路地裏の味 玄蔵@東十条
かつて秋葉原のはずれ、末広町の路地裏にひっそりと玄はあった。6、7人も座ればいっぱいになる狭い店内だったが、入口の外にはいつもその何倍ものラーメン通が行列を作っていた。
店主の田中氏は素材に徹底的にこだわり、休店日にはラーメン作りの研究を徹底的にする職人肌の人だったという(by石神本だったと思う)。ボクも埼玉からあしげく通った名店のひとつだった。そこで食べた玄麺のオリジナリティに感服したものだ。玄なら安心して女の子も連れて行けた(笑)。ホンモノの味だった。
そのうち、そんな玄で修行したらしい弟子による姉妹店が続々と出現した。そして玄本店も路地裏を抜け出し、秋葉原から神田明神へ向かう途中の広い店舗に引っ越した。裏に駐車場もあり行きやすくなったと喜んだ。このとき食べたGEN21も最高に美味しかった。
姉妹店にもいくつか行った。秋葉原の地下にあった鳴り物入りの某店にも...。そのたびに違和感を感じた。これが玄の弟子の味なのか?本店とは別物だな。そんな思いが常に残った。新橋にあった玄玄だけが玄らしさを感じた唯一の店だった。
当時田中さんも巷ではプロデューサと呼ばれるようになり、店舗で見ることが少なくなった。広くなった本店の末期にはアジア諸国から働きに来ている日本語の通じにくい店員だけがいた。最初は本格アジアンなラーメンが出てくるのかと淡い期待もしたが、奇跡が訪れるわけもなく、それは単なる安い労働力でしかなかった。味がすべてを語っていた。
徹底して素材にこだわる玄のラーメン。それがそんなに拡大できるものだろうかとも思ったものだ。なんだか系列店が拡大するごとに玄の評判を落としているのではないかという懸念を持っていた。ある日その懸念は現実のものとなり、本店の玄がなくなったことを知った。
そのとき脳裏には末広町の路地裏の映像が思い浮かんだ。もうあの頃の玄はなくなってしまったのだ。
路地裏から表舞台へ。誰もがそんなサクセス・ストーリーを夢見る。そして幸運にもその夢を実現したものだけが夢の続きを知ることになる。厳しい現実がそこから始まるのだ。本当の物語は夢の終わりから始まるのだ。
玄にどんな夢の続きがあったのかはわからない。裏切りやジレンマ、苦悩の連続だったかもしれない。だがその物語も東十条という東京の路地裏で、ハッピーエンドに向かって走り始めたようだ。そう思わせるに足るラーメンが東十条玄蔵の玄流白湯麺だった。
玄復活。この言葉をいったい何人の麺好きが待ちわびていたことだろう。そして玄麺の復活を心待ちにしている人がたくさんいるはずだ。玄は職人技の店であり、敏腕プロデューサの店じゃなかった。玄蔵もまたそうあって欲しい。私は玄蔵にこの言葉を送りたい。吾唯足知。ワレタダタルヲシル。
玄蔵のすばらしさはこちらのブログ彩のラーメン一期一会さんがよく伝えられていましたので、ご紹介まで。
それにしても東十条は熱いな!東十条と埼京線十条との間にめっちゃキレイなスタジオがあった。ずいぶん行ってなかったが当時の記憶も交えて東十条グルメを簡単にご紹介。ラーメンに関しては、北の燦燦斗、南の玄蔵。そして古参のマリオンの3名店。マリオンはチャーシューにぎりがうまい。にぎりだけテイクアウトしていく人もいる。
飲み屋系では燦燦斗のちょっと先にあるたぬきの串カツは安い(笑)。ぜひ牛筋ドテ焼きもやって欲しい。そのたぬきの角をマリオン方面に曲がると品宣という台湾料理の店があり、ここの黒豆料理も絶品。ずいぶん行ってないが綾瀬はるか似の娘さんは元気かな?そのちょっと先には激安特大トンカツが食える店もあった。逆方向では鯨料理が食える「つち活」も気のおけない美味しい店だ。
そしてお土産はやはりドラ焼き黒松だろう。このドラ焼きの皮は奇跡に近い。これもまさに職人の技、玄人の味だ。玄蔵で食った後にはぜひ買って帰りたい!ラーメン食った後って甘いものが食いたくなるんだよ。反ダイエットなあるあるネタだけどな!
玄蔵がある場所は、かつてもラーメン屋があった。某家系総本山の名前(バレバレ?)をパクッたような店だった。そんなまがいものの跡地にホンモノ中のホンモノ店がやってきたのは面白い。ひとくちメモでしたー。
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コメント
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玄蔵の田中さんは本物の職人。
ラーメン談義から食材の話しををしたら楽しい人です。
もちろん、彼の作るラーメンも美味しい♪
日経の「一個人」の塩ラーメンランキングでもベスト10にランキングされました!
東十条には、「燦燦斗」もありますね♪
ここも美味しい♪
わたしは、「らーめん」しか食べていませんけど、「つけめん」の評判が高いので、近いうちに行くつもりです!
それに「マリオン」!
ラーメンの老舗ですね。
「燦燦斗」か「玄蔵」に行ったとき…
いっしょに食してレポします♪
投稿: 彩☆彡 | 2007/02/03 21:41
彩☆彡さん、コメントありがとうございます!一個人の塩ラーメンランキングなんてあるんですねー。確かに作り手で変わりますもんねー。
マリオン連食宣言...。脱帽です!味はどちらともかぶらないので大丈夫ですね!チャーシューにぎりもぜひ食べてください。
投稿: ポップンポール | 2007/02/04 08:59
玄蔵が撤退した。さっきS氏から連絡があった。残念だ。結局、仕込が始まっていたという醤油味は幻のままとなってしまった。
田中さんのブログでは研究に没頭すると書かれていた。研究も必要だが、弟子を取っての拡大路線ではなく、職人田中氏だけのラーメンでいいのではないだろうか。玄蔵にしても開店当初から弟子らしき人々がたくさんいて、もうそういう路線はいらないように思った。
同じ菜麺でも弟子と田中氏とでは香りからして明らかに違う。そういう繊細すぎる食べ物だった。あまりに職人芸すぎる。だがそこが魅力だった。本当の芸術とはそういうものなのだ。ダ・ビンチの絵はダ・ビンチにしか描けないのだ。
もともと素材にこだわるということは原価に響く。原価率が高くてもやっていけるためには、拡大路線ではムリなのだ。いや最終的にはありえるけれども、そのタイミングが大変難しい。比喩的にしかいえないが、オプションでディープインザマネーの位置にいるようなポジションが必要になる。
玄には客単価の高いブランド力があった。しかしそれが拡大路線で一度壊れた。そこからの再起を賭けたチャレンジだったはず。小さい店でこだわりの味を研究し続けていた末広町の路地裏をもう一度、と願うのは酷だろうか...。
投稿: ポップンポール | 2007/04/08 13:41