星野博美がまだ足りない
じわじわと星野博美さんについて書いた記事へのアクセスが増えている。文庫本になった「のりたまと煙突」で星野博美さんに興味を持たれてのご訪問と思われる。ごめん、情報少なくて()。でもネットに情報が氾濫していないところが星野博美らしさのような気もする。
ボクは「愚か者、中国をゆく」(光文社新書)で、星野博美の最初の中国への旅を読み、その流れを時系列に追っかけようと、昨年秋から正月にかけて「謝々!チャイニーズ」、「転がる香港に苔は生えない」(文春文庫)を読んだ。この追っかけは楽しかった。出版順じゃないけど、星野博美の歩いた軌跡を追ってるので、別の本で読んだ人のエピソードが出てくると、なんだか自分まで懐かしく思えてきたりして。
最初の新書を読んだとき、いや本当はケーブルテレビでお話しを聞いたときから星野博美さんが大好きになってしまって、横浜のワークショップに出かけて行ったり、ネットで星野博美情報を探したりした。ワークショップのときに話せればもっと別の展開があったかもしれない。そのチャンスもあった。
でもこのときは星野さんの師匠橋口譲二さん主催イベントだったし、星野さんの著作などについて思いの丈をぶつけるには場違いな気もした(いつだって思いの丈を著者にぶつけるのは場違いかもしれないが )。前に若気の至りで叶美香さんに「公式サイト作らせてください!」って名刺渡したことあるのだが(笑)、あのときの場違いな感じがトラウマになってるのだ(なんつって)。
星野博美情報はネットでなかなか得られない。それでひとくちメモへのアクセスも増えているのだろう。とにかく情報が少ない。“星野博美が足りない”のだ。
読書感想ブログ以外の情報はなかなか見つからない。橋口譲二さんのAPOCCが数少ない公式情報だ。週刊誌には連載もされている。これは星野博美さんの著述業者としてのスタンスのようにも思う。メディアを使って広告打ちまくって売文業でボロ儲けみたいな某作家や某学者とは異なる。個人的には「愚か者、中国をゆく」は映画になると思っているし、話が来たら乗って欲しいけど。
そういう、いわばスローライフなタイプなので、むさぼるように星野博美本を読んでいくとすぐに読む本がなくなっちゃう。それは困る。そこで読むほうもゆっくりと読んでいくほうが長くつきあえるような気がする。1冊を時間をかけて読み進める。スローライフな気分になるときを待ち、そのタイミングで少しだけ読む。流行作家をビヤガーデンのビールのように飲むとすれば、星野博美はエクストラクラスのブランデーを舐めるような感じだ 。
●スローな読書にしてくれ
だからボクは3冊を読んだあと、どのように読み進めていくべきかを考える。流れからすると次は「のりたまと煙突」じゃなくて、「銭湯の女神」だと思ってる。本はずいぶん前から手元にあるけど、もったいないからがっついて読んだりしないのさ(笑)。
「銭湯の女神」での星野博美は、香港返還前後の時期を香港で過ごし(「転がる香港に苔は生えない」の時期)、日本に戻ってきて約3年目の星野博美だ。まえがきで「まだきちんと日本に復帰できていないような気がする」と書かれている。それは旅の余韻というだけではなさそうだ。香港をまだ消化しきれていない星野博美の葛藤がまえがきから伺える。読者としてその葛藤を理解するには、この前の中国・香港3部作が必要条件であり、いまボクにはようやく読む準備が出来てるわけだ。
「のりたまと煙突」は、いくつかのブログで読書感想を読んだ限りでは猫と暮らす日常のなかに「死の臭い」が立ち込めているらしい。くそー、そこまで一気に読みたい衝動に駆られるが、あせらないあせらない。一休み一休み...。
「死」と「旅」あるいは「人生」とは共通点がある。出会いと別れの繰り返しだが、旅先で出合った人とは二度と出会わないことも多い。人生でも同じだ。同級生として1年間同じ空間を共有しても一生出会わない人のほうが多い(同窓会とか嫌いだし)。
昨日マンションの管理人のおばさんから「来週で退職することになりました。土曜じゃないといらっしゃらないでしょ?だから今日でお別れですね」って挨拶された。鳩のときは面倒かけちゃいました。管理人のおばさんとももう一生会わないことだろう。マメな人は年賀状のやり取りとかするんだろうけど。
相手が生きているか死んでいるかに関わらず、旅も人生も誰かとの別れの先を生きていかなければならない。ボクは「人が死ぬときは一人」をもっとも根本的な自分のアイデンティティだと思って生きているのだが、他者との出会いと別れの繰り返しを自分の人生のなかでどのように位置づけるのか、いまだ模索してる。でも答えを見つける自信はないし、星野博美の著作とのつきあい方のように、答えを出そうと考えないでゆっくりと過ごせればいいのかもしれない。
いま週刊誌で連載されている星野博美さんのエッセイもそのうち単行本になるだろう。そこまでに全著作を読み終えないよう注意しつつ(^_^;)、これからも星野博美さんの著書とはつきあって行くつもり。いつか会って話しがしたい!
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