インセンティブ
古河社長のニフティ会議を読んで、昔アメリカの航空会社であった話を思い出した。細かい内容は忘れてしまったが、決して華やかでない、ちょっとした経費削減案を提案した女性従業員に、巨額のインセンティブを与えたというニュースだ。会社はその提案による費用対効果を出し、実際に業務に取り入れたところ、ものすごい削減効果が表出したという。その実績をもとに、それに見合う報酬金額をはじき出したところ、巨額の(おそらく通常の生涯年収を超える)インセンティブが実際に支払われたという。
これはかなりアメリカン・ドリームな話だが、日本の企業ではアイデアや実績に対する評価を重視する企業は少ないのではないだろうか。高輝度青色LEDの発見者・中村修二氏が『怒りのブレイクスルー』(名著です!)で奇しくも述べられたように。田中さんがノーベル賞を受賞したときも、普通のサラリーマンらしさばかりがマスコミに強調された。先のアメリカン・ドリームも日本だったら数万円支払って終わりだろう。
対価の正当性を評価するのは難しい。オレも勤めた会社で年間社長賞を貰ったことがあるが、入選時に1万円、年間社長賞では3万円の合計4万円だった。その額の算定基準はわからないが、どの企画もほぼ同列、もしくは数ランクに分かれている程度であろう。つまり企画の内容に対する評価としてのインセンティブではなく、賞そのものの金額が決まっているわけだ。ニフティの社長賞は、名前を見る限り、実績に対する評価をされているようであり、それは本当にうらやましく思った。金額の大小よりも実績評価であることに。これを当然だと思うなかれ。そうでない会社もあるのだ。
企画というものは、その後の実績で評価されるべきものである。企画する側は、実現させる意欲を持って提案している。社長賞が取れたからそれで終わりでは脱力するだけだ。私は社長賞3万円よりも、その後の企画に従事する権利が欲しいといつも思う。企画を評価するなら、なぜそれをオレに実現させてくれないのかといつも思う。だが賞を取ったアイデアは担当部門に任され、オレの手を離れてしまうのだ。そんなのアリ???本気で儲けようと思ってる???それって大企業病だよな。大企業でもないくせに。
やり甲斐のある仕事は意欲を形にできる環境要因が非常に大きいが、提案を実現させるまえにアイデアだけ取られて終わりなのだ。しかも待てど暮らせど商品化されない。途中のプロセスも見えない。それでは賞など貰っても意味がないではないか。自分の提案を他人に適当に消されてしまう無念さは、体験した人間にしか理解されないだろう。事実、ボツ企画を持って転職しバンバン商品化していた知人がいる。もったいないことこの上ない。
その企画を実現させるべきセクションがあるのはわかるが、そこの人間にしてみたら「他部署の人間が適当な企画を出して賞を取ったからといって、なんで俺達がやらされきゃならないんだ」という思いになるだろう。本職のプライドが許せなくなるわけだ(へんなプライドは会社をつぶす諸悪の根源でもあるが)。それで「実現不可能」というレッテルを貼って葬ろうとする。
だが提案者自身が彼らのなかに入って実現させようと奔走することに意味があるのではないか。セレモニーに意味などないのだ。権威付けばかりやってる会社の末路は悲惨だ。おそらく会社の勢いとは、そういう社内風土に左右されるものであろうと思う。勢いを失った会社にいると、他人の芝生が余計に青く見えるのである。
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コメント
お初です。インセンティブのお話は非常に面白かったです。現在の日本式評価構造では、柔軟なインセンティブ精度は難しいのでしょうね。一般的な会社は頑張った人を伸ばす社会ではなく、へたれを補う共同体といった方がいいのかもしれません。あと、企画やアイデアに関して理解できる人達というのは、非常に少数で、そのごく一部の人達で流れを作っているのが現状と思います。不満がある場合、海外ではそれを是正しようとする動きに転化され、それの実現に向かいますが、日本では不満を言うだけで誰も是正しようとしない、そこから逃げ出すというのが当たり前になってしまっているようです。
投稿: パカぽん | 2004/01/12 03:43
パカぽんさん、コメントありがとうございました。みんな仲良く共同体ってのも、それはそれでいい湯だなぁあははーんって気分なんですけどね(^^;)。ただ全部が全部それじゃ縮小再生産の組織になっちゃって先細りなんですよねぇ。個人的には、へたれの皆様をどれだけ覚醒させられるかにも面白さはあって、やる気が出る環境作りが出来るかどうかは結局自分自身の問題でもあるとも思ってるんです。
どこにでもアイデア・クラッシャーはいるもんで、そういう人間をどう攻略するかもいわばゲームなんですよね。まだ私も気持ちは若造の部類なんで、そんな反面教師の皆様に多くを学んで成長させてもらおうと思ってます。もともと独創性にお手本はないわけで、前を行く皆様が独創性からもっとも遠い反面教師になってくれてるほうが、道に迷わずありがたいです(笑)。
投稿: ポップンポール | 2004/01/12 23:21