ編」(昔の単行本で言えば11~14巻あたり)で、メガネさんのマネをするダメおやじの回がありました。まさにギャグとストーリーとの融合を見た気がしました。

ダメおやじってキャラクターは本当に不思議なキャラです。あの造形はギャグまんがでしかありえません(笑)。マジマジ見たことありますか。あの顔でギャグまんが以外の世界に存在できるわけがないと思ってました。初期のダメおやじは確かにギャグまんがだったでしょうし、テレビアニメで見たダメおやじもギャグでした。

しかしメガネさんが登場する前後、ユートピアを探して放浪の旅に出たダメおやじは、爆発的なギャグで終わらないドラマを持ってました。ダメおやじがダメおやじのまま、このようなまんがに発展できたのは奇跡的です。違和感がないどころか、ところどころに出てくる一発ギャグ的なダメおやじのコメントには、初期の頃のダメおやじが生きてるわけです。

若い頃さんざんバカやって、ブサイク顔だけどいまじゃかっこいい生き方してて味があるおやじ。そんなふうにダメおやじが成長してるんですよねぇ。そんなダメおやじが味わい深い短編小説のようなお話しに乗っかってるから面白かったんです。うーん目指したい(笑)。

「ダメおやじ」の中にメガネさんとの別れのシーンがあります。旅立ったダメおやじがメガネさんに残した置手紙に向かって、メガネさんがはじめてメガネをはずすシーンです。なんだかジーンと来ちゃいました。メガネさんと楽しくもハードボイルドに語り合ったあの時間が終わってしまう寂しさも。

後に出た「レモンハート」は、そのときの「ダメおやじ」の外伝という想いで読んでいました。ダメおやじは出てきませんが、Barレモンハートは今も昔もそこにあり、常連のメガネさんやダメおやじ的ポジションの松ちゃんがマスターと語らう優しい時間が流れます。

「ダメおやじ」と「レモンハート」の2作品には、過ぎてゆく時間と時間の止まった世界との違いがあるように思います。ダメおやじは旅人であり留まることをしません。ストーリーまんがのように流れながら、一期一会のドラマを楽しみユートピアを探しています。

レモンハートには、旅人ダメおやじが置いて行った、いつまでも続いて欲しい幸せな時間があります。永遠に終わることのないBarに、これまた一期一会な客が飛び込んできては、ときにギャグまんがのような珍騒動が巻き起こります。

ストーリー漫画の神様・手塚治虫とギャグマンガの王様・赤塚不二夫。なかなか相容れない方向性だと思うけど、そのスタッフとして吸収してきたエッセンスが古谷三敏さんのなかで絶妙にブレンドされた味になっているのかもしれないなと思います。

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