南硫黄島シンポジウム聴講記
昨日購入したソックスとシューズに慣れるため、今日は一日ジャングルで試し履き。ま、ジャングルといってもアスファルト・ジャングル新宿ですが(笑)。
本日、新宿の東京都庁・都民ホール(都議会議事堂)で「南硫黄島自然環境調査報告公開シンポジウム」が開かれたので、それを聴講に行ってきました。パンフの画像に写っている島が南硫黄島(無人島)です。画像をクリックしていただくと、公式サイトにリンクしてますが、この南硫黄島の写真がめっちゃカッコイイっす!これも東京都の一部なんですよねぇ。
南硫黄島の特殊性は際立っていて、漂流者以外に人が定住した記録が残っていません。というか、人が住める場所がほとんどないそうです。砂浜とか平地がなく、海>岩>絶壁という感じ。
シンポジウムでは、そんな厳しい自然環境へ敢然と挑んだ調査隊の皆さんご本人からお話が聞けました。植物(植物相、植生)、動物(哺乳類、鳥類。陸産貝類、昆虫、爬虫類、海洋生物)、地質の専門家の皆さんに加え、ルート工作(山岳)、海洋調査、映像班の皆さんも参加され、映像・写真をふんだんに使って、南硫黄島の貴重な資料をわかりやすく面白おかしく(笑)、説明してくださいましたよー。25年ぶりの調査隊ということで、みなさんハイテンション!
それにしても聞けば聞くほど、ものすごい島です。調査っていっても、ほとんど探検隊ですよ。上陸からして船はつけられないから、ウエットスーツに着替えて生活物資を泳いで荷揚げしたり。ウツボがうようよいる海岸スレスレの岩肌でテント生活とか。さすがに就寝用に重い簡易ベットを持っていかれたそうです。重量制限の厳しいルールもあるなか、何を持って行き何を残していくか、そういうところにも気を使うのが探検なんですねぇ。
断崖絶壁をザイルとユマールで昇っていく山の素人たち。皆さん学者であって登山未経験者ばかりです(もちろんルート工作担当の山のプロもついてます)。登山訓練もやられていたそうですが、いきなりこの断崖絶壁ってのはすごい。ザックの重さも20kgだそうです。大きな怪我がなくて良かったです。コウモリにかまれたりウツボに襲われそうになったりハエの大群に辟易されたりはしたようですが。でもコウモリにかまれた鈴木副隊長の映像は噛まれながらうれしそうでした ^_^;)
また外来種を自ら持ち込むわけには行かないため、徹底的な検疫を行われていました。皆さん日常的にフィールドワークをされている学者さんなので、例えばカメラのカヴァの裏側に種子がちょこっとくっついていたりします。そしたらそのカヴァは持ち込み禁止(買い替え)になったり。
帰りも大変です。今度は採取した標本などから予期せぬ生物を持ち出さないよう、すべて冷凍したりして。夜間の自動撮影装置の内部にミナミトリシマヤモリが潜んでいた写真もありました。もし冷凍処理をして持ち物チェックしてなければ、一匹の密航ヤモリのせいで外来種対策の努力が水の泡になる可能性もあったわけです。自然を守りながらの調査というのは並大抵のことじゃないですなぁ。
しかし南硫黄島は人が行かなくても、外来種の脅威にはさらされています。50km隣の硫黄島はほとんどが外来種に制圧されている島だそうです。そこから鳥や風その他によって外来種がやってきて、いつ南硫黄島の生態系に悪影響を与えるかわかりません。ひとつの生態系を守るというのは個体だけでなくまさに自然環境全体の問題であるということなんですねぇ。しかし外来種が生態系の一部と化してしまう場合もあり、なかなか難しい問題です。
小笠原はいま世界自然遺産の認定を受けようとしており(2007年1月29日ユネスコに通知)、この調査もそういう流れのなかに位置づけられます。今回いくつかの新発見や前回調査との違いなども明らかになりましたが、今後も定期的な調査・観察、また別ルートでの新発見(今回は25年前とほぼ同ルートでの山頂トライでした)なども期待したいと思います。
追記)-----
そうそう、このシンポジウムでスクリーンに映し出された映像は、8月にBShiで「大自然ロマン」3部作のひとつとして放送される予定だそうです。まだ細かい日程等はわかりません。7月下旬に要チェックです!
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