ダイエーの新しいマーク
こういう話をすると、なにか風水でもやっているヤツなのかみたいに思われてイヤなので、普段はあまり話さない(笑)。でもデザイン論という捉え方も出来るので、書いてみたいと思った。もちろん風水とか迷信とは無関係だ。
ダイエーの旧マークと新マークとの違いで、もっとも違うのはデザインのパースペクティブだ。旧マークは円の下が欠けていた。こういうマークが心理的に与える「下降、下落、沈下、不安定、桶から水がこぼれる」などのマイナスイメージは、潜在意識に働きかけるという。
デザインは言葉ではないので、意匠を考える場合に論理で考えると失敗することが多いと思う。説明されて意味がわかる意匠は無意味なのだ。特にロゴマークなどのシンボルは、作り手の思いとはまったく異なる歩き方をする。それを意図的にズレさせてみたのがアンディ・ウォーホルだったわけだ。
新マークは新芽、蝶、ハートなどを思わせるデザインで上方に向かう。余談だがイトーヨーカドーのマークも鳥のイメージだった。下(地上)から上(空)に向かう感覚は、おそらく多くの人々にも高揚感や期待感をもたらす。逆に下に向いているイメージは企業ロゴとしてはあまり有益とはいえないと思う(下が安定しているロゴとは異なる)。
●デザインは現実へのレバレッジ
意匠の役割は現実ヘのレバレッジだと思っている。実体が伴えば意匠の力も大きくなる。実体がコケれば、旧ダイエー意匠のようなマイナスイメージも増幅される。それ以上でもそれ以下でもない。デザインというのは捉えどころが無いけれど、確実に人間の感覚に働きかける力を持っているとは思う。
企業デザイン、ロゴマークを作るときには考えすぎないほうがいいと思う。デザイナーは仕事なので考えるけれど、それは心理学テストのテスト方法を考えるのに似ている。被験者に与える課題と欲しい実験結果は異なるのだ。
ロゴマークを選ぶ側の企業は、いわば大衆の代表なので、できるだけ前向きな性格の社員とか心理学テストの被験者に向いている関係者を集めて直感で選ばせればいいのではないかと思う(検証できないけどね...)。その際、このマークに込められた思いだとかビジョンだとか、そういう事前のムダ知識は無用だ。
逆に会社が苦境に陥って、心機一転するときに旧ダイエー的なマイナスイメージのマークはやはりうまくない。今回のマークは、そういう意味ではそれなりに考えられたイメージだった。少なくとも直感的にマイナスイメージが浮かびにくい。
ただし意匠の良し悪しは言語化が難しいので、風水とか占いとかそういう商売も出てくるのだろうとも思う。私の話はそういう商売とは出来るだけ無関係だと主張したいけれども、人の意識は何者にも影響されるので、まったく無関係ともいえないツラさがある。だからあまり口に出していわないようにしている。
いま問題になっているマンション構造計算改ざん問題も、意匠(感覚的・数学的)をやる建築士の方が優遇され、構造(物理的)は下請け仕事になっているという。こういう業界構造はレバレッジが大きすぎる相場と同じで、いずれ破綻する。その日柄が今年だったというわけだ。
ついでに言っとくと、新生ダイエーのロゴマークはいいとしてスローガンはいかがなものか。スローガンってひとくちメモのネタも書いたことあったな。スローガンの内容云々じゃなく“スローガン”という言葉の持つイメージが、ものすごく古い(笑)。
「ごはんがおいしくなるスーパー」はいい。別に。ただこれを新しいスローガンだとわざわざ宣言する必要がない。これはキャッチコピーであって、内部的にスローガンだと位置づけるだけならまだしも、大衆にむけて「スローガンです」と言うのは旧態依然といった感じがする。
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