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2009.03.28

映画「羅生門」は正しいデジタルリマスター見本

ハリウッドの技術で修復されたデジタルリマスター版「羅生門」のブルーレイを観た。このデジタルリマスター化について、アマゾンでのコメント欄も基本的に好意的な意見が多く、また修復前との比較映像見本も掲載されていたので購入してみたわけだ。

確かにすばらしい出来栄え。モノクロ映画なのだが三船敏郎のちょっとブラウンがかった(ように見える)瞳の輝きとか、いかにも山猿のような山賊の表情が見事だ。デジタルリマスターによってクリアかつ安定した画像になったことで、三船の全身からほとばしる躍動感や細かい表情が見事によみがえった。

世界の三船には有名なエピソードがある。最初は役者志望でもなく、手違いで東宝ニューフェイスの面接を受けさせられた。そのとき面接官に対して「面白くもないのに笑えませんよ」などと答えて不合格になりそうだったところを、たまたま黒澤明監督がマッタをかけて合格(補欠?)した。

そんな役者生活のスタートから世界の三船と呼ばれるまでになったのは、もちろん黒澤映画の影響絶大なわけだが、履歴書の写真を観た東宝社員が思わず役者志望と思ってそっちの箱に入れたに違いないのだ(単なるオレの妄想だけど coldsweats01)。それほど野性味あふれた男の顔なのだ。銭ゲバの風太郎とは違い、いい方のパラレルワールドへ進んだのが世界の三船なのだ。人生そのものが映画のような人だなぁ。

共演の京マチ子もデジタルリマスターで蘇った。どアップが多いのだが、流れる汗の粒が美しい。京マチ子の役どころは、異なる証言の再現映像みたいなもの(下世話な例えですんまそん...)。泣いたり笑ったり怒ったり、とにかくふり幅の大きい演技が求められる。それを完璧に演じてみせる京マチ子。大女優の貫禄充分だ。

●映画のリマスター化反対というトラウマ

そもそもすばらしい映画なので、リマスター化が正しい方向で行われて良かった。オレ自身は映像に手を入れることに結構懐疑的だった。それにはカサブランカのトラウマがある。

学生時代に芸術学の授業で「自分と芸術との関わりについて述べよ」というレポート課題が出た。そこでほとんどエッセイの感覚で「私のカサブランカ現象」という文章を書いた。レポート然としてないところが他の学生と違ったからか96点貰った(笑)。

そこではカサブランカに着色する試みを批判した。「モノクロ映画に色をつけるとはなんて無粋な...」という主張だ。そういう方向でのリマスター(とはいえないな。改変・改ざんか?)には百害あって一利なし。それは今でもそう思っている。

しかし「羅生門」の復元は、ノイズ除去であるとか画質や画像の安定化によって、「公開時と同様の美しい『羅生門』が今、鮮やかに甦る!」という方向性だった。このキャッチコピーに引っ張られている自分自身を若干感じつつも、こういう方向性は確かに正しい修復だと思ったわけ。ミケランジェロの壁画修復と同じ方向性みたいな(?)。

もし「羅生門」がカラーで復元!みたいな話だったら「ケッ!」て思ったことだろう。なにやってんだアホみたいな。しかしカラー化されたカサブランカが今日何の評価も得ていない現実が、映画のデジタルリマスター化を正しい方向に導いたとすれば、「私のカサブランカ現象」にも実験的価値を認めていいかなくらいには思っている。大人になったもん!

とはいえ油断禁物。21世紀の技術を用いたら、稚拙でないカラーライズも可能かもしれない。そういう試みが出てくるかもしれない。そういうことする人にひとつアドバイスするとしたら、誰の記憶にも残っていない作品を使うことだ。モノクロ映画のなかに三船敏郎のブラウンな瞳の色を感じることに意味があるのだ。それが“オレの羅生門”なのだ。

●余談

余談だけど、映画「羅生門」の原作は芥川龍之介の「羅生門」ではなくて「藪の中」だ。原作を読もうと「羅生門」の文庫本を買って来るとワケがわからないと思う。ま、教科書にも載ってる「羅生門」なので、逆に教科書で気に入って映画を観たら、それはそれでまたワケがわからないぞ。ブルーレイ版にはちゃんと原作:芥川龍之介「藪の中」よりと書かれていた。「羅生門」も「藪の中」も青空文庫で読める。ひとくちメモでしたー(笑)。

教科書ついでにもうひとつ余談。高校のときの国語の教科書に“芥川竜之介”と書かれていて激怒した思い出もある。当時のH先生に「名前を変えていいんですか!?」と質問した。その若い教師も「これはひどいなぁ」と共感。すぐに出版社に電話してくれたことだろう。いま“芥川竜之介”なんて書いてる教科書はないはずだ。オレのおかげだぞ(笑)。“芥川竜之介”もカサブランカのカラーライズに似たお寒い改変の見本だ!ま、オレも安倍首相を安部って書いてたけどさー

もひとつ。オレが母島で感じた「羅生門」なシチュエーションは原作のほうだ(笑)。だが視覚的には映画「羅生門」も入っている。こういうオーバーラップは断じて正しい(catface)。以上!

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