小説から遠く離れて
「電車男」が流行っているようですね。これを小説と呼ぶかどうかはともかく、文学(ブンガク)であることは間違いないと思います。近い将来、これを映画化する会社が出てくるかなぁ?これを面白い映画に出来たらスゴイんだけどな。
さて「電車男」からの連想で、2つ紹介したい本を思いつきました。小説から遠くて面白い小説。従来にないところから出てきた小説。ときにそういうものがポッと評価されたりして目にとまるとうれしくなってきます。精神構造が連想ゲーム野郎なので、まったく予想だにしなかった組み合わせとか、そういうのが好きなんです。
昔それを感じたのは「鉄塔武蔵野線」(新潮文庫)でした。この物語(?)が文学賞を取ったときには、ビックリしましたね。でもそれによって世間的にも知られ、いや絶賛され、映画化されました。昨年DVDにもなりました。鉄塔文学なんてことも言われ、とにかく淡々と、深層心理の部分ではダウンタウン松っちゃん的なノリ(「松風」とか)にも似たこのある種不条理とも見えるなかに、子どものころ誰もが持っていた感性と好奇心と行動力とを描き出し、感動もあるという、たしかに小説のひとつのカタチだったように思います。「無機物と絡むマシュー南」ファンに成長したボクにとっても、思い出深い作品です(笑)。
そしてもう一冊が、出たばかりの「ExcelVBAに恋をした!?」(技術評論社)です。ExcelVBAというのは、表計算ソフトExcelのマクロ記述用プログラム言語のことです。マクロというのは“人間の代わりにExcelの操作を自動実行してくれる”プログラムのことです。
赤文字で引用した部分は、この小説のなかからの引用なわけですけれど、この小説は新人ゆたかのマクロ奮闘記とサブタイトルがついている通り、マクロ素人のゆたか君が憧れの女性遥さんに気に入られようとExcelVBAの習得に努力する恋愛小説なのです!その過程でVBAの概念説明もストーリーに絡んでくるという、風変わりな小説です。これも映画にならないかな。Vシネならいけそうだけど。ExcelVBA講習DVDなのに物語仕立てで。
著者は、あの大村あつし氏。ボクのVBA師匠であり、日本一のブイビエスト、VBA伝道師なのです。まさか社長業をやめて小説を書いていたとは!しかも2年もの構想ののちに上梓されたとは。2日で読み終えましたよ。これを小説として読むか、マクロの初心者向け入門書と読むか、それは各人の自由です。ボクは自著宣伝本と読みましたが(笑)。揶揄しているわけではありません。ExcelVBA初心者が独学で学ぼうとしたら、大村あつしさんのかんプロシリーズを読むのが正解だと思います。でもちょっとしたマクロくらい作れるようになりたいけど敷居が高くてという人にはこの小説は超オススメです。かつて「クワガタと少年」という児童書を出された経験もあり、文才と論理性とプログラムスキルが熱意で連鎖している稀有な才能をお持ちです。
マクロを記述するために大村あつしかんプロシリーズに足りないものはありません。あるとすれば、それは読者の側の資質だけです。論理的な思考力と手順化というのはセンスが必要で、それは与えられるものではないからです。VBAの構造は日本語の論理的手順によく似ていて学びやすいので文章を書くように書けますが、散文ではなく説得力のある小論文のようなものです。小論文の書き方は完璧に教えてもらえます。でも題材の選び方、話の進め方は、各人様々です。それを身に着けるには、やはり国語力が大切です。また実務の手順化は文系的な想像力やユーザーへの思いやりが不可欠なのです。それがあって初めて活きたプログラムとなるのです。そういう資質をもったプログラマが増えて欲しいと切に願います。そういう願いも込めて、大村あつしという才能の大きさは計り知れないものがあると思ってます。大村氏だからこそ書けた小説であり、非常に珍しい書籍と言えるでしょう。
願わくは用語解説の最後の最後に、さりげなくひらがなとカタカナとのなぞなぞの答えもちょこっと載せる遊びが欲しかったな。ボクが編集者だったらくそマジメな文体で入れとく(^^;)。あと、デートをデータと誤植してるとこがあった。これは場面的にちょっと興ざめ。2刷があれば直したいとこだ。
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