たけしへのラブ・レター『俺の彼』
最初にカミングアウトするが、『俺の彼』(徳間文庫)はホンモノのゲイの本、じゃない。ホンモノの芸人の本だ。俺とは島田洋七(B&B)、彼とはビートたけし(ツービート)。
いまや『佐賀のがばいばあちゃん』でしゃべる大作家となった島田洋七氏が、いまや世界の北野となったビートたけしとの友情を綴った、なんとも痛快でホロっと来る一冊だった。
このところ麻生と中川だの、小泉と麻生だの、気持ちの悪い人間関係ばかりでうんざりしていたので、書店で見つけて思わず購入。すぐに読み終えた。
駆け出し漫才師同士。横山やすし師匠の天才的“勘”によってめぐりあった二人。その直後、やすし師匠に千葉の食堂で置いてけぼりを食わされる。ポケットに500円しかない洋七と700円しかないたけし。あわせて1200円じゃタクシーにも乗れず、始発に乗れるまでトボトボ東京方面へ向けて歩き始める。
出会いからして映画のようじゃないか。その一年後には漫才ブームがはじまり、月に数千万円を稼ぐB&Bとツービートは時代の寵児となる。
ブームが去って取り残されていく思いの洋七。何も起こらない洋七の日常のなかで、常に時代の先を見て変化し大きな存在になっててゆくたけし。だがそんなたけしもフライデー事件やバイク事故を引き起こす。
ボクたちが見てきたワイドショーネタの裏側で、失われることのなかった友情を凝縮した一冊だ。そこには常に笑いがあり、お互いの期待に応えようとする意志がある。お笑い走れメロスつーか(笑)。
洋七がたけしに勝っている部分を発見。それは本のタイトルのつけ方だ。ロマンチストのたけしにはないキレがある。ホモでもゲイでもなく「俺の彼」といえる関係はいいな。
この本、たけしに黙って出版したとか。後日それを知って読んだたけし。電話口で「面白いじゃないか、バカヤロー!」と叫んだ。そのときのたけしの顔はどんなだっただろう。というより「俺の彼」ってタイトルを見た瞬間のうれしさはどれほどだっただろう。しゃべくりでは大言壮語の大嘘ハッタリ芸が得意な島田洋七だが、この本にはウソがない。たぶん()
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