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2008.08.01

旅本『地球を抱いて眠る』

小笠原諸島からの帰りのおがさわら丸は、同じ25時間半とはいえ、行きのときと気分が違う。帰らなければならないと思うと、その25時間半が長く感じてしまう。

もちろん旅の思い出や知り合った人たちとのおしゃべりなど、復路ならではの時間の使い方もある。宿で出会った磯釣りの達人の男性(2航海くらい)は、小笠原で毎日釣り三昧、日本中に磯釣りしに行っている。帰りの2等船室でも隣同士になったので、いろいろとおもしろい話が聞けた。また旅の達人的な人もいて、沖縄で知り合った友人が今度は小笠原でバイトしてると聞きつけ小笠原にやってきた(3航海くらい)という20代くらいの女性とも話した。

だが、オレは明石家さんまじゃないので(笑)、25時間半はしゃべりつづけられない。録音してきた波の音のSDカードをZENに挿して聴いたりもした。寝る前にはいいが、帰りは起きてからも長く、そういう中途半端な時間を埋めるにはやはり読書が一番しっくりくる。読書にも酔い止めは欠かせない

駒沢敏器さんの著書『地球を抱いて眠る』(小学館文庫)は、母島の旅の帰りにうってつけの旅本だった。著者の駒沢敏器さんは、かつてSt.GIGA(セント・ギガ)という一風変わったラジオ局でスタッフだったことがある。

セント・ギガと聴いて、懐かしさにトリップしてしまいそうな人がたくさんいるように思う。日の出日の入りでタイムテーブルが決まり、その時間帯に合った自然音などを流していた。銀河鉄道のようなラジオ・ステーションだった。

そこでの駒沢さんの仕事は「放送に詩のような文章を添える」ことだったそうだ。セント・ギガで言葉を聴いた記憶がない。いま駒沢敏器さんの文章を読んでみて、当時その詩のような文章を聞いてみたかったと思った。

旅の情景を感性と論理との絶妙のバランスで捉え、伝えるべき出来事のチョイスが大変心地いい。ボクの好きな雑誌の編集者だったこともある駒沢さんならではの選択眼は、ボクの感性ともシンクロするかのようだ。

特に今回は自然音の録音というメインテーマでの母島だった。それだけにこの本の「屋久島の森に風鈴」の章は興味深かった。そこでの録音スタッフは「音の視点から自然を視る」と呼ばれる動き方をして、カメラマンならまず行かないような場所を選んでは自然の音をチェックする。その気持ち、わかるー(笑)。

音の視点から自然を視ると、地球がまったく違った性格を見せてくれる。ボクは以前、ラーメンマップというフィルターを通して和歌山を見ると、まったく新しい魅力が見えてくることを書いたことがあるが(笑)、世界はさまざまな意識のレイヤーによって、これほどまでに違うのだと知ることが旅をより楽しくしてくれる。ラーメンでも自然音でもなんでもいい。ひとり旅の場合、視点がマニアックなほどにオリジナルなのがいいと思う。

『地球を抱いて眠る』は読む時と場所を選びそうな本だ。旅本にはそういう本が多い。旅の途中に読んでこそシンクロできたりする。通勤電車で読めないかも(^_^;)。気分が乗らないからもったいない。

また、最初のエピソードが自分自身へのインナートリップという特殊な(スピリチュアルな)内容なので、ここで引いちゃうと先が読めないかもしれない。ボク自身はスピリチュアル系のヒトじゃないのでちょっときつかった。しかし、25時間半のおがさわら丸復路という特殊な状況(笑)のなかだったので読み進めた。その後のエピソードは旅本として気持ちよく読める内容だったし、文章がほんとに心地いいので駒沢ファンになった。「禅とオートバイ修理技術」が出てくるエピソードもあって、うれしかった。

駒沢敏器さんの著書では『語るに足る、ささやかな人生』(小学館文庫)も読み始めている。こちらはアメリカのスモールタウンばかりを旅した本で、駒沢文体が本当にいい。こっちは通勤電車でも読めそうだ(笑)。

ネットで読める文章もあった。草思社がやっているWeb草思で「58号線の裏へ」だ。第10回からのココイチのエピソードが良かった。ココイチがブンガクになった瞬間に遭遇できる。こんな風に旅を文章に出来たら楽しいだろうな。

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Comments

自宅に戻ってアクセスログを見たら、今日の午後からいきなりこの記事へのアクセスが急増していた。新作でも出たのかなと検索して愕然とした。

駒沢敏器さん死亡。それも母親による殺害らしい。そんな死に方あるかよ!勘弁してくれよ...。

駒沢敏器さんの文章をもっともっと読みたかった。世に出たほんの少しの文章だけを残して逝ってしまった。悔しい。

Posted by: ポップンポール | 2012.03.09 at 22:20

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