どこにもいそうな姉歯予備軍
姉歯氏は計算ずくかどうかわからないが、ここで初めて出てきて正解だったのかもしれないと思った。参考人招致ではなく、証人喚問で初めて語るというシチュエーションはテレビ的だったし、この悪の連鎖のなかで相対的な位置としてはプラスに働いたような気がする。目くそ鼻くそといえばそれまでだが...。
姉歯氏の証言には一面の真実があるように思われ、全国津々浦々(?)に、姉歯予備軍と呼べるような立場の人はたくさんいるのではないかと感じた。
確信犯というものは、常に立場の弱い者を徹底的に利用する。今回の場合は総研という組織に巣食う悪が、木村建設を利用し、木村建設が姉歯を利用し、利用された側にはなにかつけいる隙があったのだろう。
これは日本社会の原理ともいうべきいじめの構造であって、根は深い。今回、たまたま姉歯だったわけだが、姉歯がもし断ることができたなら、別の姉歯的人物が同じことをしたかもしれない。
悪は弱い人間を常に探しており見つけたら襲いかかってくる。変な宗教や強引な勧誘などなど、形を変えてあらゆるところにこういうリスクはあるだろう。
たまたま悪に見込まれた姉歯は「弱い自分」という言葉でそれを表現した。弱い自分、それはそのときの環境や立場によって誰のなかにもあるリスクだ。「他にも業者はある」という脅しに屈した姉歯だが、悪は姉歯なら出来ると見込んで脅すのであり、往々にして他にはいないのだ。
姉歯しかいなかったけれども、姉歯が突っぱねれば別の姉歯を捜してくる。矛盾していることを言うようだが、悪とはそういうものであり徹底している。モラルのないところに論理は通用しない。
断りきれずにおかしな道に踏み込む人は多い。当事者はそれをおかしいと感じられない。ある種マインドコントロールされている(あるいは自己暗示をかけている)。常に道をはずさない行動を取れる強い人間ばかりではない。
実は私も昔マルチ商法に引っかかりそうになった経験がある。彼らのやり方は非常にシステマチックであり、感情に左右されない(こちらは感情だけに動かされる)。今になって思えば得がたい体験をさせてもらったと思うが(>_<;)、あのままズルズル行っていたらと思うとゾッとする。
どうすれば、そういう誘惑から逃れられるのか。人それぞれだとは思うが、職業人としての立場、日常生活での立場、友人関係での立場、様々な場面で対応は異なるだろう。性格によっても,そのときの体調によってすらフッと迷い込んでしまうことがあるのだ。だから対処の方法はいつも違う。
今回の事件は、そんなとき自分ならどうしたかを考える機会にはなる。職業人としてのモラルハザードを失職のリスクと天秤にかけろと言われたときどうするか。難しい問題だ。だが今回の場合、私ならどうしただろうと考えて見た。
自分の仕事に自信なりプライドが持てるなら、他に持っていって実現した場合、その結果が法令違反になると認識できていたわけであり、それを「告発するぞ」という方向性で対抗したかもしれない。悪の連鎖からいったん外れて、連鎖の弱いところ(ボトルネック)を逆につくわけだ。
もちろんこれは、かっこつけて言っているだけなので、本当に直面したらどうなるかわからない。常に強い自分でいられるかどうかなんてわからない。ただ、こういう機会にちょっと考えておくと、直面したときにこんなこと考えてたなぁと思い出す可能性もあるし、自分自身のシミュレーションとして今回の証人喚問から想像を膨らませてみた。
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コメント
突然で恐縮ですがご招待です
「姉歯建築士/耐震強度偽装問題」の雑学クイズを作りました。
お近くへおいでの節は、どうぞ拙宅へもお立ち寄り下さい
→http://blog.q-q.jp/200512/article_78.html
(ご迷惑でしたら、お手数ですがコメント、TBの削除をお願いします)
投稿: 素町人@思案橋 | 2005/12/15 10:32