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2008.04.02

ピンボケの思い出

昭和テレビ風雲録昔からテレビを読むのが好きでした。テレビジョン黎明期の現場を読むのが。テレビで放映される作品そのものももちろん好きですが、一番好きなのは実はその作品を作っている現場の空気感を見聞することだったりするわけです。

これまで読んだテレビ制作系書籍の主なものは、2004年に「テレビ放送50年記念ザッピング・ブックレビュー」と題して紹介したことがありました。もう4年も前なのかー。

で、今回久々に紹介したくなったのが秋場たけお著「昭和テレビ風雲録」(扶桑社刊)です。サブタイトルは「わがままカメラマンが行く!!」となってまして、この書籍はフジテレビでテレビカメラマンをされていた秋場氏の著作なのです。

テレビカメラマンの手によるテレビ制作現場のお話ってあまり読んだことがなかったです。でも、テレビはカメラなくしてはボクたちとつながれないわけで、その視点は視聴者と現場をつなぐ接点であり、大変面白く読みました。

とくにテレビ黄金時代の制作や技術スタッフどうしでの思い出話はまさに現場!ボクの嗜好にピッタリです。また著名人も、先日お亡くなりになった市川崑監督を筆頭に、石坂浩二さんやすぎやまこういちさんなどテレビ黎明期を語る上での常連さんほか、武田鉄矢さん、谷村新司さん、浅野ゆう子さんらと秋場さんとのトークは、カメラマンと役者の関係などがわかり貴重でございます。

秋場たけおさんってテレビカメラ業界のボブ・ディランだと思うんですよ。

ボブ・ディランってあのしゃがれた声がカッコいいわけですけれど、ボブ・ディランが市民権を得るまではプロの歌声は美しくなければダメでした(もちろんそれ以前からブルース・シンガーはいたわけですが)。日本にボブ・ディランの歌声が入ってきた頃、陽水だったか拓郎だったかが、「あんな声で歌っていいんだ」と開眼したそうです。

このディランのしゃがれ声をテレビカメラに置き換えれば、それは「ピンボケ」といえるのではないでしょうか。秋場たけおさんがCXの長寿音楽番組「夜のヒットスタジオ」でまさに“創作”したカメラワークのひとつ、ピンボケ画像は革命的だったというわけです(それだけじゃなく3台のコンビネーション他いくつもあるわけですが)。

ボクも夜ヒットにおけるピンボケ画像はよく覚えています。もちろんリアルタイムでは、その映像が秋場さんの創作だと意識して観ていたわけじゃないですが。イントロの演奏が始まってタイトルテロップが入って歌が始まる。その何小節かがピンボケ画像になっていて、歌の出だしでピントが合うという画面。覚えている方も多いのではないでしょうか。

あのピンボケは秋場たけおマジックだったのかーって思って。当時TBSであそこまでピンボケだと放送事故と言われかねないくらいのボヤけ加減。後発だったフジテレビだからこそ出来たとか。そして動き回るカメラワークは、当時他のテレビ局からも毎回見学者が訪れていたそうです。

そんな“動”の「夜のヒットスタジオ」を撮った翌日は、“静”の「ミュージックフェア」の現場です。こちらも長寿ですが、こちらは打って変わってギミックを使わない音楽の映像化にとことんこだわってます。美術担当はエッセイストとしてもおなじみの妹尾河童さん!フジテレビの社員だったなんてまったく知らなかったです(笑)。

ミュージックフェアは音と光(照明)の芸術ともいえる番組作りで、こちらもテレビの撮り方の金字塔です。この本には、「テレビにはテレビの撮り方がある」ということをテレビ黎明期に考え、実践し続けた著者の意気込みが感じられます。

著者の撮ったドラマや番組をいま見ることはなかなか難しいですけれど、市川崑監督と組んでハイビジョン試験放送で流されたという「その木戸を通って」とか、ライバルの日本テレビ開局三十周年スペシャル「幕末青春グラフィティ 坂本竜馬」とか、時代的にも70年代ブームのいま復刻したい杉田成道監督ドラマ「1970 ぼくたちの青春」などなど、ぜひDVDやCATVで観てみたいと思ってしまいます。

ボクが子どもの頃、フジテレビの番組は山口県ではほとんど見れませんでした...。TYS(TBS系列)がスポット買いしてた夜ヒットやひょうきん族などだけ。だから余計に観たくなってしまうのかも知れません。

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