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2007.05.22

戦後のドサクサを読む

ときどき、脳みその違うところを使いたくなる。気分転換に身体を動かすような感じで、頭にもたまに違った刺激が必要だ。

ただまったく興味がない書物は読んでも面白くない。だから常日頃からいくつものキーワードを頭の中にリストアップしておいて、書店をブラつく。それらのキーワードは個々に独立しているが、フッと書物に出会うことで、有機的につながっていく感覚が芽生えたら、その書物は買いだ。

この「闇市の帝王」もそんな書物のひとつだった。戦後、闇市、ノンフィクション、豪傑、極道、そんなキーワードが最近のトレンドだった。「1976年のアントニオ猪木」にも同じ匂いを感じた。

もともと戦後のドサクサとかカオスが好きだ。なんの指針もないごった煮のような世の中を、ドサクサにまぎれてのし上がっていくというサクセスストーリに昔から惹かれる。

だから例えば映画「人間の証明」での岡田茉莉子のような生き方、その方法論がどうであれ人間として魅力を感じる。おそらく何にもない戦後の焼け跡をいくつもの知恵で生き抜いてきた日本人がたくさんいたんだろう。ボクらはその子孫だと思うと、その時代への興味は尽きない。

「闇市の帝王」と呼ばれた王長徳の場合、戦争に勝利した連合国民として日本に上陸した。その特権的地位をフルに活用して東京租界を作り上げる。自ビルの黄色合同会館の上から札びらをばら撒いたりする。そんな王が新橋に作った国際マーケットには夏目漱石の次男(伸六)が店を出していたりする。

戦後のドサクサにまぎれてやりたい放題に生きてきた王長徳。それは日本人からすれば、連合国民という特権によって、いわばインチキで伸してきた感があると思う。だが、この日本に上海のようなマーケットを作り上げようとしたバイタリティには痛快さすら感じる。

そしてそんな王のマーケットに集う戦後日本人の姿も、当事者インタビューによって活き活きと描かれている。読み終わると東京の地図が違ってみえる。いまでは何にもない平凡な場所、あるいは新橋の飲食街に、かつて東京租界に君臨した王長徳の姿を思いながら散歩するのも悪くないと思った。

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