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2008.04.28

GW 二人の巨人を読む

いよいよゴールデンウィーク。とりたててどこか行楽地へ行く予定もなく、読書中心の連休にしたいと思う。すでに読みたい本は購入済みだ。キーワードは現代の巨人。たまたま偶然“巨人”つながりだったわけでネライじゃないが、切り口として“巨人”は大変面白い。

まず、名前が巨人の大西巨人著『深淵』(上・下巻 光文社文庫)だ。すでに読み始めているが、大げさでなく私の日本語への意識が変わった。小説の言語として、かつてない精巧な言葉。小説の精巧さという点では中上健次を思い起こすけれど、その難解さとはまったく違う大西巨人文体の描写力。ぐいぐい引き込まれていく。

大西巨人さんといえば、日本文学の金字塔といわれる『人間喜劇』が代表作。私は漫画で読んだ。「人間喜劇」を漫画化しようという試みそのものにものすごいエネルギーを感じて。

『深淵』はインターネット小説として書かれた。それが完結して単行本化され、すでに文庫化されている。文章には若干手が加えられているそうで、オリジナルが読みたい場合はネットで読める。大西巨人さんの映像も見ることができる。そこでの語りはとつとつとしているけれど、丁寧に言葉を発する大西巨人さんの映像は凛としていた。「本」を「活字の本」と言い換えるあたり、まさに大西巨人体だ。

もうひとりの巨人は、宮本常一氏だ。厳密には宮本氏について書かれた『旅する巨人宮本常一 にっぽんの記憶』(みずのわ出版)を読もうと買ってきた。

恥ずかしながら、同郷山口県出身の巨人・宮本常一についてまったく知らなかった。民俗学というと南方熊楠や柳田國男がすぐに思い浮かぶ。だがそういったメジャーな(マクロな)民俗学でなく、もっと現場主義的なミクロな民俗学ともいうべき宮本常一にこそ、私はもっと早く出会うべきであった。

周防大島というと、昨日の自民・民主激突補選で民主党が2万票の差をつけて大勝した山口二区だ。高齢者の多い島だ。数年前に家族で民宿に泊まりに行った。宮本常一氏はこの島の出身で、距離にして地球を4周半できるほどのフィールドワークで日本の漁村を中心に記録し続けた。

一躍注目を浴びたのは大宅賞を獲った佐野眞一著「旅する巨人」によって、その生き方や仕事のすばらしさが描かれてからだと思う。そしてスローライフが浸透してきている現代、宮本常一の仕事が再評価され始めているようだ。

なにせ私自身に何の予備知識もなかったもので、紹介するのも気が引けるわけだけど。どうして買ったのかといえば、たまたま東急ハンズ新宿店でバイノーラルマイク・イヤホンを購入して、隣の紀伊國屋書店に立ち寄った。バイノーラル録音からの連想で、波打ち際のイメージが浮かび、なんとなく民俗学の棚あたりへ。

気分はフィールドワークだったのだ。その前にジル・ドゥルーズの『無人島』に強烈に惹かれつつ、似てるけどぜんぜん主旨が違う本だな...とか思いながら、そういう現代思想系の棚を通って民俗学へ。そこで「旅する巨人宮本常一」という言葉が私の気分とシンクロしちゃったわけ。で、出身が周防大島だとわかり、俄然興味が出てきたのだった。

同時に『宮本常一のメッセージ』(みずのわ出版)をガイド役に購入し、こちらから読み始めた。外堀を埋めてから最終的に宮本常一さんの著作へたどり着きたいと思っている。

二人の巨人に共通点があるとするならば、それは教科書に載らない巨人かもしれない。メジャーな学問への入門の入門として学校教育がある。しかしその外にはもっと広い知的世界が広がっている。私はそういう外の世界を常に志向してきたし、そこにこそ本音の学問があるように思うから。市井(しせい)という言葉が好きだ。

進化論はダーウィンじゃなく今西錦司こそ読むべきだし、歴史は物部氏から始めたいし、サンダカン八番娼館のおさきさんや沖縄の人々を通してのオーラルヒストリーを重視したいし、哲学ならヴィトゲンシュタインだし、子どもの頃からとにかく学校教育がなぜか取り込まない(取り込めない)知的な周縁(エッジ)にこそ、自分自身の立ち位置、住処があるように思っていた。

山口県で学んできたのだから、そのなかで宮本常一という名を多少なりとも記憶していてもよさそうなものだ。しかし学校で一度も聞いた記憶が無い。

まぁそれでもこうして遅まきながら出会えたことに感謝しつつ、昭和大好きっ子がたどり着いた昭和の原点ともいうべき宮本民俗学への入り口。今年のゴールデンウィークは宮本常一とバイノーラルマイクを持ってフィールドに出よう!

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