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2009.05.06

復刊!ブラバンキッズ・ラプソディー

ブラバンキッズ・ラプソディー復刊ドットコムで別の復刊本を購入予約する際、ちょうど同時期に復刊されたので目についたのが「ブラバンキッズ・ラプソディー」とその続編「ブラバンキッズ・オデッセイ」(どちらも三五館刊)だった。同時に予約し、ブラバンキッズ2冊が先に届いたので読み始めたが、号泣 weep 号泣 crying 感動で4回は涙したな。

初版は1991年刊だから18年ぶりの復刊だ。くだらない本ばかり出版してこういう書物が眠ってるんだから出版不況なんてよく言うぜ。宝の持ち腐れなんだよな。良い書物はどんどん復刊させていこう。

オビには「ボロ負け高校吹奏楽部が一躍、『吹奏楽の甲子園』の頂点へ登りつめた!なぜだ?夢の舞台『12分間』へ一途だった、涙と汗の青春ノンフィクション」「普門館に伝説を生んだ“野庭サウンド”誕生の原点」とある。

わかりやすくいえば、ブラスバンド部版スクールウォーズだ(あるいはプロジェクトX泣き虫先生)。ダメな部活がひとりの指導者との出会いによって生まれ変わり短期間のうちに頂点へ登りつめる。その過程が感動的なのだ。ブラバンもラグビーも「一人はみんなのために、みんなは一人のために」という基本姿勢が似てる。

ボク自身はブラスバンド部でもなく、ブラバンとのかかわりはほとんどない。どっちかというとブラスバンド部の演奏に乗って競技場を行進していたほうなので。そんなボクでもこの部活動の物語には感動する。なぜなんだろう?

ひとつには彼らと同世代だというのがある。彼らが吹奏楽に燃えていた1980年代、ボクはギターやピアノを練習したり映画を撮ったりしていた。プロレス技にも磨きをかけていた(笑)。何事にも打ち込むのが青春なのだ。同じ時代の空気を感じるのかもしれない。

そして物語としてすばらしい。ドラマ好きなので。当事者の何10分の1かでも、そのときの感動を味わえるのがノンフィクションのいいところだ。良い師匠との出会いというのは古今東西感動話の基本だ。それが作り話でないところがノンフィクションのすばらしいところでもある。

●運命的な出会い

いまや統廃合でなくなった神奈川県立野庭高校(ノニワじゃないのよ!ノバ高校)の吹奏楽部とそこへ部活動嘱託員としてやってきた中澤忠雄さん(元読売日本交響楽団チューバ奏者)との出会いとその後の葛藤はまさにドラマのようなホントの話だ。

同じユニフォームでビシっとキメた私立の名門が多い高校吹奏楽コンクールの世界で、制服姿で借り物の楽器を演奏する県立野庭高校吹奏楽部が全国に名を轟かせ、“野庭サウンド”とまで呼ばれる音を作り上げたそのルーツは中澤さんと当時の部員たちとの出会いにあった。

ひとりひとり傑出した才能はいない。はじめは部員すらも「箸にも棒にもかからない」と思っていた。あまりにひどいので、ホンモノの音楽家にちょっと指導してもらったらてな調子で、近所の楽器店からこれまた近所で音楽教室を開いていた中澤忠雄さんに話が通った。

事故で現役引退したものの中澤さんの音楽教室は盛況で、とても高校へ教えに行く暇なんてなかった。だが楽器店主の熱心な勧誘(?)を断りきれず、一度見学に赴いたのが運のツキ!ヘッタクソな演奏なのに一所懸命な子どもたちの顔を見ていると、この子たちが本当の音楽のすばらしさとすごさを知ったらどうなるだろうという興味がフツフツと湧いてきた。

中澤さんご自身も名門天理高校で全国大会金賞を受賞してプロになった人。指揮台に立つと次々と言葉が出てくる。部員たちもその的確な指導によって自分たちの演奏が変化してやる気が出る。もともと音楽が好きで吹奏楽をやっている部員たち。やる気を引き出せるきっかけとしてこれ以上の人はいなかった。

その後、合宿で危機が訪れたりするのだが(ここが一番泣けるのだが)、それはぜひ読んでみてほしい。

そして、読み終わったら、表紙カヴァを取ってみてほしい。必ず読んでからね。また号泣できるから。

●普遍的な青春群像

平凡な高校生でもちょっとしたきっかけと、目標をかかげそこへの努力によって夢に手が届く。それが人を感動させる。それ以上に自分が感動できる。16歳前後というのは平凡なボクたちでも人生の豊かさを決定付ける最初の関所だと思う。

プロになるためには3歳からトレーニングしてみたいな世界はもちろんある。しかし多くの人は平凡に義務教育を終える。そこから社会人になるまでに、どれだけのモノが吸収できるか。青春は一度きりというのはそういうことなんじゃないかと思ったりする。苦労を買ってでもすべきなのはこの時期だ。

受験勉強というのも確かに苦労を買ってるには違いない(高価な買い物だ)。しかし個人的にはあのお勉強が何か身について今に生きているとは思えない(まじめにやってないってのもあるがっ)。それ以外に使った(使えた)多くの時間のほうに価値がある。メリハリが大切ってことかなぁ。

感動する要素には中高時代に一所懸命にやった自分の体験もオーバーラップする。野庭高校を描いたノンフィクションではあるけれど、それは普遍的な物語として読める。当事者じゃないからこそ。この物語を媒介にして、純粋にがんばってたあの頃の自分を思い返してみたい(いや、いまがんばってないわけじゃないけども...)。

●その後のブラバンキッズ

野庭高校吹奏楽部は中澤忠雄さんとともに快進撃を続けた。その中澤忠雄さんも、生徒たちに“おくさん”と慕われた中澤さんの妻信子さんも故人となられている。野庭高校も2003年になくなって、OB会も解散した。

しかし、いま当時のブラバンキッズたちが集まって定期演奏会をされているというではないか!それがナカザワ・キネン野庭吹奏楽団だ。ブログもある。

「ブラバンキッズ・ラプソディー」の表紙カヴァを取って感動させてくれたのは、ブラバンキッズのお一人白根圭偉子さんご提供のあるモノだったのだが、「ブラバンキッズ・オデッセイ」を読むと、その白根さんが中学校で吹奏楽部顧問をされていた。こういうエピソードもそれだけで泣けるよねぇ。

その白根さんの中学校体育館などで練習をしてきたのがナカザワ・キネン野庭吹奏楽団。中澤忠雄さんの思いは脈々と受け継がれているようだ。

●野庭サウンドが聴けるCD

ボクはラプソディーを途中まで読んで、どうしても聴きたくなった。野庭サウンドがどういうものなのか。高校の吹奏楽部のCDなんてないだろうが、全国大会だと出ていることがママあるから。

そう思って探したら、なんと4枚組の野庭高校吹奏楽部だけのCDが出ているではないか!

音楽は心 神奈川県立野庭高等学校吹奏楽部・指揮中澤忠雄

ボクには高校吹奏楽部のトップ校がどんなレベルなのかまったくわからない。でも「ブラバンキッズ・ラプソディー」で感動した心にはジーンと響く演奏だった。

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Comments

はじめまして八郎右エ門と申します。
ブログを拝見して、嬉しかったのでコメントを残したいなぁ…と。。

実は三五館の「編集さん→著者さん→私」でこちらのブログを教えてもらいました。
編集さんも著者さんも大変うれしかったようで、嬉しさのおすそ分けでわたしにも…ということで。

私はラプソディでは最後のメンバー表にだけ、オデッセイでは中盤に登場するOBの一人です。

ブログを拝見して一番うれしかったのが、貴方が吹奏楽経験者でないにもかかわらず、普遍的なノンフィクションの物語として共感していただけたことです。

高校当時とは比べるべくもありませんが、ナカザワ・キネン野庭吹奏楽団の演奏も聴きに来ていただけたら嬉しく思います。
年に2回、先生夫妻を追悼する「8月の演奏会」と「定期演奏会」を行っています。
(次回は8/15(土)栄公会堂で行います)

取り急ぎ、おすそわけの喜びをお返ししたく…
ありがとうございます!

Posted by: 八郎右エ門 | 2009.05.13 at 11:20

八郎右エ門さん、ご訪問ありがとうございます。私も関係者の方に読んでいただけてうれしい限りです!

読み終わって表紙カヴァを外しただけでまた感動なんて書物は初めてです。奥付のとこまで結構ちゃんと読んでしまう性質なので「え、表紙になにか提供物なんてあったっけ?」と思ってカヴァを外したら...。そこに詰め込まれた思いがドドドっと入ってきて、当事者でもないのにそこまで読んできた物語が頭のなかをフィードバックし始めてまた号泣crying。いい本をありがとうってこっちが感謝したいですよ。

最近は作り物の感動話があふれてますけど、中澤さんと野庭高校の物語はリアルタイムに息づいているのがいいですねぇ。OBの皆さんのその後の活動を通しても、それがひしひしと感じられて。

吹奏楽部や元吹奏楽部の友達がいたり、吹奏楽部の女子を追っかけていたことはある私ですが(^_^;)、吹奏楽部の活動がこれほど大変だとは思ってもいませんでした。

ナカザワ・キネン野庭吹奏楽団もぜひ聴いてみたいですね。楽団ブログを読んで3月だったかぁとちょっと残念。夏は私も身内の初盆で関東にいないんですよぉー。でもいつか必ず。

>私はラプソディでは最後のメンバー表にだけ、オデッセイでは中盤に登場するOBの一人です。

思わず探しそうになっちゃいましたよ!ま、それはまた後日ゆっくり(>やっぱ探すんかいっ!?)

あと、よくよく考えると中澤さんとの最初の出会いを演出した楽器店さんの功績もここに称えておきたいですね。グッドジョブgood

Posted by: ポップンポール | 2009.05.13 at 23:42

うわぁ
コメントのレス…嬉しいですね(アナログなもので)

最近の本は漫画なんかでもそうですけど、裏表紙までいろいろありますよね。うんうん。

私たちは事実確認のための取材を受けたり、楽団や現役当時の写真などを提供するだけで出版にかかわっているわけではないのですが、著者の石川さんや編集さんの気持ちをひしひしと感じます。
 オデッセイでは加筆されていたり、あとがきがあらためて加えられていましたが、よい距離感とみまもって下さっている想いがつたわります。

ページを開くと自分たちの立ち位置を再確認することができるっていうのは、ほんとうにありがたいことだと思っています。

先生夫妻も野庭高校もいまはありませんが、「先生の音楽」を持ち続けていければと思います。
世代は全然違うのに合奏しているとおもしろいくらい「合う」んですよ。
うちわネタですけど「オリーブの首飾り」なんかすっごいです。

探していただく時間申し訳ないので・・そうだなぁ。
いま、楽団の雑用です(笑)

それでは!

Posted by: 八郎右エ門 | 2009.05.14 at 14:54

自分たちの記録がこうして出版物で残ってるのはいいなぁ。

「オリーブの首飾り」shine ポール・モーリアですね。吹奏楽に合いそうですね。

ボクの吹奏楽のイメージは「宇宙戦艦ヤマト」でした。我ながら貧困な発想だなぁ(coldsweats01)。

ちょっと吹奏楽にも興味出てきました。いつかライブで聴きたいです。

Posted by: ポップンポール | 2009.05.15 at 07:18

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