キムヨナへの道終章 浅田真央特番で007の秘密を知る
NHKで放映された浅田真央の特番「金メダルへの闘い」を観た。キム・ヨナ情報も入るかもと思いながら観ていたら、007の秘密についていくつか重要な証言が出てきた。録画しとけばよかったなぁ。
キム・ヨナはフィギュアスケートを始めた頃、ミシェル・クワンにあこがれてマネして遊んでいたという(これは中央日報の記事で読んでいた)。そのキムヨナのアイドル(偶像)だったミシェル・クワンの映像も番組でながれた。確かに似てる!スパイラル・シークエンスの姿は瓜二つといってもいい。
表現力で総合点を高めるカタリナ・ビット、ミシェル・クワンらの流れと、ジャンプ中心で技術力をアピールする伊藤みどりらの2つの大きな流れがあり、浅田真央はそれらをアウフヘーベン(止揚)するかのような高度かつリスキーな表現を目指しているという。ものすごい高い目標設定であり、その悲壮感とラフマニノフの「鐘」とは確かにマッチする。
キムヨナのアプローチはそれと比較するとかなりポップだ。007を選んだのも、キムヨナが登場するまでに他の選手がクラシックで踊ってきたところに、アクション映画のテーマは確実にインパクトがあるからとコーチのブライアン・オーサーは語った。
さらにショートプログラムにおける007の楽曲の組み立ての秘密も語った。ここがもっとも興味深かった。導入部は007とわからない静かなスタート。しかしその静けさを打ち破るような連続3回転ジャンプ!そして残り45秒のところまでじらしておいてジェームス・ボンドのメインテーマ。観客はここで大喝采となる計算だ。オレもまんまとはまった()。ジャンプに目が行きがちな素人のオレすらもステップに釘付けにした。
さらに残り30秒のところで、ギミック的な指パッチンが入る。ここはオレも書いてきた「休符」だ。このギミックについても、観客や審査員にバッチリ印象を残しつつ、疲れが出る後半のステップに向けて体勢を整える役目があるとキムヨナ自身が語った。まさにブレイクポイントなのだが、ここが楽曲のリズムとズレてしまうとまったく台無しになるリスクもある。体勢を整えるとキムヨナは簡単にいうが、休符を休符として踊れるリズム感が天性のものだから言えるように思う。
そのような秒単位の音楽設計があり、そのブレイクポイントにキッチリ身体を順応できる身体能力の高さがキムヨナの魅力だ。それはスピードに乗ったままジャンプできる安定感にも通じる。ひと言でいえば突出したリズム感。これが強さじゃないだろうか。
浅田真央とは確かにタイプが異なる。しかしどちらもかつての演技力か技術力かという派閥争いよりも一段レベルが高いように思う。高度かつリスキーな挑戦という意味では、お互いにヴァリエーションルートから同じ高みを目指しているともいえまいか。この二人の目指す高みに比べれば、バンクーバー冬季五輪さえもまだ道の途中かもしれない。
キムヨナのオリンピック演技開始まで逸る気持ちを抑えるために、なんとか時間をつぶせたこの連載「キムヨナへの道」シリーズ(笑)。これでいったん終章としたい。演技は日本時間で24日から。キムヨナ007がもどってくる。さしずめ、For Your Eyes Only といった気分だ。
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