google-site-verification=o_3FHJq5VZFg5z2av0CltyPU__BSpMstXTEV1P8dafg 太宰と清張の“点と線”: ひとくちメモ

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2009/02/28

太宰と清張の“点と線”

新潮文庫「松本清張の本」解説目録 生誕100年記念版太宰治と松本清張。日本文学史におけるこの二人の巨匠は作風も生い立ちもまったく異なり、その人生という“線”が私のなかで交わることはなかったのだが、今年2009年がこの二人の生誕100周年であるという“点”でいきなり交わり、「えぇーこの先生方は同い年だったのぉー」とまるで推理小説でも読んでいるかのごとき錯角を覚えたのであった。

定期購読してる月刊「FACTA」3月号の記事「太宰と清張『生誕百年』の喝采」で初めて知った。記事のなかにも、「実は同年生まれの同時代人であったといういささかおもいがけない『発見』によって、ブームに拍車がかかる。」とある。

なぜこの同時代人の作家の“点と線”が生誕100周年にまでなってようやく「発見」されたのか。生誕50周年でも60周年でも区切りの年はいくらでも作り出せたはずだ。それでも交わらなかったところが、二大巨匠の人生と深く関わっているからこそ、この生誕100周年の驚きがあるのかもしれない...。

●太宰治 1948年入水自殺にて没

多くの文学少年少女と違わず、私も太宰治には中学・高校時代にのめり込んだ。青空文庫でいくつもの作品が無料公開されている。つまりその作品が著作権フリーになっている。近代文学のなかの古典といってもいいだろう。

太宰治ファンに好きな作品ベスト10でも選ばせようものなら喧々諤々の大議論になる(笑)。教科書にも載っている「走れメロス」や斜陽族を生んだ「斜陽」、そして「人間失格」、それに「津軽」、はたまた「富嶽百景」「お伽草子」「ヴィヨンの妻」「パンドラの匣」などなど、挙げていけば止まらない。

いわゆる私小説の作家だ。第一回芥川賞候補になり、是が非でも取りたいと佐藤春夫に手紙を送り続けたり、落選したら選考者の川端康成を恨んだり...。その執着心と躁鬱かと思うような作品群のふり幅が、作家として生きる業(ゴウ)と才能をさらけ出しつつ、39歳で入水自殺。

個人的には「人間失格」を読んで驚愕し、そこからむさぼるように太宰作品を読み始めた。先に挙げたもの以外にも「二十世紀旗手」「正義と微笑」が大好きだった。

読書感想文が苦手だった私だが、高校時代に「斜陽」について4人の太宰治という視点で作文を書いて国語の先生に褒められた。このとき感想文というものもただ感想を書くんじゃなくて自分で創作していいんだと知ったのがいまに生きてると思う。

ちなみにこの先生は月の満ち欠けの図を出版社に投稿して古語辞典に採用されたりしてるオモロイ先生だった。辞典に載った自身の図を見せびらかして喜んでいたオッサンだから、私が褒めると伸びるタイプだと知ってたんだろう(笑)。太宰治もゼッタイ褒められたい願望の強いヤツだったに違いないのだ。

●松本清張 1950年『西郷札』にてデビュー

松本清張も多作な作家だ。ドラマ化や映画化される作品が後を絶たない現代の人気作家ともいえる。ただ太宰と異なり、中高生の頃読んだ記憶がない...。大人の読む小説というイメージだった。それでも山口百恵主演映画「霧の旗」などは観た記憶があるから、知らずに作品に触れていた面もある。

最初に読んだ長編は「落差」だったと思う。教育産業である教科書業界の利権や裏工作のすさまじさを描いた超長編だ。その後小説は読まなかったが、「砂の器」は加藤剛主演映画も中居正広主演ドラマもすばらしかった。

デビューしたときの松本清張は41歳。週刊朝日の「百万人の小説」で3等入選。44歳のとき「或る『小倉日記』伝」で太宰の逃した芥川賞を受賞した。そこからは「点と線」「ゼロの焦点」「日本の黒い霧」「わるいやつら」「黒皮の手帖」などなど聞いた事のあるタイトルが並ぶ。1992年肝臓がんで死去。82歳。

作品情報については全部「新潮文庫 松本清張の本 解説目録 松本成長生誕100年記念」という冊子を見て書いた。だって作品読んでないんだもん!この冊子はよく出来ててカタログ好きの私にピッタリだ。いまなら本屋のレジ横とかにおいてある。

その解説目録表2に松本清張『半生の記』からの引用があった。一部引用したい。「いわゆる私小説というのは私の体質には合わないのである。そういう素材は仮構の世界につくりかえる。(中略)それが小説の本道だという気がする。」これが太宰治を念頭においての言葉なのかどうか知らない。だって読んでないんだもん!遅ればせながら是非読みたい一冊だ。

ちなみに太宰も「わが半生を語る」という文章を残している。これも青空文庫で読める。見てもらえばわかるがみじかっ!そしてやっぱりネガティブ...。まぁ太宰は他の多くの作品で人生語りまくっているともいえるわけで、あらためて語らなくてもいいはずなのだ(仮構かもしれんが)。頼まれて書いたやっつけ仕事かも。知らないが。

●太宰と清張 交わらなかった線

太宰治が死んだ39歳のとき、同い年の松本清張はまだ作家として世に出ていなかった。太宰の死後約2年経って松本清張は脚光を浴びたのだ。だからこの二人の作家人生の“線”は交わることがなかった。

生誕50周年記念的行事も、既に没後10年以上経った太宰治にはあったかもしれないが、松本清張にとって50歳はまさに社会派推理小説ブームの渦中であり、生誕50周年なんて発想すらなかったことだろう。

とはいえ、遅咲きの松本清張が太宰治の活躍を知らなかったはずはない。清張がデビューするまでの40年間は太宰治の全生涯と重なっているのだ。しかも松本清張は朝日新聞の社員でもあった。太宰治といういわばお騒がせ流行小説家の書く私小説をどんな思いで見ていたのだろう。

貧困のなかで育った松本清張と金持ちコンプレックスを増幅させていった太宰治。この二人のまじわらない人生の“線”が生誕100年という“点”で結びついた今年。松本清張に少し肩入れして読んでみようと思う。太宰治少年だった私もそんな年になったのだ。

追記:読売オンラインに興味深い記事があったのでリンクしときます。

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