BS熱中夜話中島みゆき第一夜(後夜祭)
今朝、ようやく観た。お恥ずかしっ!でも放送されちゃったらしょうがない。語りつくせなかったこともあるので、放映された後ならいいでしょ的に、ひとりで後夜祭をやってみたい。右写真は第一夜収録直後のスタジオ風景です。後夜祭感あるでしょ。ブログを意識した写真も撮ってたのだ(
)。
オイラはブロガー ヤクザなブロガー オイラを使えばブログに書くぜー(石原裕次郎風に)
まず第一夜を観ての最初の感想。編集の力って偉大だな()。「地上の星」についてボクがうまく語れなかったとこはカットして後からアナウンサーの方がフォローしてくれてたりだとか、最後に口が滑ったとこはキレイにカットされていた(笑)。
そこ、スタジオではウケたんだけどな。2番のリフレインでの“つばめ”の解釈は「(わたしたちリスナーをつばめと捉え)あなたの家族について教えてよ、ラジオに投稿してよ!というみゆきさんからのメッセージなんですよ!」って言ったんだけど()。
でも、2002年紅白の「地上の星」が流れたすぐ後で感動してる視聴者も多かっただろうから、解釈をネタにしてオチをつける必要もないワケで(ブログじゃないんだし)。カットは正しい判断だったといまは思う。さすがプロ!客観的!
ボクが「地上の星」コーナーで選ばれたのは、たぶん画になるから。もちろんオレがじゃないよ。語る内容がどっちかというと思い入れの深さじゃなく、分析的でテレビ的な画にしやすかったからだと思う。ちゃんとすばる・銀河・ペガサス・ヴィーナス・ジュピター・シリウスの写真が挿入されてた。つばめまで...さすがプロ!構成バッチリ!
もうひとつ感じたのは、まじめな話、中島みゆきさんの最近の楽曲の良さだね。正直ボクは’80年代末あたりまでのヘビーリスナーだった。その時代に感受した中島みゆきの音楽については、これは相当血肉化してると自負してる。だから今回の参加も受けた。
だけど、その後はテクノ・ハウス・アンビエント・ネイチャーサウンドなどいわゆる音楽からどんどん遠ざかっていた。もちろん'90年代以降も聴いてはいたけれど、決して熱心なフォロワーじゃなかった。今回参加したことでよかったのは、現在進行形の中島みゆきの音楽をあらためて好きになれたこと。
世代は多少違えど、中島みゆきさんと同時代を生きてこれてよかったなとあらためて思ったね。忘れていた感受性の扉を他のみゆきファンの言葉が久しぶりに開いてくれた感じです。聞かせてくれてWelcome
●悪女に代表されるサウンドの裏切り
さて、後夜祭のスピーチに続きまして(笑)。出し物はなんにすっかな。「地上の星」以外には「悪女」のサウンドについて語ってたのがオンエアされてたから、その続きでも。
まずはカットされた部分ですけど。「悪女」ってボクにとって初の中島みゆき体験だった曲なんですよ。マリコの部屋にぃって歌い出しの衝撃を、同じ町内にいた(渚のシンドバッド暗記対決した)マリコちゃんって同級生話とともに語ったんですよ。ま、そんな世間話を司会のビビる大木さんとやったとこはカットでした(笑)。本筋から外れてるもんね。
それと「悪女」はシングルとアルバム(寒水魚に収録)とでサウンドがまったく違うってとこ。ここは語り口もまどろっこしくて自分でも失敗した部分だったわけですがやはりカットです。でもこの違いは結構重要かなと。
シングルの悪女のキーはA♭で、アルバムの悪女はAです。シングル悪女はギターならカポ1でGで弾けます。イントロからガンガンにストロークで弾き、印象的なピアノと重なります。そしてみゆきさんの歌も力強い。グイグイ押し出すメジャー感でまさにシングルヒットを飛ばす楽曲に仕上がってる。そのサウンドの強さや明るさと歌詞の悪女になりきれない切なさやいじらしさとのギャップについては番組で語れてました。
それに比べてアルバムバージョンはメロディこそ同じでキーはメジャーなわけですけれど、後藤次利アレンジのイントロが別の意味で印象的です。分数コードのBm7(on E)ではじまります。ベースがダーダッ・ッダダダと低ーーいEからはじまる。スタンダードなチューニングで最低音になるベースのE音ではじめるためにキーを半音上げてAにしたんじゃないかと思われるくらい、悪女のドツボな精神状態を表すBm7/Eです。それが4小節続いてリスナーが「あれ?悪女じゃないのー?」と思ったら、メジャーAコードで曲がはじまる。
そして淡々と淡々と「♪ムワーリコの部屋へ」と歌われる。かすれ気味の声は、ある種のけだるさとスモーキーさを纏ってる。古いソファに腰を下ろしてタバコ吸いながら、誰も見ていない独りの部屋でほんとの悪女を演じてみる。そんな雰囲気を感じるのです。
アルバムバージョンはロック色が強いという評価が一般的ですが、ボクにはこのアルバムヴァージョンって“ウチ”を感じさせる。シングルは“ソト”なんですよね。中島みゆきを知ってる人も知らない人もいる場所に出て行くのがシングル「悪女」で、ファンが買うアルバムはウチの中でほんとの気持ちをほんとの気持ちで“演じる”悪女であろうと。
だからシングルでは切ない歌詞を力いっぱいのよそ行き声で世間に対して明るく振舞うサウンドなわけです。決して他人には本当の自分を見せない、その強い意志が明るいサウンドに表れてる。ちょっと聴いただけの人(ヒット曲ですから)の印象はそこまででOK。
シングルで歌詞まで読んだ人には、サウンドとのギャップのなかに実は悪女を演じてる自分まで分かって欲しいといういじらしさが発見できる。
さらにアルバム買って別ヴァージョンに驚いた人には、外面は明るいけど本当はこんな歌なのさと、ぶっちゃけて思いっきり悪女そのまんまに歌ってみせる。しかし今度はその悪女っぷりが歌詞の切なさに逆に打ち消されて、さらに悪女になりきれない女歌が重層的に完成するわけですわ。
もう二重三重のギャップとサプライズという衣装を纏って、中島みゆき嬢はホントのワタシは誰でしょねゲームを仕掛けてくるのだ。
●恋歌「この世に二人だけ」における2つのギャップ
こういう楽曲は他にもある。例えば「彼女の生き方」とか。結構明るいアルペジオの曲調なのに、歌いだしの歌詞は♪酒とくすりで体はズタズタ ですわ。あるいは「遍路」も。らららららーって歌えそうな牧歌的な曲に裏切った男の思い出が次々と歌われてゆく...。
なかでも、シングルとアルバムとの“ソト”と“ウチ”との使い分けの象徴的な事例をあげると、シングル「横恋慕」とアルバム「この世に二人だけ」だと思う。今回、恋歌で一番好きな曲では「この世に二人だけ」と書いたのだけど、それはこの曲のギャップに中島みゆきらしさを感じるからだった。
シングル「横恋慕」のメロディも明るい。ルンルン気分だ。しかし歌詞はまさに断絶を歌ってる。♪時の流れさえ見放す私の思いを伝えてから消えたい だよ。絶望的シチュエーションなんです。これをよそ行きのメジャーな楽曲に仕上げてる。
そのシングルが出た後のアルバムが「予感」であり、その一曲目が「この世に二人だけ」です。タイトルだけ聞いたらさぁ、120%のラブソングじゃない。まぁ中島みゆきのアルバムだから多少ひねりを加えて、深すぎてつらい恋愛ソングかなとかさぁ。だけど、これも1,200%絶望的な断絶ソングなのだ。ここにもひとつのギャップがある。
イントロのリフもメロディもあまりに淡々としていて達観しているようにも聴こえる。好きな男の彼女が描いた絵の載ってる本を本屋で見つけて、その彼女の名前のページ(奥付とかでしょ?)で彼女が彼と同じ苗字になっているのを確認しながら、その本をあえて買っちゃってる様子(曖昧だけど)。そんな日常の、本の奥付程度からイマジネーションを膨らませて届かなかった想いを淡々と歌っているわけですわ。
「横恋慕」と「この世に二人だけ」とは同じ“かなわない恋”の歌でありながら、よそ行きの明るい顔(シングル)と、自分の部屋での淡々した顔(アルバム)とが連続リリースされてるこのギャップに、中島みゆきの想いを見てしまうわけです。「この世に二人だけ」はタイトルと歌詞とのギャップと、先行シングル曲とサウンド面でのギャップと、2つギャップを内包してる名曲なんです。
「横恋慕」と「この世に二人だけ」は、その後発売されたセルフカヴァアルバム「いまのきもち」(2004年)では1枚のなかで並べてありました!
この曲順を見てボクは、あの頃から時間が経った「いまのきもち」として、ウチとソトとの隔てなく、しかしこの2曲の連続性やアレンジの違いなどを感慨深く聴くわけです。
「いまのきもちは年代順だからこの順なのだ」という解釈は味気ない。この2曲を選ばざるを得ない“いまのきもち”を推し量るのがまた恋歌の深読みに通じると思ったりするのであります。
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コメント
見ましたよぉー!。
いやぁ、あれだけファンの方々と語り合えるのって幸せですねぇー。羨ましい。
僕が中島みゆきを真剣に聴いていたのは80年代だったから今回はたいへん勉強になります。じっくり聴いてみたくなりました。
ポップンポールさんが「地上の星」の歌詞を語るところで、うちの配偶者が言いました。
「この方、国語の先生?」
第二夜楽しみです。
投稿: tak | 2009/11/26 00:27
ご覧いただけましたか。アリガトゴザイマス!
楽屋ではスケッチブックにテーマに沿った内容を書いていくんですけど、文化祭みたいなノリでした。そこにいる全員が中島みゆきファンという状況は壮観でしたよ。
>「この方、国語の先生?」
第二夜でボクはほとんど映らないとは思いますが、夜会とラジオの超マニアな人々が語られるので必見ですよ。
ついでにその後22:00からのSOUND+1も吹奏楽部と平原綾香のコラボなので、そっちもオススメです!
投稿: ポップンポール | 2009/11/26 07:39