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2008.01.19

旅の重さ

テレ東「たけしの誰でもピカソ」がフォーク特集だった。南こうせつが拓郎の「今日までそして明日から」を歌った。この曲を聴くといつもこの曲が主題歌だった映画「旅の重さ」の風景を思い出す。それほどに印象的な映画だった。

映画「旅の重さ」をDVD化して欲しいと松竹に依頼メールを送りつつ、松竹から通販でVHS(コピーガード付)を購入して何とか見ていたのだが、昨日の歌を聞いて「まだDVDになってないのかな?」とアマゾンを検索したらあった!即効で注文(お急ぎ便で)。

映画館では観ていない。子どもだったし地元で上映されたのかも知らない。いつだったか、深夜テレビでやっていたのを観て、その淡々としたロードムーヴィーに惹かれた。もちろんよしだたくろうの曲があまりにマッチしていて、音楽と四国の風景とデビュー当時の高橋洋子のみずみずしさは、映画というものの普遍的な力に満ちていた。

日本映画らしいウエットさも、いまとなっては独特の雰囲気がある。なんていうのか、21世紀、MOOGシンセに感じる暖かさという感じ(わかりにくっ!)。初めて出会った当時はセンセーショナルだったけど、古典となってからも古びず、また違った位相をも味方につけ、さらに深く情感豊かに聞こえる(鑑賞できる)、まるで倍音が増幅されていく音楽のような作品だ。

違った位相とは、例えばよしだたくろうの現在であり、四国お遍路の現代性であり、'70年代(昭和な)日本映画の再評価の流れであり、政治経済で疲弊し低迷する日本人が精神性へ向かう現在であり...。

上昇・バブルの15年、その後凋落の15年、30年という時代を歩んできたこれらの持つ個々のイメージと、そこから何かを感受するこちら側の個々の意識の変化によって、この映画のエクリチュール(イメージとシンボルとの分かちがたくかつ並列的な概念系)も21世紀的になってきている。それは懐古趣味ではなく、新たな読み方を提示し続けているこの映画の力なのだ(ってオレだけ?)。

「今日までそして明日から」という曲そして詞のエクリチュールとの関係性の変遷もまた、というよりこれこそが、私にとって「旅の重さ」の持つ魅力をいっそう強くさせてきた。昨年のつま恋、その前の復帰コンサート、どちらも「今日までそして明日から」が大変印象的な位置づけだった。その原点・背景に「旅の重さ」のような淡々としたロードムーヴィーがあることは重要だ。

昨日の番組でこうせつが「こういう歌を歌っていいんだと思った」と言っていたのは貴重な証言だ。この曲が発表されたとき、「何も語っていない」「こんなのは歌詞じゃない」などといった批判が(専門家筋に)多かったと伝え聞く。それがいまやこの詞に普遍的な価値を見出すと同時に時代性をも(どの時代においても)感じ取ることが出来る。似たようなアプローチで消費されるだけの音楽も多過ぎる昨今とも思うが、それをも肯定したくなる。音楽に謙虚になる。

専門家に薄っぺらい歌と思われた作品が、30年後にひとつの普遍性を持ちえたこと、そして吉田拓郎の音楽が継続して魅力を増してきたこと、これは音楽と個人とのかかわりにおいて幸せな関係だった。この30年は本当に音楽の博覧会だった。それらがスパイラルに作用して、新しい作品に編集(脱構築)されていく。

映画は強烈な固定的イメージに縛られる総合芸術だ。昨今デートムーヴィーとよばれるお安い恋愛映画などの陳腐化は一見早そうに思える。しかし、そんななかにもしかするととんでもなく普遍的な作品がないとも限らない。「旅の重さ」はデートムーヴィーではないが。ある意味当時のアイドル映画といえるのかもしれない。

昔のアイドル映画は、こういう書き方をすると薄っぺらく偏見の塊のようだが(笑)、美少女がちょっと悪いことを体験しつつ成長するみたいな、まぁそういう映画だ。悪(というか不良少女チックな行為)との接近が不可欠!いま“愛”との接近が不可欠なアイドル映画と構造は似ている。だからこそ、普遍的な愛が30年後にも残るいまの日本映画が出てくるかもしれないという期待も当然あるのだ。

「旅の重さ」がDVD化されたいま、次に熱望し渇望しているのは原田美枝子「恋は緑の風の中」だ。東宝なのでどのように働きかければいいのかわからんが、日本の大女優デビュー特集DVDシリーズとか、なにか企画してぜひ出して欲しい。必ず買う!そして劇中歌♪スーパーマンの子ども、子ども、子ども...、ってポッドキャストで歌ってやる(うそ)。

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Comments

はじめまして。
「旅の重さ」で検索して遊びにきました。

ワタシもレンタル屋さんで見つけたので、即見ました。
拓郎世代なので、一度は見たいと思っていた作品ですが
効果的に流れる「今日までそして明日から」には
泣けてきそうなくらいの感動でした。

「愛してる」とか「大好き!」としか言わない今の若者映画とは違い
じれったさとか重さがあるのですが、これこそが本質かなと。
わかるかなぁ・・・。おっさんにはこの感覚がたまらないですね。

Posted by: 伝説のTAKA | 2008.01.20 at 00:51

伝説のTAKAさん、いらっしゃいませ。私も伝説のTAKAさんの「旅の重さ」記事を読ませていただきましたよー。

同じ1/19に書かれていて、こんな偶然もあるんだなぁと思いました。30年以上も前の映画なのにねぇ。ネット検索ってすごい偶然の出会いを演出してくれますね。おでかけメモコーナーにリンク張らせていただきました!

四国の田園風景と拓郎の歌と白装束のお遍路少女との調和は本当にみごとでしたね。何年か置きに観るとまた違った感動があるかもしれないですね。

吉田拓郎といえばドラマ「俺たちの勲章」の曲もみごとでした。旅の重さと同じ70年代を色濃く映し出した傑作でしたが、ジリジリと焼けるような暑さとあの時代の青春の熱さとじれったさが拓郎の曲でいっそう輝きを増してます。

70年代って、いい時代だなぁ...。日本もまだ若かったんでしょうね。

と書いている合間にアマゾンからDVDが届きました!すぐ観よう!

Posted by: ポップンポール | 2008.01.20 at 17:11

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