テクノから遠く離れてYMOを素因数分解した名曲10選
「自分で弾き語りたい中島みゆき20選!」がなかなかのご好評をいただいてまして。ソフィーマルソーファンつながりで音楽への造詣も深いtakさんは「自分で弾き語りたいビリー・ジョエル20選」をアップされました!そこでこのいい流れに乗って、中島みゆき嬢と同時期にボクがはまっていたYMOの曲でやってみようってこってす。
と、書いたものの結構ツライ()。なんせ頭がテクノポップじゃなくなってんだよね。YMOのメンバーも最近バリバリに生音志向じゃないっすか?やっぱいいよねホンモノの楽器や声って(笑)。
もうひとつ問題あり。YMOってオリジナルアルバムは思いのほか少ない。ミュージシャンの意志とは無関係に“増殖”したいろんなベストアルバムっぽいもの、いわゆるアルファ商法作品は多いけど。そこで20選は書くのがつらそうなので10選にすることに。
今回はどんなYMO10選にしようかと20分くらい悩んだ。YMO弾き語れないし!そんなとき教授つながりで大輪教授が思い浮かんだ(>なんでやねん!)。大輪教授といえば素因数分解。そうだ素因数分解すればいいんだ(大輪教授の素因数分解の方法についてはこちら)。
というわけでYMOを素因数分解してみる。YMOといえばテクノだ。ではYMOからテクノを取ってしまおう。何が残った?テクノを取ったYMOとはなんだ?3人のミュージシャンだ。ベーシスト、キーボーディスト、ドラマーが残った。では彼らから楽器を取っちゃおう。するとどうなる?ただの音楽好きなおっさん3人組だ。では彼らから音楽を取ったらどうなる。ただのおっさん3人組だ。仲がいいのかも定かでない。見てはいけないものを見てしまった…。
気を取り直そう!YMOはテクノを楽器でも演奏できる音楽好きなおっさん3人組なのだ。テクノでなくてもいい曲はたくさんあるのではないか。
そこで今回は、テクノでなくても名曲なんじゃないかなと思えるYMOの名曲10選と題して選んでみることとする。正直なところ、ソロワークから選べたらどんだけ楽だったことか(笑)。でもあえてYMOからテクノを素因数分解してみるという想像力の訓練をしてみたい。時間はたっぷりある...。
●テクノじゃなくてもすばらしいYMO名曲10選
では出来るだけ発表順に進めていこう。
東風(TONG POO)
「イエロー・マジック・オーケストラ(日本版)」収録の東風。坂本龍一の傑作!イントロのベースラインからワクワク感ありでライブウケする名曲。ライブアルバム「公的抑圧」にも収録。
CASTALIA
BEHIND THE MASK
「SOLID STATE SURVIVOR 」からはこの2曲を。世間的にはYMOといえばこのアルバムというくらいの名盤。
キャスタリアの旋律は坂本龍一らしさが存分に発揮されてる。「HI-TECH/NO CRIME」というリミックス版としては異例(笑)のよいアルバムがあったのだが、そのなかでマーク・ギャンブルがリミックスしたヴァージョンもかなり良い!
東風にもいえるけど、盛り上がらないようで盛り上がるミディアムテンポの楽曲って坂本龍一の真骨頂だったな。“うずき”って感覚に近い。ビハインド・ザ・マスクもイントロはそんな曲。マイケル・ジャクソンもカヴァーしたがったが版権料で折り合わず実現しなかったらしい。そのヴァージョンを聴くなら坂本の「メディア・バーン・ライブ」がすばらしい!
NICE AGE
THE END OF ASIA
「増殖」からも2曲。ボクとYMOとの最初の出会いはこのアルバムだった。当時ステレオとなぜかアナログシンセを購入した父が買ってきたか借りてきたか貰ってきたかしたのであった。これを聴いたときの衝撃はすごかった。スネークマンショーって面白い(笑)。校内放送で流した。
スネークマンショーに隠れてしまいがちだが名曲も多いアルバムだった。ナイスエイジもそんな一曲。YMOのポップな側面を一手に引き受けていた高橋ユキヒロのポップでキッチュな感性が心地いい。ジ・エンド・オブ・エイジアはこれまたユキヒロとは真逆な坂本龍一の土着な(アースな)感性がYMOのコンセプトにうまく乗った名曲だと思う。ライブアルバム「公的抑圧」や坂本のソロデビュー作「千のナイフ」版も必聴。
RADIO JUNK
「パブリック・プレッシャー(公的抑圧)」からの一曲。とはいえ既に東風もTHE END OF ASIAも入れてる。いま現在のボクが個人的にYMOのベストな1枚をあげるならこのライブ版なんだよね。YMOはまぎれもなくライブバンドだったと思う。
レディオ・ジャンクは高橋ユキヒロ作曲で、センスの光る一曲。いま思うと正直テクノじゃないよね(笑)。ユキヒロの曲をYMOがテクノ・リミックスしたような感じ。
--閑話休題--------
ここまでで6曲選びましたが、この後のアルバム「BGM」と「テクノデリック」からは選曲なしでした。そんなことでいいのか という声がどこからともなく聞こえる...。YMOマニアにとって外せない2枚ですからね。
でもYMOを素因数分解してみてわかったんです。この2枚はテクノ抜きに語れないということが。当時、肥大化したYMOという偶像への反発(逃避)からアンチテクノポップ、アンチYMOという心境のなかにあった音楽好きな若き3人のミュージシャン。でもテクノの潮流は捨てていなかった。いやあえて1981年に作られたこの2枚のアルバムが、まさに1990年代へのテクノ・ハウス・アンビエントの扉を開く作品だったということを再認識したわけですわ。
そういう認識に立つと、この2枚からテクノを剥ぎ取って評価することはボクには出来なかったわけです。テクノな10曲ならば確実に入ってくる名盤中の名盤です。では、残り後半4曲です。
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ONGAKU
「浮気なぼくら」からは坂本龍一の小品を1つ。幼稚園でもお遊戯できそうな音楽。子どもたちに「オンガクー!」と合いの手を入れさせたい。
3者3様のソロワークスを経て作られたアルバムだけにいま考えると非常に洗練されたいいアルバム。でも実は持ってない(笑)。リスナーとしては、なんとなくわだかまりも残ってたりして。このONGAKUだって坂本の「メディア・バーン・ライブ」から選んだような...(^_^;)。
PERSPECTIVE
「サーヴィス」からの一曲はパースペクティブ。ボクにとってはYMO時代の坂本龍一最高傑作かもしれない。この曲の美しさは坂本のインテリジェンスの賜物だと思う。
CHAOS PANIC
過激な淑女
オリジナルアルバム以外から2曲選んだ。カオス・パニックは「君に、胸キュン」のカップリング曲。何がいいって歌詞がいいんだよね。細野さんと盟友ピーターバラカンの共作詞。作曲は坂本龍一。とってもポップでチャーミングな曲。
シングルA面からは過激な淑女を選んでみた。作詞は松本隆で作曲は音楽好きな3人組(まだ若い)。もうテクノというジャンルが完全に歌謡ビジネスのなかで必要不可欠な存在となり、ヒットチューンに同化していた時代。YMOというムーブメントがその役割を終え、テクノなアプローチの大衆化によって確実に音楽のステージがひとつ上がった。
以上、音楽としてすばらしいYMO10曲を選んでみたわけだが、ちょっと教授色が強くなりすぎたかもしれない。素因数分解する前は各人3曲ずつにしようかとか迷ったりもしたが、YMOの匿名性という細野さんの初期コンセプトも重視して、楽曲で選んでから作曲者を眺めたら坂本龍一が多くなったという経過だ。
YMOを教授中心に聴いていた当時の記憶も相当影響していることは間違いない。ユキヒロも細野さんも基本はリズム隊であり、上モノ担当の教授が目立つのは仕方がない。各人のソロワークではなくYMOという枠組みでは坂本龍一シフトになってしまう。ピッチャー坂本、キャッチャー細野、センターユキヒロみたいな感じだ(笑)。
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コメント
お待たせしましたぁ。GW特別企画「自分で弾きたい」シリーズYMO編、こちらもアップしました。
うーん、選曲似てますね(笑)。「BGM」「テクノデリック」のテクノな名盤を外しているところも期せずして共通。僕は純粋に「演奏したい!」が基準になってます。ポップンポールさんなら、もっと細野色が濃くなるかと思いました。
ソロワークスで入れたいもの、いっぱいありますよね。ユキヒロの「音楽殺人」、教授だったら「サマー・ナーヴス」、細野さんなら変なCM出演(?)etc。
投稿: tak | 2009/05/06 00:19
それでは感想選でも。「自分で弾きたい」と「テクノ抜きで」ってのは割りと共通するのかも。どっちも打ち込みじゃなくて音楽したい!って気持ちが流れてるような気がします。
細野色が薄いのはYMOだからかな(
)。音楽好きなおっさん3人のソロワークスから10選だったらいろいろ入ってきますよたぶん。細野さんの「ありがとう」なんてユキヒロの歌ヴァージョンにするか細野さんオリジナルにするか悩むー!!やらないけど
選外の候補も書いとくと、ライディーン、中国女、CHINESE WHISPERS、MASS、LIMBO、以心電信、千のナイフ、Riot In Lagos が最後まで悩んだラインナップ。だったら20選でよかったんじゃないか(
)。いえいえ、ここから選ぶのがいいんです
選外の理由を考えると、千のナイフとRiot In Lagos はあまりに坂本ソロ色が強くなる。ライディーン、中国女は「自分で弾きたい!」には入ってくるけど、やはりテクノポップの要素が強い。MASSもテクノとして聴きたい。その他は純粋に10選に達せず...というところでした。
それにしてもこのシリーズは楽しいな。いろんなジャンルで5選づつくらいなら時間もかからないし。
投稿: ポップンポール | 2009/05/06 06:34