中村裁判に思う
(2月7日追記)--------------
ココログで木村剛氏のブログがスタートした。その最初の記事が、中村裁判に触れられていて、私がちょっと前に書いた内容と通じる部分があったのでさっそくトラックバックしました。特殊な事例であるというのはその通りだと思います。それは2月2日に書いたとおり。
「相当な対価=貢献度50%」の根拠をどこに見つけるかは大変難しい。だから裁判になってるんでしょうけれども、しかし企業というものは一人の発明者だけでなく、営業の力とかその他諸々の総合力によって売上が上がるという話は、下記で述べた研究者の地位向上問題と中村裁判が別次元の問題なのと同じく、今回の例では別問題だと思います。
おそらく世代交代する前の社長のもとであればこのような裁判には到らなかったでしょうし、日亜化学の後進性ゆえに世紀の大発見ができたという意味であれば、確かに会社はこの発明に関与しているともいえます。しかしまったく事業としての自覚がなかったばかりか、特許出願すら会社に背くように行うしかなかった状態で、会社はいわば外圧によってやっと目を覚ませたようなもの。“スレイブ中村”の反乱があったからこそ、その価値に気づけたともいえるほど、企業としてワキが甘かった。その代償が200億円なら、破格に安いと私は思います。
この世界初だった高輝度青色LEDの価値を認める企業はいくらでもあり、当時の営業力云々という次元で語れる商材ではまったくなかったというのも、この中村裁判の特異性を際立たせている要素でもあると思います。もちろん議論のきっかけとして注目度バツグンの中村裁判なので、この話題からさまざまな問題が噴出し、技術立国日本の未来を明るくする方向へ向けて何らかの前進があれば、それが一番正しい中村裁判の味わい方だろうという思いはあります。
(以下、2月2日に書いた本文です)----------------
中村裁判とは高輝度青色LEDの発見者・中村修二氏と、中村氏が開発当時在席していた日亜化学との間での裁判のことです。裁判の詳細は「東京永和法律事務所 青色LED 中村修二 v. 日亜化学」あたりをご覧いただければと思います。
ちまたでは、「従業員の発明・発見とその対価」という部分に焦点が当たっております。高いか安いかみたいなものから、スーパー発明者に高額報酬を与えると、みんなが博打のような発明にばかり走り、基礎研究がおろそかになるといったご意見も経営者側からは出てきたりしております。
そういう議論が巻き起こること、それ自体もこの裁判を起した要因のひとつであるとの趣旨で中村さんも著書やインタビューで述べられたりしているので、その面でもこのたびの判決は、画期的ではありました。しかし、今回のケースはかなり特殊な背景と、中村氏の個人的な素養とがあったからこそ、このような裁判を起せたわけです。通常のインセンティブの話とは次元が違うような気がします(もちろんつながってはいると思います)。
高輝度青色LEDが20世紀中はまず発見されないであろうと言われた究極のものであったこと、日亜化学上層部の世代交代により業務命令違反を続けての生成マシンの発明およびその結果としての発見であったこと、その不遇さが中村氏側の著作から垣間見る限りかなりの精神的なダメージをこうむっていること、この発明・発見は外国の大学では最大限に認められており日本を脱出し移住することが出来たこと、そのような背景があって裁判に至っているわけです。
もしもの話をさせていただくなら、上記のどの条件一つがかけても結果は違ったものになったと思います。つまり大変特殊な事例であったと思います。もちろん日本におけるサラリーマン研究者の地位向上は問題にすべきでしょうし、この事件をきっかけに立ち上がろうという研究者や見直そうという経営者がいるかもしれないです。きっかけとしてはいいでしょうが、その議論は中村裁判とは切り離して考えるべき課題だろうと思います。技術立国日本の再生というマクロな問題にもつながるでしょう。そのとき、中村裁判という特殊なケースは参考にはならないのではないでしょうか。
中村裁判および中村修二氏は、その特殊性において非常に興味深い事例であり人物であろうと思っています。ボクはこういう人が大好きなのです。中村修二さんとは何者ぞ!?という方には、私のジオイ堂書店の中村修二・反骨堂の書籍を参考にしていただきたい所存でございます。こんなコーナー作るくらい興味深く、誰もがこのようには行かないからこそ大好きなのです!
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コメント
木村剛氏のココログにトラバすると同時に、記事に追記をしたのでコメントでお知らせします。
木村氏のブログを知ったのは、ココログスタッフルームでなんですが、そのなかに次の一文がっ!
>木村さんはそのプロフィールにある通り、経済や金融のスペシャリストです。そんな木村さんも今日からココロガー。言うなれば、経済ココロガーでしょうか。 (あ、巷では「ココラー」とも言うみたいですね。経済ココラー。)
やったー!巷ではココラーとも言うみたいですと明言していただけました。これもmappieのおかげかもな(笑)。なんにしても巷に浸透するのが命名者としてはマンモスうれP。たぶん日刊ココログに載るよりうれPです!ココラー浸透委員会委員長に就任しようかな(ほらほら妄想はそのあたりにしとけ)。
投稿: ポップンポール | 2004/02/07 20:41