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2008.09.28

蓮實重彦氏、サッシャ・ギトリを語る

闘争のエチカプチ仙台旅行に行くと決めた後、せっかくだから早めに出かけて何か特別な体験が出来ないものかと調べたら、たまたませんだいメディアテークで日仏交流150周年記念「フランス映画の秘宝」をやっていた。しかも土曜の14:00からの「あなたの目になりたい」(サッシャ・ギトリ監督)では上映後に蓮實重彦氏(映画評論家、フランス文学者)の講演があるという。これだ!と思ってこの時間に間に合うように新幹線に乗ったのであった。

オレの学生時代にはポストモダンブームがあり(皆さん受験勉強で忙しかったので超一部でですが...)、村上龍や坂本龍一といういわばミーハーな入口から入って、柄谷行人や浅田彰、そして蓮實重彦らの著名人を知り、対談、鼎談、著作などをいわばファッションのように読んでいた。蓮實重彦と柄谷行人の対談「闘争のエチカ」(1988年河出書房新社)とか。大学の卒業旅行他でフランスを訪れたのも、その影響があったかもしれない。

蓮實重彦氏からの影響で覚えているのは、句点( 。のこと)を1度しか使わない文章、それも結構長い文書を読んだことだった。映画評論だったとおもうが、その映画について語るなんてどーでもいい頼まれ仕事だから文章で遊んでいるのかと思った。しかしその試み自体は面白いとも思ったので、オレもその後同人誌等でマネしたりした。オレの文章がやたら長く読みにくくなったのは蓮實重彦のせいかもしれないcoldsweats01

オレ、本当はもっとスパッスパッと歯切れのいい文章かけるんですよ。訓練してるから。このブログだって「ひとくちメモ」だもん。でも、書かない(笑)。

●映画は動いている

今回はフランス映画の歴史のなかから日本で上映されたことのない、しかし重要と思われる作品を蓮實重彦氏も選者となって選んでいるそうだ。生で話を聞いたのは今回がはじめて。さすが(?)元東大総長、話もうまい。

講演は「映画は動いている」という話から始まった。映画は動画だって話じゃないよ(それフツー!)。映画は製作者の意識をはるかに超えて、世界中で上映され、ときに思いもよらなかった土地で貴重なフィルムが発掘されたり、日本人もほとんど見ていない、しかしキラリと光る表現がされていたりする日本のB級活劇が海外で上映され好評だったりするって話。

そういう意味で逆に「動かなかった映画」というのも存在する。人気俳優の映画だったり、国内で圧倒的な人気だったりしても、時代背景やさまざまな運命の糸が絡み合い、他国で上映されなかった映画(動かなかった映画)というものがあると。サッシャ・ギトリ監督の映画も、いわばそういう動かなかった映画のひとつだというお話です。もう、この時点で興味深々っすよ(笑)。

●サッシャ・ギトリ監督とは

なかでも「あなたの目になりたい」(1943年)の監督サッシャ・ギトリについては、本国フランスですら戦後忘れられた(あるいはあえて無視された)存在だったそうです。30本程度の作品があるが、日本で公開されたのは2本だけ。また、フランスでは1993年にレトロスペクティブというカタチで再評価上映されたそうですが、1957年に没した後、1993年までは忘れられた監督だったということでした。

映画の文法イマジナリーラインを超えた表現1930年代のギトリは、ブールヴァルと呼ばれる芝居小屋(古典の悲喜劇ではない現代劇をやる小屋)の寵児ともてはやされたそうです。それでも日仏で忘れられた映画監督だったのはなぜか。まず演劇人だと思われていた。「舞台の人」というイメージが強かった。また、ギトリの秀でた社交性がアダになった。第二次世界大戦時の親独政権であったヴィシー政権(1940-1944)下でドイツ司令部を遠ざけず、その社交性ゆえに戦後フランス開放時にはドイツ協力者と見られた。

そういう歴史的な背景のなかで忘れ去られていったギトリだったが、映像作家として見逃せない資質を再評価しようという流れのなかに、今回のギトリ作品上映が位置づけられていそうだ。

とくに蓮實重彦氏の話で興味深かったのは、映画の教科書を逸脱するカット割の話。右に四コマまんが風に描いてみた。言い争う男女を交互に撮影する場合、通常の映画文法であれば、一方(この絵の場合は男)が画面右側から左向きにしゃべれば、それを受けるもう一方(同、女)は画面左側から右向きに撮る。そうやって交互に撮ることで、交互に会話しているように見えるわけだ。これが教科書的な撮り方。

ところが、ギトリは両方を画面右側から左向きに、右→右→右→右といった撮り方をすることがあった。それが不思議な(奇妙な)雰囲気を醸し出す。こういう撮り方をした映画監督は、蓮實重彦氏によれば、小津安二郎、ジョン・フォード、そしてサッシャ・ギトリの3人だけだという。そういう意味でもギトリの映像感覚は特筆すべきということなのだろう。

晩年のギトリの姿は、ジャン=リュック・ゴダールの「映画史」の中に写真が残っている。映画界から忘れ去られたかつての人気者の晩年の悲しさみたいなものがにじみ出ていた。

●あなたの目になりたい

上映されたギトリの「あなたの目になりたい」は、なかなかの佳作だった。ラブコメではないのだが、会話も洒脱で軽快なテンポ。しかし戦時下の作品であることが随所に現れていた。蓮實重彦氏も講演で採り上げて語っていた懐中電灯で足元を照らしながら歩く男女の表現は秀逸だった。幻想的な光と影の表現に戦時下のフランスという時代背景をも表現して魅せた。

主演はギトリ夫妻が演じている。彫刻家とモデルの娘との愛の物語だ。彫刻家は徐々に視力を失っていく。それを隠しつつ愛するがゆえにモデルを自分から遠ざけようとウソをつく。女は傷つき彫刻家のもとを去っていくが...という切ない物語である。

まったく蛇足だが、盲目の彫刻家とモデルの娘という設定から、こともあろうに増村保造監督の「盲獣」という映画を連想してしまった。こっちは盲目の彫刻家がモデルを監禁して倒錯した世界に突き進む、このオレですら見終わって吐き気を催した気分の悪い映画だ(だが怖いもの見たさに駆られる)。緑魔子ファンは必見!増村保造は1952年にイタリアへ映画留学しているが、ギトリ監督のフランス映画作品を見ていただろうか?

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